9251 AB&Company 『スタイリストファースト』で美容室業界に革命を! レポートby相川伸夫

2022年1月25日

この記事の結論は、
―AB&Companyは日本の美容室業界を強く席巻していく揺るぎない圧倒的なメガプレーヤーになるー
というものになります。
※編集…2022年1月9日(日)に3H単独IRセミナー動画のURLリンクを記事文末に追記しました

はじめに

日本の美容室の数は今やコンビニよりも多いことは有名です。
今後、日本の人口は減少の一途を辿ることは確定的であり、かつ美容室代の出費はある年齢を境に少なくなっていきます。1000円カットも高齢化社会を映した姿であり、つまりは『美容室業界そのものの市場は縮小していくだろう…』という陰りある不人気業界という認識が一般的かと思います。
そんな不人気業界で『Agu hair』の屋号でサロン経営を主事業にしているAB&Companyは2021年11月19日に新規上場してきました。
「上場ゴール?」
―いいえ、違います。
テッペンを獲りに来たんです!
 
AB&Companyがさらに伸びると思った根拠として…
  1.  …スタイリスト報酬が100%売上連動なので気概ある人材が多く集まり、その中のわずかな優れた人材だけがリスクを背負ってFCオーナーとなる資格を許され、美容師時代には考えもつかない収益を目指すというギラギラ集団であること。
  2.  …スケールメリット増大によってどんどん規模の経済が効くようになっていく。商品仕入れ力やスタイリスト獲得力、新店舗立地や銀行融資、バックオフィス機能や広告効果等で個人店や競合店をコストでも圧倒できるようになり戦力差が拡大し続ける構図
  3.  …BtoCのリアル店舗によるサービス業のビジネスで一番ネックになる固定費が非常に小さく(直営もFCもスタイリストは変動費)新規出店コストも低いので出店速度が極めて速い。かつFCオーナーがリスクを負っているので規模拡大におけるサービス低下が起こりにくい
①&②&③の効果で店舗数増も捗り【増収・増益・増配】が出来る優良企業として今後大きく評価されていくと私は考えてこの記事を書いています。
現在、美容室の約9割が個人経営の店舗であり、そのオーナーの半数以上が60歳以上の高齢者です。そして、美容師の年収はサラリーマンの平均の3割下と厳しい環境です。
私も正直、初見時には「美容院?ファンド案件?ダメだろうな~」という印象でした。
しかし、その後資料を詳しく読んで『おっ!これは!』と感じたので、同社IRへの取材⇒社長への取材⇒メールでさらに追加質問
そうしてかれこれ100問は質疑したと思います。店舗にも行きましたし、裏取り調査もした結果、初見時の評価から先述した結論へと変わりました。
この記事ではAB&Companyという会社にどんな強みがあり、どんな特徴を持ち、どんなリスクがあるのか?等を徹底的に掘り下げていきます。
ご興味ある方はぜひご一読くださいませ。

AB&Companyって何の会社?

 
中低価格帯の美容室サロン『Agu hair』を直営&FCで全国展開している企業です。
2021年11月現在において673店舗(直営:FC=約3:7の比率)展開しており、店舗数ではすでに業界TOPかつ出店速度においては他のサロンを圧倒して引き離しており、出店ペースもさらに加速中という化物企業です
※2021年10月期 決算説明資料より 2021年12月22日開示
セグメントとしては3つありますが、大枠の理解はシンプルです。3つともAgu hairのビジネスです。

セグメント説明

※2021年10月期 決算説明資料より 2021年12月22日開示

1、直営美容室運営事業

⇒直営(連結子会社)でAgu hairサロンを運営しているセグメントです。100%連結子会社なのでお客様が支払ったお店での売上がそのままPLに計上されます。
スタイリストの人件費は業務委託契約なので売上完全連動で売上原価に計上されます。
将来の成長の為に美容室学校を出たばかりの新卒も年70名ほど採用しており、約1年は各店舗でアシスタント(固定給)として経験を積んだのち、業務委託で現場勤務していく仕組みです。直営店舗の年間出店数は20~30店舗を目安にしているとのことです
※セグメント理解のワンポイント
⇒直営美容室事業からフランチャイズ事業とインテリアデザイン事業に売上が発生しています。連結間取引なのでPLで相殺されますが、セグメント利益は相殺できないので直営美容室が稼げていないように誤認しがちです。
詳しくは後述します

2、フランチャイズ事業

⇒AB&Companyの一番の利益の源泉です。
直営と同じくAgu hairサロンを運営しています。がこちらはフランチャイズモデルになりますので資本関係がありません。
FC本部のロイヤリティはお客様がお店で支払った売上の5%
バックオフィス関連での本部への業務委託費用(売上の大体4%~4.5%)がPLの売上に計上され、そのほとんどが売上=粗利益という仕組みです
ビジネスモデルが極めて優れていると感じる部分がFC方式&バックオフィス機能です。フランチャイズオーナー自身がリスクを負い、銀行融資で新規出店するので物件選定や運営も真剣です。一般的なFCモデルと全く異なってくるのが【外部の人間がFCオーナーには成れない&一人のオーナーが何十店も他店舗経営をしていく仕組み】でしょう。
ちなみにスタイリストは直営同様、完全業務委託&新卒に関しても同様であり、FC店も直営店もスタイリスト側にとっての優劣はありません。利用客にとっても同様です。

