6200 インソース ー働き方改革&人手不足など時代の恩恵ー by yano

2019年2月7日

同社は、講師派遣型研修事業と公開講座事業の2本柱で事業展開を行う企業である。
働き方改革で様々な働き方が推奨される中、企業は従業員の管理が煩雑になってきている。また昨今の景況感回復や労働人口減少により転職市場が活況となる中で、従業員の離職率低下や定着率向上が経営課題となってきている。
そのようなマクロ環境が追い風となり、同社は人事部向けに提案営業で伸ばしている。

2002年に設立された新しい会社だが、業績はこれまで増収増益を継続し、順調に拡大している。舟橋代表が38歳のときに旧三和銀行出身者の3名で起業したのが同社の始まりだ。
起業後間もないころに、入札案件で官庁向けに獲得できた。自治体での評判が広がったことや実績を着実に積み上げることで、信頼を獲得していった。創業5年目くらいには、全国自治体や中央省庁で実績ができあがっていった。2007~2008年から外部講師を業務委託で雇用し、現在のビジネスモデルを築き上げた。
自治体や中央省庁の実績が信頼につながり、民間企業の社会人向け研修も順調に獲得していった。
2016年6月に上場した。
2018年6月末で拠点数は全国21箇所で展開する。
2003年6月から2018年3月までの累計取引先社数は23,132社の実績となっている。
全国の自治体総数1,788のうち、同社を利用した先は1,051にのぼる。
2017年4月から2018年3月までの研修実施回数は18,993回(前年比2745回増)と着実に伸ばしている。

毎年、売上が年率2割の勢いで伸びている。リーマンショックや東日本大震災のときでさえも年率2割の伸び率だった。特定の業界に特化することなく、様々な業種に展開していることが景況感に左右されない理由だ。不況期には、大学の法人化などのチャンスを逃さず、また介護や病院業界を獲得していった。
同社の顧客の業界別ポートフォリオだが、製造業が2割、官公庁が17%、サービス業が12%、通信IT12%、建設業7%、医療・福祉7%、大学6%、流通・商社6%と分散されている。
他社に先駆けて、その業界に合ったコンテンツをいち早く作成し、リーズナブルな価格帯で提供してきたことも結果につながった。

 

〇同社の講座や研修の特徴

① テキストコンテンツ作成と講師を分離
講師がコンテンツ作成をした場合、すべてのノウハウは講師に溜まってしまう。また全国統一のコンテンツにしないと、クオリティを担保できない。そこで同社はコンテンツを自社で作成し、講師は業務委託した契約した人を育成することとした。
講師は応募制でウェブサイト上で募集する。エントリーして、合格率1%程度と厳しく、講師のレベルは相当高いようだ。講師の研修期間は人によるが、最低でも3カ月とされている。講師給与は講師のスキルに応じるようだ。

② 研修のスタイル
他社のスタイルは座学中心のようだが、同社はグループワークで自分で考えて発信させる。実践型にしないと身につかないと考えているからだ。
講師は、話を拡散させて、受講者に考えさせて、上手に収束させるスキルが必要となる。
研修の期間も様々で数日から数カ月と業種によって幅があるようだ。

③ 顧客に合わせてコンテンツをカスタマイズ
コンテンツを業界ごとに作成しているものを毎回企業毎にリクエストやアンケートでカスタマイズしている。受講者が困っていることや苦手なことを事前にヒアリングして、きめ細やかな準備をしている。

 

〇市場規模やライバル

外部委託研修の市場規模は、約3500億円あるようだ。
市場拡大は続いている市場で、同社のシェアはまだ1%程度とポテンシャルは非常に大きい。
ライバルは上場企業であれば、リンク&モチベーションだが、研修事業以外の資格スクールや塾、また人材紹介事業を行っており、研修事業でバッティングすることは少ない。
またマイナビ、リクルートなど大手求人会社で研修事業を行う子会社や中小事業者など様々あるが、実績や信用で大手企業にはなかなか入れないのが実情のようだ。

 

〇事業セグメント

① 講師派遣研修事業 
顧客ごとに講師を派遣するオーダーメイド型研修を行う事業である。
派遣する講師人数、カスタマイズの大小、実施までの前後(アンケート、定着率)により、単価はまちまちだが、基本料金にオプションを付加する体系だ。
顧客のうち6割リピーターなので、単価は安定的といえる事業である。経営者には業績上げたい、従業員定着のためにやってほしいというニーズがあり、それに対して、費用対効果を示しているのが、リピーター率の高さにつながっている。
平均単価 約20万円 
企業によっては、年1日~複数日行うケースがあり、様々であるが、実施回数は1日1カウントとしている。
実施回数(1日で1カウント)*平均単価で売上計上するモデルだ。

