PEGという指標とその使い方 by yamamoto
PEGとは?
PERを成長率で除したものをPEGレシオと言います。
成長率とは、アナリスト予想のN期間の間の平均年率(今回は連続複利で説明)とします。
つまり
予想PER=株価/予想EPS (EPS 一株あたりの純利益)
で PEG= PER/成長率
となります。成長率は20%なら20, 30%なら30となります。
具体的に、予想PER30倍、N年後のEPSと予想EPS(1年後)を比べた年率の成長率が20%であれば、PEG= 30/20=1.5となります。
PEG | PER20 | PER40 |
成長率10 | 2.0 | 4.0 |
成長率20 | 1.0 | 2.0 |
例えば、PER20で成長率10とPER40で成長率20はPEG2倍となり同等の評価となります。
PEG使い方
期間Nの取り方が企業によって違うこと、そして、理屈に合っていないことから、PEGを実用的に使うことはあまりありません。
成長株投資家の中には、簡易的な指標として参考にする場合があります。
注意点
A社とB社を比べる場合を見てみましょう。
PER | 成長率 | |
A | X | S |
B | Y | T |
A社の PERがXで成長率がSとします。
B社のPERがYで成長率がTとします。
普通はN年後のEPSと今の株を比べてN年後のPERを比べるというのがより正しいやり方です。
1年後とか2年後のEPSの想定から成長率を計算する場合、N=1でPEGを用いるのは割高なものを過大に評価する可能性が高くよくありません。
一般に、N年間の成長率SとTとが評価されてN年後のA社とB社のPERが並ぶことを考えてみましょう。
するとSとTとの間には以下の関係が成り立つはずです。
X EXP(-S/100 N) = Y EXP(-T/100 N)
これを変形すると、
(T-S)/100 = [LN(Y)-LN(X)]/N
ですから、T/100 = S/100 + LN(Y)/N-LN(X)/Nとなります。
N年後に同じようなPERになる株があったとしても、PEGでは数倍の違いになってしまうのです。
例えば、
AがPER20倍でN=4年で年率平均の成長率が10%の場合、PEGは2です。一方、BのPERが30倍の時、4年後に PERが同じになるようなBの成長率は20%ですから、PEGは1.5です。PEG2とPEG1.5を同等に評価しなければならないので、困ってしまいますね。こういうことが起こるのです。
PEGについては、上記の等式の近傍付近でしか使えないのです。つまり、同じPERの水準のもの同士ならばPEGによって割安は判断できるのです。しかし、違う PER水準の二銘柄を比較するときには向いていない指標です。
PEGの使い方としては、PER30倍同士を同じ将来期間で考えて成長率の高い方を選ぶという使い方があります。
N年後のEPSを予想したのであれば、N年後のPER同士を比べる方が理にかなっていると言えます。
筆者について
山本 潤 (やまもと じゅん)
ダイヤモンドフィナンシャルリサーチ投資助言部にて投資判断者を務める。株の学校長期投資ゼミの講師。コロンビア大学大学院修了。哲学・工学・理学の3つの修士号取得。外資系投資顧問のファンドマネジャー歴20年。
日本株の成長株投資を得意としている。外資系投資顧問会社クレイ フィンレイ日本法人共同パートナーで日本株及びアジア株の運用などを経て投資教育の会社を設立。現在も年間200社前後の会社訪問と投資判断を行っている。
1997-2003年年金運用の時代は1,000億円を運用。
その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショート戦略ファンドマネジャー。
過去22年の機関投資家としての運用戦績は年ベースで19勝4敗の勝率8割超(同期間の日経平均は、13勝10敗)。
現在は、DFR(ダイヤモンド フィナンシャル リサーチ)投資助言部において日本株ポートフォリオ22銘柄で投資判断の助言サービスを行っている。2019年9月26日現在、20%のリスクで年初来16%上回る成績を提供している。
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