3、インテリアデザイン事業

⇒直営&FCのAgu hairサロンの新規出店を効率的かつローコストにこなす為の事業セグメント。インテリアデザイン事業は完全連結子会社『建.LABO(ケンラボ)』が運営しています。よって直営向けもFC向けの店舗も一手に引き受けています。
※2021年10月期 決算説明資料より 2021年12月22日開示
セグメントは三つありますが、Agu hairが売上・店舗ともに拡大していくかどうか?が一番シンプルな同社への評価基準です。
先ほど説明したセグメント利益を調整した参考はこちらです。

美容室業界を解説

AB&Company戦っている市場や環境を理解することが同社の強みを理解することに直結します。
私も取材当初はどこが他社と違うのかさっぱりでした(笑)業界構造を認識する方が話が早いと思います。

理容室と美容室の違い

まず、床屋さんと呼ばれる理容室と美容室の違いをご存じでしょうか?
―最も決定的なものが「働くために必要となる免許」です。理容室と美容室は法律によって明確に区別されています。どちらも業務を行うためには免許が必要となるのですが、理容師免許と美容師免許のようにそれぞれ専用の免許が用意されています―

理容室と美容室の店舗数推移

近年理容室は縮小、美容室は増加しております
※ビュートピア「美容室の店舗数、令和元年は25万4422軒 過去最高を更新」引用
理美容室両方を合わせると年2000店舗増え続けている中で日本の人口は右肩下がりで減っていくレッドオーシャンになっています。

美容師の数と年収

ー1990年代後半、美容師という職業に注目が集まり始めます。「カリスマ美容師」ブームの到来です。芸能人の担当スタイリストとして名が広まった美容師たちがテレビに頻繁に取り上げられ、その芸能人に憧れる人々がこぞってそのサロンに詰めかけました。
~中略~
2000年に木村拓哉主演のドラマ「Beautiful Life ~ふたりでいた日々~」が放送されると、美容師人気はいよいよ誰もが知るものになります。
この時の「高校生のなりたい職業ランキング」で美容師が1位を獲得したというデータもあるほどですから、美容師の注目度の高さがわかるでしょうー
上記のグラフと合わせて↑の解説を読むと非常に理解が進みます。2000年代は美容師ってかっこよくて給与も良くて花形の職業でもあったわけです。
今では当時ほどの人気は薄れ、先述したような市場変化から過酷な競争が起こり、美容師という職業を敬遠する人も増えたことから新たに美容師を目指す学生も減ってきています。

美容室の価格帯と利用者の支払い金額と利用ペース

※美容室(理容室)の利用状況に関する意識調査より引用
1000名へのアンケートから↑は作成したとのこと。
高級店でも大繁盛しているサロンもあれば、低価格帯の設定でも不人気なサロンもあります。
Agu hairはプチプラとか中低価格帯と呼ばれる平均よりちょい安い設定金額です。
アンケートと照らし合わせると一番利用者が集中しているボリュームゾーンなのでいかに予約で常にいっぱいにしてフル稼働で回していくか?が会社にとっても美容師にとっても稼ぎを左右するポイントになってくるわけですね!

美容師の勤務形態・報酬体系は3つ

美容師と一口に言っても勤務形態は大きく3つに分かれます。

固定給の場合

店舗で働く美容師全員で一人のお客の相手をしても誰も損しません。カットしているスタイリストの脇で床の髪の毛を掃除したりシャンプー剤やカラー剤を用意してくれるわけですね。協力しやすいのがメリットであり、美容師の離職率も低くなります。デメリットは決まった金額しかもらえない(一般サラリーマン7割程度が平均)ことと、営業や技術向上への本気度がぬるくなりやすいことです。
新卒の見習い君はAB&Companyでもアシスタントとして固定給で雑務全般をこなします

完全歩合制(業務委託)の場合

お客を相手している美容師にしか報酬が発生しません。なので美容師一人で受け持ったお客のスタイリングを1~全て完結させることがほとんどです。お客を相手していない時は報酬も発生しません。メリットは自分の売上に完全連動して報酬が上がること。結果、営業(店以外でも)や技術向上(時間外でも)への本気度がガチになることです。デメリットとしてはお客が来ない店舗だと報酬が出ませんのでスタイリストの離職率は100%になるでしょう。言い換えれば稼げる(稼働が高い)ならばスタイリストはジャンジャン来ます。

固定給+歩合給の場合

上述した二つの特性を混ぜたものです。美容師に定着してもらいたいし、かつ営業や販売も頑張ってほしいという仕組みであり、月収に占める固定給ウエイトは80%ほどが多くなっているようですので歩合というより固定給+業績ボーナスを付けてるサラリーマンとあまり変わりない印象ですね。多くのサロンがこちらを採用しているようです。

固定給と完全歩合のどっちが人気なのか?

