ようやく通常の感染症になりつつあるCOVID-19 by yamamoto

2020年4月13日

恐ろしい指数関数のパワー

わたしのような長期投資家は指数関数を信じています。たとえ10%の毎年のリターンであっても、50年がんばれば1を100にできるからです。時間というパワーをつかって孫の孫の代まで計算にいれると1を1億にできるからです。これは天才ではなくても、わたしのような凡人にもできる利殖方法です。

今回の新型コロナの大騒ぎも、感染症というものがR0(基本再生数 basic reproduction number)とよばれる一人が何人に感染させてしまうかという数字をベースにしています。これが2であればあっという間に全員が感染してしまう。株式投資の1年が、感染症では1日単位なのですから!!!

つまり、投資家の目線で確認すべきは、指数R0がどうなるかという問題に限定されます。韓国のように1を下回るならばこの話は終わったことになる。ところが、世の中は韓国だけではない。世界中の国からの渡航者も流入するとなると病気のR0がわからないという状況では最悪の事態を当局は想定せざるを得ません。

R0が高いこと以外はさほどは怖くはないCOVID-19

COVID-19が病気が恐ろしい病気だと思っている人はそれほどはいないと思います。自分から感染を広げたくないとみんながんばって自粛しているのです。

たとえば結核は年間2万人が感染し2200人が死ぬのですから致死率は10%を大きく超える。70歳以上の患者が1万人程度で2000人が死んでしまう。つまり、高齢者にとって結核は致死率20%です。

COVIDが致死率が高いといっても高齢者で10%です。結核の感染力は高い。3密で感染。若者から感染することも同様。結核菌の一部が自然耐性菌であるため、特効薬がないこともCOVID-19と同様です。致死率は圧倒的に結核の方が高い。しかし、日本社会ではそれほどは結核を恐れない。それはなぜか。結核は毎年激増しているとはいえ、年間2万人にすぎない病気だからです。結核は高齢者でなければ2%程度の致死率です。

肺炎も同様です。これも高齢者にとっては致死率が10%の病気です。70歳以上の高齢者のうち、およそ推定で100万人の方々が発症し、10万人の高齢者が肺炎でお亡くなりになる。高齢者にっとっては10%の致死率の病気です。ところが高齢者ではない人々にとっての致死率はそれほど高くなく、1%程度です。

10万人以上の高齢者がなくなる肺炎は高齢者死因の第3位になっています。しかし、これが社会問題として大きく取り上げられないのはなぜかというと、肺炎になる方はせいぜい年間百万人に過ぎないからです。指数関数的にすべての国民が罹患する可能性がないからです。肺炎という病気がよくわかっているからですね。

COVID-19が恐れられた理由

肺炎や結核ほどの致死率ではないCOVID-19が社会から恐れられた理由は指数関数的な爆発力でした。これがR0で2とか3とかいわれているためでした。自然免疫の比較的強い高齢者が半分はいたと仮定したとしても、70歳以上の人口2600万人のうちの半分の1300万人の10%がCOVIDで死亡してしまうと130万人が亡くなってしまう。これは大変なことです。肺炎の10万人どころの騒ぎではないからです。問題は、肺炎のように100万人も感染するのだろうか。そのリスクを投資家は心配したのです。ところが日本のおかれた幸運によって杞憂に終わりそうで何よりです。(それらはBCGによると思われる致死率の低位、大気汚染の軽さ、衛生環境や医療環境のよさ、国民の意識の高さなどによるもの)

そもそも、COVID-19はR0の高さを除いては、さほどこわい病気ではありませんでした。(観察された致死率が低いため)。日本では感染者が7000人程度の感染者のなかで70歳以上が1000人程度。死者のほとんどがBCG摂取のない70歳以上。日本のCOVID-19死者8割が70歳以上です。日本の69歳以下の致死率は0.3%です。(死者数は18人/患者数は5000人以上)。ですから若い人々が主にかかり、高齢者にうつしてしまう病気であり、その点では風邪、インフル、結核と同様の構図です。

