9560 プログリット プライシングの成功が急成長を生み出す
2023年9月3日に東京勉強会(個人投資家向け説明会)に登壇していただくプログリット
*終了しました。
動画はこちらのリンクからどうぞ
同社について詳しく知るにはインタビュー動画や岡田社長自身のnote、コンサルタントの方が書いているnoteなどもあります。このレポートの最後にリンクを記載していますのでそちらもぜひ参照してください。
<沿革>
〇”パッションドリブンで再起業”
起業することを決めて2014年にマッキンゼーに入社。
3年学びビジネスアイディアを1つ思いつき、共同創業者の山崎氏と共に2016年に起業した。
その事業は残念ながらうまくいかなかった。そこで、改めて何をしたいのかを検討した。
”マーケット、市場規模ではなくパッションドリブンでやろう”
”商売になるかわからないけどもパッションを持てるものをやろう”
”パッションを持てる事業なら失敗しても何回でも立ち上げられる、やり直すことができると思えるビジネスだ”と考えたとき、対象が英語だった。
米国に1年留学して少し英語ができるようになって人生が変わることを実感した。日本では大人が英語が話せることが求められているのではないか。日本人が英語が話せるようになるためのビジネスなら情熱が持てる。
この発想が現在の同社のMissionにつながっている。
米国に留学する際、英会話スクールに行ったが英語力が上がらなかった。
他にも既存の様々なサービスはほとんど経験したが、日本人の英語力を上げるのは厳しく、革新的なサービスを立ち上げないと困難だという結論に至った。
<提供するサービス>
英語コーチングサービス「プログリット」とサブスクリプション型英語学習サービス「シャドテン」を提供している。
〇プログリット
プログリットのコーチングサービスの特徴は
・専任コンサルタントがつき学習をサポート
・最適な教材、カリキュラムを提供
・週1回、専任コンサルタントと面談
・モチベーションマネジメントにより英語学習の習慣化を促進
ただ英語を教えるのではなく、最適な学習方法を選択肢、受講期間を通して伴走し、効率的に成果を上げるサポートをする。
〇シャドテン
「シャドーイング(Shadowing)」という、英語を聞きながらそれを真似して発音するトレーニングをアプリと英語学習のプロフェッショナルで提供するサービス。
1日30分シャドーイングのトレーニングをした音声を録音して送付し、英語のプロフェッショナルがフィードバックを提供する。
〇”自学自習をサポートすることで英語力が向上する”が基本コンセプト
英語力が伸びるのは英会話レッスン時ではなく自学自習をしているときと考え
事業の立ち上げ当初から
・生活習慣を変える
・自学自習のメニューを作り、サポートする。
それによって英語力が上がる、という基本コンセプトとした。
立ち上げ当初は苦労の連続。受け入れられるまで困難を極めた。
英語を学ぶと言えば英会話スクールに行くのが当たり前だったところに英語コーチングという概念は世の中になかったため集客は苦労した。チラシ配ったり、FB、Gooleなどで集客し、銀座のシェアオフィスで開始した。現在はすべて自社開発の教材、管理ツールを利用しているが、開始当初は市販の教材を使い、学習管理はgoogleカレンダー、spreadsheetなど無料のものを活用した。
<注目ポイントは価格>
〇既存の英会話スクールに比べて圧倒的な高価格設定。
同社の主力サービスである英語コーチングサービスの価格は以下の通り。
最も受講する方の多いスタンダードコースが3カ月約60万円。
同社がスタンダードコースとし、多くの受講者が3カ月を選択するのは
・3ヵ月やればほとんどの受講者が英語力が上がる
・内容は結構大変だが3ヵ月なら続けられる(例えば1年だと長い)
=”みんな続けられて、英語力が上がる”
ということ。
〇市場で普及しているサービスの価格
条件設定が異なるため単純比較はできないが、成果が出る目安の期間としている3カ月で比較をする
・オンライン英会話スクール
多くの方が”英語力を高めたい”と思ったときにまず検討するのは格安英会話スクールだろう。
現在、オンラインにより海外の講師を活用した格安英会話スクールが多数存在する。月当たり1万円以下で受け放題というものもある。
上場企業ではレアジョブが提供するオンライン英会話の最も安い設定との比較では、毎日100分で月21,480円(1レッスン173円)。3カ月に換算すると21,480×3カ月=約6.5万円で約10分の1の価格。