フリーランスという働き方は美容師業界だけではなく日本全体で広がってきています。報酬面だけではなく、働き方の自由という側面でも人気です。
2017年の11月6日の日経MJの記事によれば83,000人のフリーランスの美容師がいると言われ、ここには面貸しとも呼ばれるサロンの一部を時間借りしてSNS等で個人集客をして営業するトリッキーな業態も含まれています。
AB&Companyのようにサロンの美容師としての業務委託契約は全体の15%以下であると言われています。勤務形態ごとのメリット・デメリットで触れたようにフルタイムで完全歩合給で働くスタイリストは『固定給よりも稼げる』自信がないとまず面接に来ません。
一概には言えませんが【能力も野心もある人間が圧倒的に多いのが業務委託】という事業形態であると考えます。
AB&Companyが展開するAgu hairの平均年収は378万円/年と業界平均を21.5%も超えています。この平均年収の定義は時短勤務を含めたスタイリストの全平均なので驚きです。
ー取材質疑にてー
相川Q⇒全平均ではなく、Agu hairでフルタイムでの勤務形態の美容師の平均年収はいくらになりますか?
企業A⇒フルタイムであれば450万円/年程度がボリュームゾーンになります。新店であったり3年以上経過する店舗であったり、スタイリスト自体の人気の有無にも左右されるのでブレはあるものの他店で働いている方が当社に来られて「報酬が倍になった!!」というケースもあります。売上のバックも高還元ですし、集客力も非常に高いのでお店はいつも忙しいので稼ぎたい美容師はガンガン入社されます。
冒頭の表の再掲になりますが、業界で新規出店が順調なのは業務委託形式のサロンであり、かつFCモデルというのはいわば社長業の業務委託ともいえます。有能かつ成長に貪欲な社長がアメーバのように増殖するので成長は止まるどころか加速するというやる気1000%の事業形態とも解釈できます。

市場が飽和しているのに美容室店舗はどうして毎年増えるの?

業界調査を続けていく内に非常に悲しく、残酷な現実が美容師にはあることが分かりました。それは美容師の定年は40歳だとも言われていることに起因します。
思い返すと美容室で50代のスタイリストとかに当たることってほとんどないですよね。
美容師のイメージって、オシャレで健康そのものの流行りに敏感なイケてるお兄さんやお姉さんではありませんか?
美容師は肉体的にもかなり厳しく、平均年収も低いです。
※平均年収.JPより引用
ちょっと検索すると美容師がいかに生活が苦しいか?というサイトやそこから脱するには?というサイトもたくさん存在します
参考サイト◆美容師からの転職-カリスマが贈る、生き残りをかけた「サバイブル」

カリスマ美容師を目指して若い時から腕を磨き、その領域に辿り着いた一握りのスタイリストは高所得を得ることもできますが、ただ年齢を重ねてしまった美容師はどうしたらいいのでしょうか?
  ―転職or独立―  
大きくはこの二つから選ぶことになります。
他にも第三の選択肢として現場で美容師として立ち続ける道もあります。
それは低価格帯のカット専門店での雇用や雑用係としてのアシスタントルートもあります。しかし、第三の選択肢は給与水準を上げることも難しいので結婚や子育てにも苦労することは濃厚なルートでしょう。
結果、自然と【美容師のゴールは30~40代で自分の店を持つ】となるわけです。
このような背景から2000年~2010年頃までに美容師免許を取った人たちが借金をして『自分の城』を構えて生き残りに挑戦しているのです

独立は簡単か?

※美容業界のサロン生存率ってほんと? 美容室が生き残るための条件より
美容師としてお客様と接するのと美容室を経営することは全くの別物です。管理・運営となると広告の内容や費用コントロール、確定申告等の税務含め全て自分でやらねばなりません。
資本も太く無いので初年度に赤字でも試行錯誤でそのうちなんとかというのも厳しいかと思います。
1店舗目でコケたら借金抱えて転職一択になる厳しい環境での独立チャレンジになると思います。
結果、上記画像のように『新規出店サロンの50~60%が1年以内に閉店。3年以内に90%、10年以内に95%が廃業する』と言われているようです。

美容室の淘汰はこれから加速

※事業計画及び成長可能性に関する説明資料より 2021年11月19日開示
上記の会社説明資料の基になっている資料には下記の資料もありました
※第30回 厚生科学審議会生活衛生適正化分科会○美容業の実態と経営改善の方策(抄)より引用
アンケート調査結果なので全体を正確に表している訳ではありませんが【25万件以上の美容室の内およそ9割が個人経営かつ経営者は60歳以上であり、8割は後継者がおらず、18%程度の経営者は今後店を畳もうと考えている】というのがこの調査が示唆していることになります。
現在進行形で数多くの業界で高齢の個人経営者が撤退していき、大手事業者が市場シェアを寡占化していく流れが進んでいます。これは不思議なことでもなんでもなく、資本主義として非常に健全な流れです。個人経営を続ける方はそもそも事業成長に意欲を持っている方は少なく、自分の生活を満たすことがゴールであることも多いです。
一方、上場企業は成長を目指し、毎年獲得した売上から将来への投資をして売上を増やす行動をするのが原理原則になっています。レバレッジ経営していないとROEも低くなりますから株主に怒られてしまいます。
法人が個人と違って寿命が無いことも長期戦略上大きな違いになるでしょう。個人経営で出来ることには限りがありますが法人は資本もノウハウも蓄積して市場に最適化できます。美容室店舗の増大よりも廃業の方が増えるようになるのはそろそろのタイミングではないか?と私は考えています。

美容室業界についてのまとめ

ここまでの話を整理すると…
  1.  理容室は縮小して美容室は拡大
  2.  美容師は2000年~2010年は花形だったが今は稼ぐのも苦しい
  3.  業務委託の勤務形態は集客激強のお店でしかできない。稼ぎは1.3~2倍期待できる
  4.  飽和してるのに美容室が増えるのは美容師として食えないという後ろ向きな背景も大きく起因
  5.  美容室の9割が個人経営かつ半分以上が60歳以上で18%は廃業検討
ということになります。
環境としては理容室もほとんど同じことが言えると思われます。

