7196 Casa 家賃債務保証サービスを提供 入居者の課題解決に寄り添う by Ono
レポート概要
・経営破綻したリプラスの事業のうち”家賃債務保証事業”を承継
・大手不動産会社向けが売り上げの60%以上
・手間をかけて賃借人の課題解決に関わる
・自主管理家主向けにも大手管理会社向けと同様のサービスを提供する
〇社長
事業に対する宮地社長の思いを以下のインタビューで聞くことができる。
2017年10月31日 東証2部市場上場時の東京マーケットワイド出演動画
https://www.youtube.com/watch?v=2dW29wxUwBY
*特にフードバンクとの提携、顧客からの”ありがとう”の言葉をもらうという話のあたりでは
アナウンサーの方に語り掛ける話し方に”事業を伝えよう”という熱意が感じられる。
*1年後の2018年10月31日には東証1部指定
〇事業内容とビジネスモデル
①”家賃債務保証”と付随するサービスを提供し、保証料を受け取る。
賃貸住宅の賃貸借契約において賃借人に対して家賃債務の連帯保証サービスを提供する。
賃借人(入居者)とは保証委託契約、賃貸人(大家さん)とは賃貸保証契約を結ぶ。
通常は入居者が連帯保証人をたてて、賃貸借契約を結ぶものを
入居者から保証料を受け取って保証人を引き受ける。
万が一(支払えない)の場合は大家さんに家賃の保証をする。
不動産管理会社が管理している物件は
不動産管理会社と代理店契約を結んでサービスを提供する。
・事業拠点は10拠点
全国に10拠点(東京本社、札幌、仙台、千葉、静岡、名古屋、大阪、岡山、高松、福岡)を配置。
大手管理会社を中心とした20,000店舗でサービスを提供。
②年間保証料による安定したストックビジネス
<特徴>
〇大手不動産管理会社の割合が多い
大手不動産管理会社と代理店契約を結び、
”Casaダイレクト”を提供する。
管理戸数1万戸以上の全国展開している大手管理会社向け売り上げが60%以上を占める。
〇手間を惜しまず借主の課題解決の手助け
保証債務に占める求償債権の割合が低下傾向=求償債権の回収が進んでいる要因は
”手間を惜しまず賃借人に寄り添って問題解決に取り組む”
という点にあるだろう。
*求償債権とは:賃借人が滞納した賃料を賃借人に変わって賃貸人(大家さんまたは代理人となっている不動産管理会社)に支払ったうち、期末時点の未回収分。
まず、支払いができない賃借人について一人一人、原因を確認する。
”うっかり忘れてしまった”という人は連絡すればよいが、
”支払いができない何らかの問題”が発生していることも多い。
解決方法として、例えば、生活保護の申請ができるのであれば生活保護の対応方法を伝える、といったことを一軒一軒対応する。
主に行っているのは
①公的支援制度の案内
②NPO団体と連携した食糧支援の実施
など
具体的には
①社員は各種福祉制度等についての知識を習得し情報を提供
不払いとなった賃借人の課題解決の手助けのため、次のような制度について情報提供し、活用を促す。
保険制度:健康保険、雇用保険
年金制度:年金担保融資、障害年金・老齢年金
貸付制度:緊急小口貸付、総合支援資金
福祉制度:福祉助成金・貸付、児童手当
給付制度:住宅確保給付金、教育訓練給付
自治体の各制度:育成制度
生活保護制度:生活扶助・住宅扶助
など。
同社の受付スペースの壁には
多くの写真と手紙が貼られている
支援を受けた方々からの感謝の手紙と写真である。
社外へのアピールというだけでなく、”ありがとう”の言葉が社員のモチベーションにつながっているに違いない。
②フードバンクと提携し支援活動を行う
農林水産省が支援するNPO団体”フードバンク”と提携し、食糧支援も手掛ける。
ボランティア活動にも積極的にかかわっている。
顧客である入居者が食に困っていることがあった。
その際にセカンドハーベストジャパン(日本で初めて設立されたフードバンク団体)からの食品を
活用したことから始まったらしい。
これら顧客の課題解決のための活動が、長期的なリスク抑制につながっている。
〇家主ダイレクトで個人大家市場を開拓する
自主管理家主(個人大家)向けには”家主ダイレクト”の提供を開始する。
