子育てコラム #9 部活に入った我が子が補欠です
◆強豪チームに入れたはいいが、我が子が補欠はつまらない?(子育てコラム第9回)
うちの子は野球部の補欠。先発で試合に出ません。
補欠の選手をたくさん試合に出せば、試合に勝てない可能性が高くなる。
ベストメンバーを組めば、いつも、うまい選手だけに固定される。
レギュラーは試合で経験を積むため、益々、技量が上達します。 しかし、補欠は、試合にでないため、経験が積めません。
みんなで楽しくやろうとすれば、すべての選手を試合に出すこともできます。
でも、大会を勝ち抜くことは難しくなります。
部活を考える 強豪チームに入れたはいいが
部活。公式戦はトーナメント形式がほとんどなので、負けたらおしまい。 だから、顧問の先生は勝利を目指さす。 一方で、補欠の親は、自分の子どもが試合に出てほしい。 顧問の先生は、勝利を目指しつつ、教育者でもなければならない。 板挟みです。
この状態で、誰もが納得できる解決策は、どのようなものでしょうか。 残念ながら短期的な解決策はありません。
でも、長期的な取り組みであれば、解決策はあります。
何事もそうなんですよ。 短期ではどうしようもないんです。 長期では必ずなんとかなる。 これ、真理です。
部活の補欠選手の満足度をあげるそれらしい答えがあります。
「補欠の技量を大きく向上させる」ことです。
個々人が長期的な取り組みで技量を「格段に」向上させるのです。
親は、「自分の子どもを試合に出せ」という代わりに、 「うちの子は、これだけ技量が上達した。ありがとうございました」と感謝する。
◆信頼関係の構築 -話し合い、コミュニケーション、工夫、観察
先生と生徒の間、生徒同士、選手同士との間、親と子供の間、 すべて、人と人との関係は信頼がベースになっています。 練習の在り方、練習試合の考え方、リーグ戦の戦い方、トーナメントの戦い方、 選手の起用法、すべてにおいて、関係者全員で、一定のコンセンサスを形作ることが大切です。
練習試合では補欠をなるべく出す。 だが、公式戦は勝利を優先する。
親と顧問の先生との間で約束をするわけです。
それでも、「試合」に全員を出すことは工夫すれば十分に可能です。
練習で紅白戦を定期的に行う。
強化試合(練習試合)を数多く行う
などで選手全員にチャンスを与えることができます。
親や親コーチの仕事のルーティンは、選手の技量を正確に測ること、よく選手のことを知ること、 よく選手の動きを見てあげること、話し合いを顧問の先生とすること、などです。
技量を知るということは、たとえば、 「○○選手の走力が向上しているねー。足が速くなったよね一」という親の観察です。 親が前向きな態度であれば、 どの選手であっても、その技量向上を、みんなでしっかり見ているよ、という安心感をチームや組織に植え付ける。
◆工夫ある、意味ある反復練習を継続する
技量を格段に向上させるためには、反復練習が必要です。 惰性の練習(=意味の薄い練習)ではダメです。
いつも、練習に意味を持たせ、絶えず、実戦を意識した練習をすることです。 意味のある反復練習に、様々な工夫を添えることです。 そして、意味を持たせた、工夫を凝らした反復練習を長く継続し、確実にステップアップしていく。 その連続が、大きな技量の向上になるのです。
選手が、自分のチェックポイントを自分で分析できるならば、コーチは不要になります。
どんなにお金をかけても強くなりません。 選手は、お金ではなくて、工夫と知恵で上手くなる。
◆工夫とは、とにかく、深く考えること
たとえば、野球で、どうしても、打球を怖がり、顔が背く癖のある選手がいたとします。 これは癖ですから、構造問題です。(自然には治らない)
構造問題に対しては、ひとつひとつの原因を調べ、周到な計画の下で、「計画的に」確実に克服しなければなりません。 この癖には、メンタルの強化、物理的な補習などが有効です。 3mの距離から、スポンジボールを本人めがけてたくさん投げる。 実戦でもボールをスポンジだと思いこむ。
こうした、いろいろな工夫や解決策を選手が自分で考えることができるような土壌をつくる。 工夫された、意味のある反復練習を創造し、練習が計画通りに長期的に、完全に身になるまで反復されて、問題がひとつひとつ克服されていく。
このパターンは、すべてにおいて通じる、勝利への方程式です。 国家レベルだろうが、企業経営レベルだろうが、現場レベルだろうが、オフィスレベルだろうが、学校だろうが、スポーツだろうが、すべて同様です。
それを、野球の練習時に、「なぜボールから逃げるんだ!」「ボールを怖がるな」と怒ってばかりいる親がいます。 1年たっても2年たっても、同じことを言われ続けている選手もいます。 こうした不毛の状況を放置すると、時間だけが経過する。
たとえ補欠であっても、確実な技量があれば、他のチームでは、エースになれるかもしれません。 卓球の世界では、中国を代表する選手たちが、世界各国のエースとして活躍しています。 技量や理解力の高い、考えたプレーができる選手が多く育つことで、世界に貢献できるのです。
成功に近道はありません。 自ら考える、自分の耳で聞き、自分の目で見る、やるべきことを見出せば、 工夫し、反復し、練習し、自分のものにする。 これを自分でできるように訓練するのが親や先生の仕事です。 トヨタのカイゼン活動にしろ、少年野球の練習にしろ、投資も、ピアノも、囲碁も、すべて同様です。
チェックポイントをつくる、測り、修正し、正確に見る、筋肉と意識を合わせる、深く考える、先のことを予測し、備える。
P.S.
親として、わたしもいつもダイレクトに聞きたいことを我慢しています。 実は、野球をしている子供には試合で「ヒット打った?」と聞きたいのです。
でも、それ我慢して、 いつもこう聞くようにしています。
「フルスイングできた?」 「全力で走った?」
ヒットを打つ、ホームランを打つ、というのは結果です。 結果を聞くのではなく、過程を聞く。
アウトになっても、フルスイングすれば惚れ惚れするし、全力で走る姿は美しい。
親は子に技量の上達・精神の健全な発達や成長をコーチする。 自らが取り組むべき事柄を知り、それににどう取り組んだか?
「セカンド・ゴロでアウト」でいいのです。 全力で一塁に駆け抜けたときに、いままでで一番速かったとすれば、 それは失敗の中に、成功を見出すことになるのでしょう。 一塁に駆け抜けた選手に、先生や親が、「いままでで一番速かった!」といってくれたら、 その選手はどう感じるでしょうか?
まとめ
- チームの運営方針について親とチームとの間でコンセンサスをとる
- 親は子供の技量の向上や心の成長をその都度褒めてあげる
- 成長を見守る
- 子供が部活を続けているだけでもすごいことであると親は子供を評価してあげる
- でも、やめたいなら、いつでもやめてもよい、と伝えておく
- 先生をいつも応援する
- 結果を褒めず、過程を褒める
- 部活に、親は早い段階、1年の4月からサポーターとして関わる
- もし、熱心な先生が指導する部活であれば、長期の視点で全員の技量が向上できるのでそのことに感謝する
- 先生と親との話し合いを定期的に持つ
- 親は試合を見て、チームを応援する
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