創業者市瀬代表の想い

―スタイリスト(美容師)が働く環境を改善したい―
「長時間労働、低賃金、離職、この3つが全国の美容サロンが長年抱えていた共通課題。業界を成長させ、健全化させるにはこの三つの無い美容室経営をすることから始まる」

市瀬代表の経歴とAB&Companyの沿革

―略歴以前―

  1.  幼少期から野球に打ち込み続け、甲子園出場の為に県外の高校に入学
  2.  甲子園出場という夢を果たしてこれから何をやろうか?と不完全燃焼の二年間を過ごす
  3.  木村拓哉主演のドラマ「Beautiful Life」を見て『これだ!!』と思い立ち、20歳から専門学校に入り、22歳で卒業
  4.  新卒で青山表参道にある個人経営サロン(高価格帯)に入社。略歴へ

―略歴の詳細+沿革―

  1.  アルバイト経験もなかったので接客業の基礎~カリスマ美容師の技術~経営の仕方等を青山表参道の個人サロンで学ぶ。25歳頃には『独立する』という気構えを持っていた。下積み期間は4年ほど
  2.  2009年2月に独立の為に貯めた資金数百万円と国民生活金融公庫で借入をして1店舗目Alice hair(Agu hairの源流)を池袋で開業。独立前に勤務していた高価格帯から3分の1の料金設定に落とし、完全業務委託方式の中低価格帯路線でスタート
  3.  これが大ヒット。スタイリストもお客様も自然に集まってきてしまい、リピート予約で新規客も取れないようになってしまうから2店、3店と新規出店は意識せずの自然増で拡大していった。
  4.  資金面含め直営展開だけでは成長が遅いと感じるようになり、フランチャイズ本部としてB₋first株式会社を2011年12月に設立
  5.  自社にスタイリストとして入社し、店舗を回している有能かつやる気があり、利益至上主義ではなく協調性のある高い人間力を持つ人材に絞ってFCオーナー人選をしていった。直営店舗は2013年には30~40店舗に
  6.  2013年以降、FCビジネスを本格的にスタート。FCオーナーは役職を上がった人材の中からエリア担当FCオーナーの面接をパスし、市瀬代表の面接をパスした者にしか拓かれない。40人のFCオーナー立候補の中から2~5人ほどしか新規のFCオーナーには成れないモデルで飛躍的成長を遂げた
  7.  2018年には直営&FC店舗で250店舗ほどまで拡大していたが、管理体制構築のノウハウを持つ人材が乏しかった。弱みをカバーするためにCLSA Capital Partnersがアドバイザーを務めるSunrise Capitalと2018年3月に資本提携。バックオフィス専門人材である現CFOの永島氏を筆頭にCLSAのテコ入れによって大幅かつ急速に経営・管理の質の向上ができた。FCモデル導入を決断したとき同様、直営だけでサロン展開するのではなく、利益を分け与えてでも成長加速とリスクヘッジの両方を獲りに行く最善策が市瀬代表にとってCLSAとの資本提携の意義だった
  8.  FCの店舗数が急速に増加したこともあり、グループガバナンス強化のためFCオーナーの法人(Puzzle・agir・KALO)を完全連結子会社して(KALOは元から直営法人であるロイネスが吸収合併)直営に取り込む。ちなみにBSにある『のれん』はこの時に発生(より厳密には、これより前にB-first・ロイネスを買収しており、その際にのれんが発生。Puzzle・agir・KALOの追加買収によりのれんが増加した形)
以上が大まかな市瀬代表とAB&Companyの成長の流れです。

…気付きましたか?
1から会社を創業して、今や美容室業界でTOPの店舗数を誇るAB&Companyの市瀬代表は始めは至って『普通』のスタイリストだったんです!!

上場前のAB&Company、というよりAgu hairについてFCオーナーや市瀬代表にフォーブスが取材・特集した記事がこちらは必読です。

フォーブス特集記事

#1 サロン・イノベーションの新基準。数字が語るAgu.スタイルの可能性 2019/07/31

―本文抜粋―
田:Agu.は新卒で大卒新卒平均よりも初任給が高い(23万円※東京都)。研修中も給与が出ます。一般的な美容室ですと、就業時間前後や休日に無給で練習となりますが、Agu.では週休二日制、練習は就業時間内に行うことができます。店長クラス以上の徹底した指導で、一年でスタイリストになれ、約3年でFCオーナーの道が拓けます。その求心力は業界的に1年で3割は辞めると言われている中で、新卒定着率90%以上という数字でも証明されています。
樋口:これこそ美容師が求めても得られなかった未来予想図なのだと思います。Agu.が私の漠とした不安を、解消してくれました。
吉田:顧客も大切ですが、スタッフも同じように大事。代表の市瀬がよく口にするのは「カリスマ(美容師)をつくるのは難しいが、経営者はつくることができる」という言葉。これがAgu.の他チェーンとは違う、美容師と経営者の両方の「ヒトを育てる文化」なのです。