18年3月期第3四半期までの実績数値
       17/9期3Q累計      18/9期3Q累計
売上     1,734百万円        2,035百万円(+17.3%)
売上総利益  1,251百万円        1,473百万円(+17.8%)        
・実施回数  8,367回          9,827回
・平均単価  20.8万円          20.7万円
・コンテンツ数 2333種類         2516種類

3大都市圏中心に民間企業向け研修が増えているようだ。

② 公開講座事業
1名から参加できるオープンセミナー型の事業である。
新人、管理職向けなど階層別研修や業界ごと、職種ごとの研修を充実させている。
1人1日 26000円定価 
新人向けは安く、管理職向けは高めに設定されており、内容によっても価格帯は様々だが、ボリュームディスカウントも一部行っている。
受講者数*平均単価が売上に計上される。

           17/9期3Q累計      18/9期3Q累計
売上         630百万円         841百万円(+33.4%)
売上総利益      379百万円         551百万円(+45.1%)
・受講者数      29,545人          39,564人
・平均単価      2.0万円           2.1万円
・WEBinsorce     5,804組織         7,831組織
AIを活用した受講者予測を取り入れた結果、1回あたりの受講者数が増加し、粗利率が大幅に改善した。

なお、同社は月次で講師派遣と公開講座回数の開示を丁寧に行っている。

③ 新規事業
2016年ごろから人事部向けにシステム販売事業を新規に開始した。
人事部は研修により、事務作業が増えるが、それを解消するために、一括メール送信や受講者の管理の仕組みをシステム面でサポートするために同事業を立ち上げた。受講者の事前、事後のサポートもできるようになり、業務が効率化することができる。
また、ストレスチェック支援(2016年に従業員50人以上は義務化された)もシステム上でできる。結果を踏まえて、同社が研修の提案もできるので、本業とのシナジーも発揮できる。またeラーニングの需要もあるので、動画作成事業で自社コンテンツを作っていたが、その事業を子会社化とした。コンテンツ見放題で1ID300~500円とリーズナブルに展開している。

                17/9期3Q累計      18/3期3Q累計
売上              255百万円         418百万円(+63.5%)           
 内訳ITサービス        71百万円         194百万円(174.2%)
   Eラーニング・映像制作   89百万円         112百万円(+28.1%)
   コンサルティング      95百万円         111百万円(+17%)

売上総利益           118百万円         239百万円(+101.4%)

Leaf月間利用組織数は、今期3Q末で前年同期よりも30組織増え、73組織となった。
ストレスチェックの契約先組織数も前年同期よりも50組織増え、今期3Q末120組織となった。
Eラーニングの契約ID数も前年同期よりも約16,000弱増え、今期3Q末で28,337数となった。
新規事業はすべての事業で高い伸び率となり、好調に推移している。

〇遠隔リアル~新サービス~

公開講座事業のグループワークが別拠点同士でも遠隔でつないでできるようにした。
最小履行人数 4人
東京でやっている講座を地方でもテレビでつないで受講できる体制を築き上げた。さらなる公開講座の利益率向上につながる予定だ。

〇粗利率

研修事業のほうがやや高い。新規事業もパッケージの販売のため高いのだが、少しカスタマイズする必要がある。
変動費として、講師の業務委託料がある。
 
 

〇講師数

 
全国に250人強の講師と業務委託している。
年20人くらいで増えている。担当分野によるが、人気講師は忙しく、年150回~200回越える人もいる。

〇社員数

コンテンツ作成スタッフ全社員240人のうち3分の1程度で、元コンサルタントなどの中途や新卒が担当する。
パート、アルバイト含めると、371人の規模。
営業人員は全体の3分の1、システム部門は全体の4分の1程度の人材配置となっている。
大手はコンペで獲得するケースもあるが、問い合わせも週数十件と多く、営業も比較的やりやすい。
代表がプログラミングに精通しており、自分指示だせるので、自社でエンジニア抱え、内製化したほうが効率がよいため、システム部門も人員を雇用している。
年間約40人程度のペースで社員数を増やしていきたい。

〇バリュエーション

株価    2408円(10/9終値)
時価総額  410億円
EV/EBITDA 42倍
PBR    15.3倍
配当利回り 0.4%

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野