もちろん、自殺者の数は年間2万人。交通事故などの事故死も5000人。COVID-19はR0さえ低ければ、事故って死ぬより確率の低い病気だよといえる。実際まだ高齢者のCOVID-19による死者数は100程度(4/12/2020現在)ですので。死亡数/人口は100/120000000です。R0が低ければこんなに大騒ぎをすることもないですし、R0が高くても、医療資源が潤沢であれば騒ぐ必要はないことでした。いま、これだけの人権制限を国家が要請している理由は、医療資源を守ることが高齢者を守ることになり死者数を抑制することになる、というものです。行き過ぎた自粛は逆に自殺者を増やすことになります。リーマンショックで自殺者が1万人規模で増えてしまい、過度な自粛は政府はもとめておりません。短期のたった3週間の間の8割接触減を求めているのです。

R0が2より高い場合は早期の集団免疫を獲得して終息

R0が2より高い場合はどうなるかをまず考えていきましょう。

R0が2-3だとあっという間に感染が拡大します。そしてそれが欧米の状況です。ところが、R0が2だと集団免疫もあっという間に獲得してしまう。そこでスウェーデンのような科学的な国が集団免疫作戦をとっています。実際、米国もドイツも集団免疫をすでに獲得した、それゆえ、感染者がピークアウトした、との観測もでています。それはそうでしょう。数日置きに倍々ゲームになるわけですから、あっという間に患者が増えて医療は崩壊。崩壊している間も感染者とまりません。ドイツの著名な免疫学者のHendrik Streekさんによれば、抗体をもった人がGangelt地方では14%であったとする報告が出てきました。すでに集団免疫獲得フェイズに入ったようです。致死率は0.4%以下で想定よりも低い。

集団免疫ドイツ_Hendrik Streekzwischenergebnis_covid19_case_study_gangelt_en

何事も両面があります。感染が速い。それはすなわち病気が軽いことを意味します。無症状や軽症者が多いということ。致死率が高いと感染させる前に感染源が死んでしまう。怖い病気ほどR0は低くなるのですから。この病気はR0が高い=どちらかといえば軽い病気といえるからです。(結核よりは致死率で軽い病気です)

R0が高い国では集団免疫の獲得の時間は概ね2-3ヶ月程度です。計算方法はR0を2として、たとえば、感染から発症までの期間を10日であるとすれば、1日あたり一人の患者は0.2人に感染させるわけですから、式は∫[from 0 to T]Exp(0.2t)dt=(1-1/R0)x人口で解けます。人口6000万人の国家でR0=2であれば75日程度となります。

なになに??なに1-1/R0って??という方のために少し解説をします。詳しくはこちらをお読みください。

東大_大橋さんSEIRモデルによるCOVID-19流行予測 200331ver3.1

すでに感染した方々は抗体を持つ。その割合をpとしたときに、感染する対象は(1-p)となる(比率として)。R0<1となれば感染は終息する。だから、(1-p)R0<1をpについて解いたら p > 1-1/R0になります。

一般的に、平均寿命が高い国は一人当たりの医療資源も充実、衛生的な社会です。そういう社会では同じSARS-CoV-2でもR0が低い。

急速に病気が拡大している欧州の例をみると、抗体検査によって、感染していない人の多くが抗体を持っていたことがわかりつつあります。そうなると、思ったよりもR0が高い場合は致死率が劇的に下がる。逆に日本のようにR0が低いとどうか。その場合は、うまいことに集団免疫の獲得に必要な割合が下がる。実はこの1-1/R0が集団免疫を獲得するために必要な率を示しているのです。

日本の場合、R0 = 1.4として17%の人口が感染すれば集団免疫を獲得することになります。日本の場合は無症状の方や軽症の方が多くて実はCOVID-19にすでにかかっている人が公表している人数の10倍ぐらいはいるのではとささやかれています。それは考えないとして、集団免疫獲得まで現在の感染者0.7万人から集団1700万人へとR0=1.4で突き進むとどうなるか。発症まで10日とすれば∫EXP(0.14t)dt[t from 0 to T]=1700/0.7を解けばよいのですね。70日間です。これはあくまでR0の数字遊びの域を出ません。とにかく指数関数による増加は非常に怖い。

こんなペースで感染者が増えたら現場は崩壊確実です。1日あたり10万人の発症があって、その5%が重篤ならば、5000人の重篤者の負荷がずっと上がっていく。これでは困ります。

ところが、いま、東京ではこれほどの増加はしない感じです。まだ毎日100−200名のリニアの増加に見えます。そこがよくわからないところです。わからないので、R0を下げるための国民の行動変容が求められます。

COVID-19が普通の病気になるためには?