#2 美しい生き方をデザインするAgu.グループの成長戦略。美容師ファーストの働き方が生み出した好循環とは 2019/09/12

―本文抜粋―
そしてFCオーナーのメリットとして忘れてはならないのが、専門家集団によるバックオフィス機能だ。これらが人事労務から給与計算、決算までをサポートするため、オーナーたちは経営戦略や人材育成に存分に専念できる。
丹内:優秀な(店舗統括)マネージャーや店長が増えれば、売上は増加します。彼らに対して多岐にわたって学ぶ機会を提供するのは当然と言えます
しかし、そもそもの問題として、スタイリストになりたい人間の絶対数を増やさなければ、その方式にも限界はある。そのためにAgu.がとった施策は、給与を四大卒の初任給水準以上にまで上げるというものだった。これは美容業界においては非常に大きなインパクトとなった。それまで「収入が安いから」とスタイリストの夢をあきらめさせていた親も、反対する理由がなくなってしまうからだ。
丹内:週に3回、就業時間内にしっかり練習させて、十分な給与も払う。これは高校生が職業選択をするときに、大手企業と同じ土俵でスタイリストの道を選べるようにするための戦略です」

#3 美容サロンの変革者に聞く、世界進出までの成長ストーリー 2019/11/14

―本文抜粋―
市瀬:長時間労働、低賃金、離職、この3つが全国の美容サロンが長年抱えていた共通課題でした。自分も美容師として働いていて、このままでは未来が見えないと思い、もう一度スタイリストファーストで美容サロンというものを再構築できないかと、池袋にAgu.の前身となる業務委託サロンを立ち上げました
~中略~
市瀬:技術があればどこでも働けて起業もできるという、独立意識が強いのが美容師。自由な文化に見えるようで、現実は労働力を搾取され、疲弊して未来が見えず、離職率が高いという現実があります。そのためにサロン自体がスケールしていかない、これでは産業として成立しません
~中略~
東京・池袋にオープンした1号店がとった戦略は、従来の1/3という価格設定。それではスタイリストたちは非常に忙しくなってしまうが……。
市瀬:従来の価格帯では、ひと月の新規顧客が20人に満たないということもザラです。これではスタイリストの経験値が積み上がるのに、長い時間がかかってしまう。スキルも磨かれない。スタイリストファーストを標榜して彼らのキャリアパスを描こうとするなら、価格を下げて新規顧客を圧倒的に増やさなければならなかったのです。経験なくしてスキルは身につかない。だからこその価格設定です
その戦略は功を奏し、池袋東口1号店は3カ月で軌道に乗り、1カ月2000人近くの来客を実現した。業務委託スタイリストは常に14~15人。毎月通うことのできる魅力的な価格は、顧客のリピート率アップにもつながっていった。次にブーストがかかったのは渋谷店。周囲の店舗のカリスマ美容師たちが休日を有効活用するために、Agu.で働き始めたのだ。その現象は美容業界にAgu.の名を大きくとどろかせることになる。
試行錯誤の末たどりついた、自分たちなりのフランチャイズ
市瀬:Agu.としてスタートして、たくさんの仲間が集まってきて、ともに未来をつくっていこうと思ったとき、いちばん力を入れたのは、コミュニケーションでした。しかし独立願望が強いのが美容師。ともに仕事や食事をしながら、“明日やめるかもしれない人間と未来を語っている”という意識がありました。それが心底苦痛で……。それこそメンタルをやられそうなほど。でもその時間があったからこそ、お互いを知ることができたので、いまとなれば大きな意味があったと思います

市瀬代表を中心とする純血モデル

AB&Companyの経営理念は『スタイリストファースト』です。美容室運営の成功のカギは兎にも角にもスタイリストである人材が要です。
たくさん稼げるのは当たり前として、ワークライフバランスが制御できることも大きなポイントです。FCオーナーは皆Agu hair出身のスタイリストたち。言わば純血型FCモデルです。そしてAguで働くスタイリスト全員が技術的にも人間としても大きく育ってもらいたいという価値観が幹部メンバー、FCオーナー、スタイリストまで共有されているからこそ成長速度が落ちるどころか加速しているのだと私は分析しました。
ー市瀬代表への質問ー
相川Q⇒経営者リスクに関してどう考えていますか?創業者であるがゆえにこのリスクは大きいものです。上場もしたことですので、今後は店舗展開とは異なる能力が必要になるとも思われます。
市瀬A、監査役に関してもリアル店舗に精通した人間に入ってもらいたいと思っている。取締役会とかでも活発な議論をどんどんしていきたい。13年間ファミリーカンパニーでやってきたけど今後はもっと経営陣にプロを入れていきたい。店舗数も増えているからマーケティングの専門家や物販も強化していきたいので業界知見を持っている方等にしっかり入ってきて頂きたいと思っている。
相川Q、どうやってそういう人を捕まえますか?
市瀬A、外部の企業にお願いしたり、上場もしたことで伝手も増えたのでリファーラルしてもらってどんどんそうした人にまずは会いに行きたい。そして優れた方は口説いて弊社に入ってもらいたい。
熱量とスピード感、そして自身の不得意分野は専門人材をしっかり起用できる柔軟さがカリスマ性なのだと感じます。

同社の強み

ここまでで美容室業界の抱える課題と、Agu hairの成長を説明してきました。
改めてAB&Companyとしての強みを整理します

顧客獲得力

賃料の安い郊外型ロードサイドや都市型空中店舗でもホットペッパービューティーのWeb集客で常に予約いっぱいで稼働している店舗が多い印象です。

ホットペッパービューティーさえ使えば美容室は予約いっぱいになるのか?