・高価格マンツーマン英会話スクール
顧客ターゲットが近いであろうベルリッツはマンツーマン、3カ月40レッスンで約32.6万円。
約半額となっている。
長期にわたって提供されてきた多くの英会話レッスンに比べて圧倒的に高い設定としている。
投資家の多くはこの価格設定が高すぎるんじゃないかと疑心暗鬼になるかもしれない。
しかし、成果が上がるプログラムとして受け入れられ高い成長を続けており、新たなマーケットを開拓している。
〇高い価格設定の効果
高い価格を設定することは必然的に顧客を選ぶことになる。
ターゲットとするのは30〜40代のビジネスパーソンがメインターゲット。
特に”本気で英語を学びたいビジネスパーソン”から選ばれることになり、
”なんとなく初めてみようかな”という人は選ばない。高価格であるため成果に対してはシビアになるが
本気で英語力を上げたい受講者の期待に応えられていることが卒業生の満足度の高さからわかる。
5段階中4を超える満足度を維持している。
加えて、通常コース終了後にNEXTコース又はサブスクリプション型英語学習サービスに入会された方の割合が50%を超えて推移していること、友人紹介率が高まっていることも満足度の高さを示していると言えよう。
<プライシングから見えるもの>
なぜ価格に注目するのか。ビジネスを見るうえで重要なのは、自社の製品・サービスをいくらで提供しているか。提供価格=プライシングこそ、ビジネスの成否を決める最も重要なポイントと言っても過言ではない。
〇価格とはどう決まるのか
一般的な価格の決め方には3つの考え方がある。
不動産の価格の決め方がわかりやすいので、不動産を例にあげる。
・収益還元法:将来得られる収益から考える
・原価積み上げ:かかった費用に利益を上乗せする
・類似との比較:似たようなモノ、サービスを参考にする
という考え方。
不動産以外もこの考え方で決まることがほとんど。理由は価格を決める要素のほとんどが目に見えるものであり、決め方はわかりやすく、売る側も買う側も受け入れやすい。
特に不動産は事例・実績が多数あり、売る側も買う側も納得感があるため、価格が決まりやすく、大きく外れた価格になりにくい。
逆に難しいのは目に見えないもの。
サービス業かつ他社事例がないものは難しい。
〇目に見えない価値を価格に反映できていること
私たちの周りには目に見えない価値に価格がついている例はたくさんある。
”これが、この値段で?”
って驚いたことや、自分が
”これは他よりも高いけど買ってしまう!”
というもの、ありますよね。
・Apple製品: パソコンもスマホも他社製品に比べて3割以上は高かった
・バルミューダのトースター: 他社比10倍?!
・ダイソンの各種製品(掃除機、ドライヤー他)
他にも
・クラシコム
・ライザップ
出てきたときは、高いと思われたが多くの顧客に受け入れられて高い成長を実現した。
高価格でも受け入れられているのは、新しい価値が評価されているという証左である。新しいマーケットを開拓していることを示し、急速に成長するチャンスがあると言える。
〇高い価格を設定すること=提供する価値を信じること
高い価格を設定することは、経営者にとって大きなプレッシャーとなる。
・売れるのか=本当に需要があるのか
新しいマーケットがあることを信じて提供するのだがそのマーケットが本当にあるのかわからない
・価値が認められるまで資金が持つのか
新たなマーケットがあったとして、売上が伸びるまでは固定費による赤字が続く。この期間、手元の資金で持ちこらえられるのか。
これらのプレッシャーから値下げの衝動に駆られる。
重要なのは、自社が提供する価値に確信を持ち続けられるかどうか。
確信が無いと、値下げの道を選んでしまう。一度価格を下げると再度上げることは難しい。
高い価値を提供し、自社が提供する価値を信じ続ける企業だけが高い成長を達成できる。
<業績 (単位:百万円)>
〇2023年8月期第3四半期累計 両サービスとも高成長
2023年8月期第3四半期の累計業績は売上高2,130(前同比+29.4%)、営業利益438(同+83.6%)。
英語コーチングサービスが前期第3四半期に比べて+22.1%と高い成長を実現。サブスクリプション型英語学習サービスは同+88.3%と成長をけん引している。利益率の高いサブスクサービスの成長により、売上総利益率は70%程度の高水準を維持している、
〇通期見通し 進捗率高いが第4四半期に投資を計画