リコーリースと東京海上日動火災保険との連携で開発。集金代行、家賃保証、保険を提供する。
同社はすでに大手管理会社向けでシェアが高く、収益の柱としている。
新たな成長の柱とするべく、個人大家向けでも大手管理会社向けと同様のサービスを提供する。
個人大家をターゲットとするとき、対象の”個人大家”はどこにいるかわからない。
同社は賃貸仲介のエイブル、ハウスコムと契約しており、個人大家へはこれらの企業を通してアクセスすることができる。
〇市場の変化を捉えたサービス戦略
同社は入居者、家主の双方にとって便利なサービスを次々と拡充し、顧客満足度を高め、契約者拡大につなげている。
主なサービスとして次のようなものがある。
・様々な決済手段の導入
初期導入費用のカード決済を業界に持ち込んだのは宮地社長。決済手数料が高く、不動産業界では浸透していなかったが、決済手数料を抑えた商品を提供し、導入を促進。その後、様々な決済手段も取り入れた。
・外国人対応
現在、人手不足の日本においては、国の政策として外国人労働者の受け入れを勧めようとしている。
年々増加する外国人の入居希望者にとって、問題は保証人と言語だが、
同社は利用料無料、年中無休、24時間、11か国語で対応可能な通訳サービスを提供する。
・高齢者対応
日本は高齢化が進み、単身高齢者の入居希望者が増える一方で、家主にとっては入居者の孤独死がリスクであり、契約には二の足を踏む。
同社は孤独死保険を開発して提供。家主ダイレクトに自動付帯することで高齢者の入居促進を図る。
・入居者向けWebサービス
入居者カフェでは退去の連絡や提携した様々な企業の優待サービスを受けることができる。
〇株主還元を積極化
同社は株主還元に積極的である。
・記念配当を実施し、配当性向は33%(会社予想EPSに対して)
2018年10月31日 東証第1部指定に指定された。
併せて、東証第1部への指定を記念して2円25銭の記念配当(併せて24.5円)の実施を発表した。
・自己株式取得の拡大
2018年12月19日 自己株式の取得
取得する株式の総数:50万株(上限)(発行済み株式総数(自己株式を除く)に対する割合4.68%)
取得価額の総額:5億円(上限)
取得期間:2018年12月20日~2019年1月24日
*21営業日で5億円
同社の1日あたりの売買代金は5,000万円~1.5億円程度
自己株取得の1日当たりの取得額は2,300万円(5億円÷21営業日)
関与率が高く、下支えとしての寄与は大きそうだ。
*前回(2018年7月25日)との比較
取得する株式の総数:10万株(上限)(発行済み株式総数(自己株式を除く)に対する割合1.85%)
取得価額の総額:2億円(上限)
取得期間:2018年6月18日~2018年7月24日
12月19日の自己株取得は取得総額が2.5倍、期間は1.5カ月→1カ月
特にこの自己株式取得の実施は株主還元及び株価を意識していることを強く感じるものである。
〇業績(単位:百万円)
2019年1月期 第3四半期
売上高 6,411(前年同期比+3.0%)
営業利益 1,111(同 +34.4%)
売上高営業利益率 17.3%
*のれん償却前営業利益 1,307
売上高営業利益率 20.4%
旧CasaをMBOしたときののれん代が毎期2.6億円程度発生
のれんの残高は2019年1月期 第3四半期末時点で39億円
2019年1月期 会社通期見通し (第3四半期時点の進捗率)
売上高 8,854(72.4%)
営業利益 1,246(89.1%)
売上高営業利益率 14.0%
〇バリュエーション
時価総額 124億円
株価(12月28日終値)1,148円
会社予想PER 15.4倍
〇今後の見方について
第3四半期時点で業績進捗率が高く、通期業績の上方修正期待は高い。
事業の安定性が高いことに加え、株主からの信頼もあり、株価の変動は限定的である。
バリュエーションの切り上げには売り上げの成長が求められる。
今後の成長をけん引することが期待される、”自主管理大家マーケット”向けの業績寄与が見えてくれば
同社の評価が変わる可能性がある。
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