答えは『No』です。
ホットペッパービューティーは美容室やネイルサロン等のネット予約・検索において圧倒的業界首位の座を確立しています。よって通行人が気付かない賃料の安い立地に店舗を構えるAB&Companyが新規顧客獲得するには必ず導入しなければいけません。
ホットペッパービューティーは主に月額定額制のパッケージサービスになっており、料金プランによってユーザーが検索したときの検索順位が変動し、お店ページの掲載写真枚数やクーポン数、こだわりページの有無なども料金システムによって変わります。
本来は経営者がホットペッパービューティーの営業と相談しながら周辺サロンの相場で金額設定をして、アピールポイントや閲覧数等を分析して最適化を図っていくのが通常になります。多くの個人経営者は店長兼スタイリストを兼ねているのでこれを並列処理する必要があります。この点、AB&Companyではバックオフィス機能を一手に引き受けている 子会社B-firstが一括管理・対応してくれます。これはFCオーナーにとっては大きなサポートであり、他の業務(出店立地の選定や人材育成)に集中することが可能な体制になっています。

スタイリスト獲得力

Agu hairで働くという選択肢は『ガンガン稼ぐ』という動機だけではなく『丁度良く働く』ということにもマッチしています。
特に育児中にスキマ時間を有効に使って働きたいママさんには絶大な支持も得ています。
ー本文抜粋ー
時短で働きやすいため、出産後の復帰先や育児中の勤務先としてママさん美容師に選ばれています。Agu.のスタイリストの約15%が“ママさん美容師”なんです。
こうした柔軟な勤務体制はこれまで美容師業では無理とされてきましたが『スタイリストファースト』と業務委託契約でバッチシです。やったらやった分だけ報われるので時短勤務だからと言って報酬が減らされる等もありません。

リファーラル(紹介)

取材当初、どうしてリファーラルが多いのか私には理解ができませんでした。『友人の美容師を誘ったら競争が熾烈になってしまうから自身の損になってしまうのではないか?』と感じた為です。深堀していった結果猛省いたしました。

―類は友を呼ぶー

美容師の友達には美容師が居ます。
総じて年収も少なく、勤務時間は長く、休みもバラバラで、将来の不安を抱えている方が80%以上かと思います。
Aguのスタイリストになったら1.5倍稼げて労働時間も30%減ったら超ハッピーです。
友人が苦しんでいたら「うち来る?めっちゃ稼げるし、良いよ!」と自然に口から出てしまうでしょう。また、同じ店舗に配属されるかは店舗でのスタイリストの込み具合に寄りますし、近隣Agu店舗の稼働率が高水準&スタイリスト出勤もギチギチしてきたらFCオーナーが借入をして新規出店をして近隣店舗からスタイリストに入ってもらって新規出店をします。他社を完膚なきまでに圧倒する驚異的な出店ペースですが全く無理なく出店をしているというから開いた口がふさがりません。
※リファーラル採用になった場合には紹介した方も紹介された方にも多少お手当が出るようです。

FCオーナーの収益も『スタイリストファースト』から生まれる

FCオーナーの収益最大化には優良スタイリストが店舗に定着することが不可欠です。お客様はお気に入りのスタイリストをリピートされます。それぞれ好みがあるのでスタイリストが多くなればターゲットゾーンも広がります。
オーナーとしての利益が出るようになるのは損益分岐点売上高を超えてからですので、そこを超えた分の売上は経営収益です。要は来店客で予約がいっぱいになればいい。つまりは『スタイリストが最大のパフォ―マンスを発揮できるようにオーナーが動く』ことでスタイリストとお客が最大化され、新規出店できる素地が出来上がるということです。
是非他社の口コミや給与も見てください。Aguの評価が断然すさまじい高評価で驚くこと間違いなしです。
報酬が一般美容師の金額よりもずば抜けて高いですが、報酬の計算は至ってシンプルです
  •  指名客=売上×50%
  •  フリー=売上×40%
時短勤務でもスタイリスト1年目でも10年目でも報酬は一切変わらない仕組みの完全実力制となっています。
役職が上がっていくと各種手当が付加されていく仕組みであり、FCオーナーを目指す場合は業務委託契約の面接時にその意思を伝えるとそうした方面で指導が強化され、現場でバリバリ稼ぎたいという意思を伝えるとお客の居ないスキマ時間を有効に使って能力向上の技術研修を受けられるというシステムになっております。
『懸命に指導してスキルアップしたら転職や独立してしまうんじゃないか?』という懸念は一般美容室の多くが抱えていますが、Aguのシステムでは独立ステップが社内に存在しているのでほとんど外には出ていかずに蓄積された経験値は社内循環します。投資における複利効果に匹敵するほどの破壊力を秘めるシステムだと感じました。