2023年8月期は売上高2,900(前期比+28.7%)、営業利益460(同+41.1%)を計画している。
会社の通期見通しに対する進捗率は売上高が73%、営業利益は95%となっており、達成確度は高い状況にある。営業利益の進捗率が高いが第4四半期にマーケティング費用70~100百万円、採用教育費及び新校舎解説に20~40百万円の投資を計画しており、通期見通しは据え置きとしている。
<成長において注目するポイント>
3つのポイントに注目する
①人的投資によるコンサルタントの質の更なる向上
②法人営業の強化
③価格改定
高い価値を提供できているのはコンサルタントのモチベーションの高さ。
①人的投資によるコンサルタントの質の更なる向上
応募に対する採用率は1%以下と多くの応募があり、必要な人材の確保はできている。
大半が中途採用で、前職は様々な業種、職種から入社している。
現在平均給与400万円程度だが、前職給与から3割以上下がっても入社を希望する社員も少なくないとのこと。英語業界で働きたいという人はたくさんいるが入りたいと思う会社が無い状況であることを表している。英語業界でイノベーション起こしている企業が無いなかで圧倒的に輝いていることが選ばれる理由かもしれない。
400万円という年収は業界としては高い水準であり、かつ英語業界では非常に珍しかった全員正社員雇用としている。それだけでは満足しておらず、さらにこの業界で働く人の待遇をよくしたいと考えている。
〇人的投資の取り組みとして給与の引き上げを発表
”英語コンサルタント等 約120名を対象に、一律で年50万円の給与の引き上げを実施”(2023年8月23日 リリース)
年間50万円=月4万円程度増えることになる。生活に安心が生まれ、仕事へのモチベーションにつながる。
〇高品質のサービス、高価格、高水準の報酬で正の循環を回す
〇社員の評価
5グリッド 5つの価値観を基本として
・生徒の英語力をあげたか
・満足度
・継続サービスを契約したか
となどを基準に評価し給与と賞与に反映する。
②法人営業の強化
現在法人向けの売上が占める割合は1割程度に留まる。個人向けを引き続き伸ばしながらも、法人向けを拡大する。法人向けは採用され、効果が認められれば予算に組み込まれて次年度以降もローリングしてもらえる可能性がありストック収益になりやすい。2023年5月末現在で221社に導入実績がある。
・低価格英会話スクールとの違い
低価格英会話スクールのサービスを導入している企業が多いが、企業における位置づけは明らかに違う。
低価格英会話:全社員向け 福利厚生の一部
プログリット:選抜者 高額なため投資として対象者を選別する
本気で英語力を上げなければいけない海外駐在者むけなど、投資の位置づけが強くなる。
・法人営業責任者をおいて営業強化
キーエンスの営業で成果を上げた法人営業責任者を置き、法人営業を営業体制を強化
③価格改定
創業から7年で合計10万円程度(45万円⇒55万円)は値上げをしてきた。
待遇改善の発表とともに値上げの可能性についても言及している。
提供する価値と価格の関係において、常に価値が上回る状態、つまり値上げしても納得してもらえるようにしておくことが重要と考えている。
値上げができないということは価値の向上が止まっているとの考えから値上げに対しては常に前向きに考えている。
〇店舗は増やす方針だが店舗が成長のボトルネックにはならない
現在9店舗あり、第4四半期にも新校舎開設を予定している。対面式の英会話スクールは成長において店舗開設が不可欠だが、同社のカリキュラムでは対面は週1回であり、現状でもコンサルタントを増やし、生徒を増やすことは可能である。店舗が成長のボトルネックにはなることはない。
<バリュエーション>
時価総額 128億円
株価 1071円(2023年8月31日終値)
会社予想EPS 26.06円
会社予想PER 41.1倍
無配
*同社を知るための参考動画
プログリット(9560) 会社説明動画 – 「教えない英語サービス」で急成長中の強さの秘密は〇〇の圧倒的な質にアリ!
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〇参考note
・学習の質と量を最大化し、英語力をあげる。英語コンサルタントの1日
・プログリットのことが5分でわかるnote
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