COVID-19が普通の病気になるためには、R0>2ならば、それはそれで前述の計算のように集団免疫が早期に獲得できる。ただし、欧米のような医療崩壊は避けられない。

R0<2ならば、それはそれで集団免疫率のハードルが低くなりますが、それでも医療崩壊の可能性は高い。

R0<1ならば確実に終息する。すると普通の病と同様にになる。

今回の議論の出発点はR0が高いことが問題だったのです。インフルであってもR0は2-3はあります。

COVID-19も新型インフルの一種ですから2-3のR0はあるはずです。そう想定すると、おかしなことばかりですね。わからないことばかりになります。どうして日本ではR0が1程度になっているのか。それはわれわれの努力の結果であり行動変容が効いているからなのでしょうか。あるいは、すでにBCG効果などで一定の免疫をわれわれがもう獲得しているからなのでしょうか。前者であれば行動変容を元に戻すとR0はまた上昇してしまう。いたちごっこになってしまう。後者であれば三密を避ける行動をとることで、めでたし、めでたしでお話はおしまいです。

最悪のケースは行動変容でR0を人為的に抑える期間の長期化

だいぶ、COVID-19を普通の病気にするためのロジックがわかってきました。肺炎や結核のような高齢者にとって致死率が高い病気とくらべてCOVID-19はそれほどの致死率ではありませんでした。もともと70才以上の高齢者の方々の年間死亡率は5%程度(2600万人の方が年間100万人単位でお亡くなりになるから)です。

それでも大惨事になる可能性があった。それはCOVID-19のR0が1を大きく上回っているからでした。ところが1を上回ると集団免疫獲得までの日数はせいぜい2ヶ月でした。欧米ではすでに集団免疫を獲得しつつある。日本の場合、人為的な行動変容だけがもし効いているとしたら、行動変容をしばらく解除はできないことになってしまう。それを嫌がってスウェーデンは集団免疫作戦をとっている。ところが!!実は日本も非常事態宣言といいつつ、やっていることはスウェーデンと変わりません。つまり、厳密なロックダウンをやっていない。経済活動を停止させずにラッシュアワーの通勤も温存している。コンタクトが7−8割減ればそれはR0を半減させるからそれでもいい。仮に減らないなら集団免疫獲得だが医療崩壊のリスクがあるという二股??作戦ですね。いずれにしても医療資源を守りためには綱渡りです。

 R0=1.4で集団免疫獲得まで70日とすれば、症例がピークアウトするタイミングで、すでに今回のCOVID-19騒ぎは終息するであろうと思うのは楽観すぎるでしょうか。

普通の病気になるには、ワクチンと治療薬 ー 治療薬アビガンとワクチンBCG

もはや、BCGの日本株ワクチンがCOVID-19の発症率や致死率に大きな影響を与えていることに異論を挟む人はいないのです。ところが実証はできないので政策担当者は悩むでしょう。統計上の有意が明らかな場合は石橋を叩いて渡るよりも99%の確信があればやるしかない。もはやBCGは世界中で品薄となってしまっています。

また、アビガンの効果は絶大なものがあるということが徐々に明らかになってきました。政府がアビガンの原料を確保するためにデンカに要請をするなどしたことは賞賛に値します。

R0がインフル並みに高くとまってもアビガン等の治療薬に一定の効果があれば致死率は下がります。そうなるとCOVID-19はどうしたって普通の感染症になってしまうでしょう。いずれにしても、今回の病気の出口が見えてきたことで、これまでのような市場のパニックは終焉するでしょう。わたしがかねてから病気の終息はまだだけども、市場はコロナを克服しつつあると申し上げているのは出口が見えてきたからです。

  • R0が高い国で医療崩壊してしまった欧米は集団免疫を早期に獲得する
  • R0が低い国はもともとの致死率の低さ(高齢者にとって結核は致死率20%の怖い病気)によって指数関数的に増えないならばCOVID-19は通常の感染病並みとされる可能性もある 
  • 行動変容は短期的な医療崩壊を避ける施作であり、基本は集団免疫戦略をワクチンBCG(日本の場合は高齢者と若年層)によって達成するしかない。政府はBCG(民間に一社しかない)製造をサポートしなければならない局面になっている
  • SARS-CoV-2ワクチンの登場が待たれるが18ヶ月以上先であろう
  • 抗体は数年間は有効だとされているが本当のところはまだわからない
  • 対策としては、高齢者へのBCG接種と感染者へのアビガン投与で70歳以上の方々の致死率を結核致死率20%の数分の1へと落とすこと。国民の衛生管理と3密回避でR0を1以下にすることで感染拡大を抑えること

これは私自身への備忘録として書きました。わたしは病気の専門家ではありません。株式市場の参加者にすぎません。

P.S.