脅威の新人定着率と優れた研修制度

※Agu hair新卒採用情報より
外部からの採用も盛んですが、持続可能性の観点から専門学校を卒業した新卒生の育成にも同社は余念がありません。
一般的に美容師の離職率は年30%であり、新卒アシスタントの離職率は50%と言われています。3年目に残っている新卒生は10人に2人というのが常識です。
しかし、同社では1年後に88%も残っているので圧倒的定着率と言えます。
※Agu hair新卒採用情報より
新卒生は固定給で毎日8時間の実働でサロンのアシスタントとして実店舗で雑務をこなしつつ技能習得をしていきます。
Agu hairはスタイリスト当たり来店客数が一般店舗の3倍ほどになります。したがって経験値の蓄積スピードも一般のサロンの3倍で蓄積します。よって3年で一人前になる経験値が1年で溜まります。
自分の1つ上の21歳の先輩が年収500万円以上稼げてたら目の色も変わるってもんです(笑)
【動機・機会・環境】がAgu hairには全て揃っているからこそスタイリストが驚くほど獲得できるのです。

出店力

※Agu. FCオーナー @2020 All Agu. Awards
AB&Companyという会社は野心ある美容師にとってはドリームをつかめる会社です。
例えば現在大株主になっている丹内氏は2010年に市瀬代表が直営店舗を拡大中にスタイリストとして業務委託で入社しました。当時25歳です。
その3年後、東北大震災があった後に東北のFCオーナーとして拠点を東北に移し、わずか6年で80店舗以上出店して成功したAguTOPのFCオーナーです。
2018年に丹内氏の法人を連結子会社化する時には十数億の価値があり、これをAB&Companyと株式交換という形で現在時価20億円の株式を保有しております。
想像できますか?1スタイリストだった成年が10年後に大実業家になったなんて!
野心があり人間力が高い人材でならAguで人生を大きく変えられます。
『Agu出身のスタイリストしかFCオーナーになることは許さない』
市瀬代表の考えは考えるほどよく出来ていて、新しくFCオーナーになるのはいわば後輩になる訳です。なので15店舗以上管轄しているシニアFCが新人FCオーナーを育成する仕組みになっている訳です。
出店余地は膨大です。いくらでもまだまだ出店出来てしまうでしょう。
市瀬代表は2013年のFCスタート時点でFCオーナーを日本の各地に散らせて事業スタートさせました。
※美容業界の新風「Agu hair」は、サクセスストーリーの宝庫!
ー本文抜粋ー
「直属の上司が「Agu hair」でフランチャイズ店を展開していたんです。僕が入社したばかりのときは、まだ2店舗を展開するだけだったんですが、1年半くらいで20店舗を経営するまでになって…」
「~いわゆる“普通の美容室”じゃ未来が見えなかったんです。
~中略~
「Agu hair」は、開店するまでのノウハウや必要なスキルをすべて教えてくれるし、開店してからもサポート体制がしっかりしていていいですよね。おかげで、まだ20代の僕が8店舗を経営できるまでになりましたから!」
FCオーナー同士が同じスタイリスト出身であり、コミュニケーションも密に取ることで経営についての意見交換や新規出店のカニバリの防止も起きにくく工夫しています。
Agu hairでFCオーナーになりたいと旗印を上げる人物はすべからく10店舗とかで終わる気がサラサラ無いという気概を持った生粋の野心家であり、市瀬代表のフィルタリングによって人間力の高い人格者のみが厳選されているところに出店力のコアがあるのでしょう。

リスクについて

ここまでAB&Companyという会社の良い所にスポットライトを当ててきました。
まず、誰もがすぐに思いつくFCオーナーの離反リスクについてです。

FCオーナーが離反する可能性は?…「0%!」

相川Q⇒ 諸々勘案してFCオーナーに離反されるリスク(FCを抜けて看板を変える等)がどの程度あるのか?肌感で構わないので何%程度と思いますか?
市瀬代表A⇒ 離反リスクは0%ですね!
市瀬代表はFCモデルを始めるに当たってFCオーナーが力を付けた先に離反が起こることは至って当たり前だと想定していました。力を付けたFCオーナーはAgu hairから離反して自分の店として営業を始めればロイヤリティ分の利益が追加で手に入ります。FCオーナーがお店の看板を付け替えて商売ができる場合にはオーナーにとって離反する動機が働いてしまいます。
そこで弁護士と時間を掛けてフランチャイズ契約の内容を練りに練りました。その結果、離反なんてしようと思わなくなる契約書の条項が次です

フランチャイズ契約を解消する場合には営業店舗の原状回復が必要

これは離反を考えるFCオーナーとしては致命的な条項です。減価償却が終わったテナントを看板だけ付け変えて営業するなんてズルはできないのです。
それでも無理やり新規に違う店舗を借りて内装工事をしたとしても先述したようにスタイリストが居ないとビジネスになりませんが、スタイリストは1か月無給で待っていてくれることはありません。しかもよほどの好待遇でないとAguを辞めてまで付いて行かないでしょう。つまりはこれまで積み上げたものを一度リセットしないことには離反ができないようにしてあるわけです。
ただ、どうしようもない理由でFCを脱退するとなった場合には近隣のFCオーナーが会社や店舗を買うorAB&Companyが買うというのが一般的な流れになるかと思います。