高齢者の死亡率が若い人と比べて数十倍ということは、むしろ、寿命を考えれば当たり前のことで、COVID-19の特徴ではありません。そのあたりをしっかりと認識する必要があります。東京は感染爆発といわれていますが、70未満の方々の致死率は0.3%です。この致死率は無症状で死んだ人、無症状で患者にカウントしていない人の影響を考えると一桁多いので、70未満の致死率は0.03%程度に落ちていきます。まるっきり普通の病気です。それで話が終わらなかったのが今回の騒動でした。3密状況で簡単に伝染してしまう。これがクラスターを呼び、R0を高くする要因でした。専門家たちがやっかいな病気と形容したのはR0の高さ、若者の感染者の多さでした。対策ははっきりとしました。70以上の高齢者。この方々をどれだけ入院させるのか。どれだけ医療資源を割くべきなのか。基本的人権の精神で全員にたいして一定水準の医療を提供しなければなりません。70以上の致死率が8%で70未満の致死率が0.3%である現状をみれば、明らかに1951年から義務化されたBCG接種が関連していると見なせる。ジョンポプキンスなどの発表ではグローバルにみても1/6に致死率が下がっている。この70以上の致死率8%が、大勢が入院して92%を救うのは医療崩壊で無理筋。多くを入院させないで救うならば、高齢者にもBCGを打つべきでしょう。そうすれば、COVDI-19だけではなく、結核の20%の致死率も肺炎の10%の致死率も同様に下がります。この2600万人の高齢者の扱いが今回のCOVID-19の最大の難所です。アビガンの投与などで致死率を半分にできるのであれば、たとえば、4日でウイルスが消えるのであれば医療崩壊は避けられるでしょう。これまでのコラムで幾度か申し上げたことと重複いたしますが、ワクチンがないと思われていたが、実際にはあった。薬がないと思っていたが、実際にはあった。感染者の数は報告されたものよりも実際にはずっと多かった。実際の致死率はずっと低かった。集団免疫の獲得まであと少しという欧米諸国の報告もあった。そうなると、政府の関心はどうやって経済をできるだけ早期に立て直すかーということに移ります。中国、韓国の沈静化。そして欧米の患者数のピーウアウト。日本における特異的な死者数の少なさ。いろいろ総合的に判断すると、市場参加者が思っているよりもずっと早く経済は立ち直るのではないかという希望が見えてくるのです。

病気には難病から軽症まで様々な病気がありますが、政治を司る人は、インフルより怖いと見るか結核よりは怖くないと見るかで判断は真逆になります。その真逆さが、経済重視派(あるいは致死率が低い若者)は集団免疫獲得を支持しますし、人権重視派(あるいは高齢者)は徹底的なロックダウンを支持します。答えはその中間にあります。若者はたたでさえ、国の負債を負わされていて、失業しやすく、年寄り重視のこの国に愛想をつかしつつある。選挙にも行かない。心無い若者は老人を敵視し、ウイルスをばらまいたとして中国を敵視する。国が分断される前に、未来を背負う若者寄りの政策を国は取るべきだろうとわたしは思います。GDPが100兆円なくなるのと、医療従事者1万人増やすのとどちらが得策かと聞かれるならば、わたしは医者や看護師の数を増やしてGDPを減らさない方法を選択します。100兆円と2000億円の人件費の増加とは桁違いですから。そういう経済合理性を政府も考えて、「医療崩壊を避けよう」と自粛を求める一方で、医療従事者を拡充してほしいです。NYでは医学生や軍医も参戦しています。日本もそれができるように準備をして、連休開け後の宣言の解除を行ってほしいと願います。

 

 

2020年4月13日その他

Posted by 山本 潤