バックオフィス機能も大きなポイント

さっきの一つだけでも十分に見えますがもう一つ大きいポイントもあります。
AB&Companyの強力無比なバックオフィス機能の存在です。
フランチャイズ加盟金は無料ですので、FCオーナーになるのに必要な資質は言ってみれば人間力のみです。フランチャイズ契約をすると同時にFCオーナーには法人を設立してもらいます。店舗の新規出店コストは大体1000万円~1200万円であり、このほとんどは内装含めた工事代金なので減価償却になります。この時の設計等に関してはAB&Companyの完全子会社の建LABOが設計~業者手配まで担います。
新FCオーナーは経営者1年生なので税務知識も法人管理、スタイリストの報酬支払管理、広告宣伝等に関して発生する膨大な事務仕事を捌く知識も能力も全く持ち合わせていません。
これら全てをAB&Companyの完全連結子会社のB-firstが全部やってくれるからFCオーナーはスタイリストとのコミュニケ―ションといかに現場をうまく回して売上を伸ばすか?に注力できます。完全分業だから急速に成長が出来ているFCモデルなのです。
仮に30店舗を経営しているFCオーナーが離反を企てたとします。
テナント解約に合わせ新規店舗を先行工事をしたとします(この時点で30×1200万円=3.6億円の先行投資)
30店舗分のバックオフィス業務を全部自力でやる必要が出てきます。30店舗というと年商で9億円程であり、これまでAguに払っていたバックオフィス費用4.5%で4000万円です。【記帳・シフト・報酬計算・広告・採用・仕入等】であり、スタイリストの数も30×5=150人分です。4000万円でこれらがやり切れるのか?また準備構築期間も相当必要ですし、そもそもAguで稼げているスタイリストがどこまで離反についてくるのかも不透明です。
よってFC離反は【フランチャイズ契約条項のテナント原状回復&バックオフィス機能の恩恵消滅】が効き、離反リスクは「肌感で0%」と言い切れるほどの自信になっているということです。離反せずにFCオーナーとしてさらなる新規出店や新業態の店舗開発のチャレンジ等に取り組んだほうがポジティブと考えられるでしょう。

総資産の約60%を占めるのれん&無形資産の減損リスクと52億円の巨額借入金

巨額の『のれん』は2018年にFC法人であった下記のそれぞれの会社を連結化した際に増大しました。※緑マーカーの使用権資産とリース負債はIFRSの会計上、将来の賃料が資産と負債にそれぞれ計上されています。
※新規上場申請のための有価証券報告書より
Agu hairのサロン事業のビジネスモデルではBSをほとんど必要としません。出店コスト1000万円+3か月分の固定費諸々として1500万円の借入で事業をスタートします。
平均3か月目で黒字化し、1年、2年、3年と固定客が付いてくるので、稼働率上昇によって売上・利益ともに伸びていきます。
※新規上場申請のための有価証券報告書より
3年後ともなれば1店舗の売上は席数などによって変動しますが年3~4000万円程になると思われます。
上の実績は2020年10月期を基準に作成されているのでコロナ禍のネガティブ影響を最も色濃く受けた数字で計算されています。この実績数字で示されているようにAgu hairの場合は都心部よりも人口の少ない地方に出店すると収益性が高いです。
FC法人として買収後ののれん額の大きかった丹内氏は東北方面を担当しており、店舗数もFC法人TOPかつ地方なので好業績の店舗も多かったのでは?と推測しています。
例年水準であればロイヤリティを払った後の営業利益でも8%以上は出せるのではないでしょうか?
つまり売上4000万円の店舗であればFCオーナーは320万円の営利が入る計算です。減価償却もあるのでこれよりも手残りは出ますね。このCFを元に新たに銀行融資を組んでレバレッジを掛けて店舗を増やしているのがAB&Companyのビジネスモデルになります。
企業買収時にはその企業が今後生み出すキャッシュフローを元に買収価格を計算し、純資産よりも上振れた差額分がのれんとしてBSに計上されます。のれんが大きい一番の理由はPLでビジネスが回るからということです。人はBSに載りません。

減損リスクは?

会計基準にIFRSを採用しているので通常時のれん償却はありませんが、毎期減損テストをしています。割引率を掛けてDCFで計算します。
現状では全く問題ない水準かつ、コロナ禍でも黒字であったこととや店舗数も難なく伸ばせていることもあり、過度の警戒は不要です。直営店の事業が赤字になるなどしたら警戒すべきかと思います

借入金リスクは?

2020年10月30日に既存借入金の借り換え5,890百万円を行っています。
営業CFの利息の支払い額は20年10月期134百万円に対して21年10月期は87百万円と縮小しております。
フランチャイズ事業でロイヤリティとバックオフィスで利益が大きく入ってくる構造がすでにしっかりと回っていることも加味すればこちらも現状では特段の心配はないと思われます。

直近業績と現在株価

マザーズに新規上場してきた初年度から配当性向30%を出すという点については後述します。

次期中計について

先日の決算説明会において 2021年10月期決算説明会(書き起こし)
『47都道府県においても西日本、四国、九州などはまだまだ展開できていないところがあり、FCオーナーが少ないエリアもありますので、FCオーナーとともに店舗展開をしっかりと行っていきたいと思っています。』
すでに業界TOPの座にありますが、同社の成長速度はさらに増す計画です。月次も開示を始めたので出店ペースも確認できます。私も試算しましたが店舗数に関しては特に無理な数字ではない印象です。
利益に関してはどこでコストを掛けていくのか?また、コロナ影響が今後も出てくるのか?等によっても変わってくるので今後の動向次第でしょう。

ファンドの持ち株について

ファンドはIPO時に持ち分の45%ほどを売り出しをしましたが、発行済み総数に対し約35%は継続保有しています。
ロックアップは180日or1.5倍の条件設定なので公募価格の1490円の1.5倍の2235円は市場でも意識される上値かと思います。
持ち分全てを売り出すよりも継続保有した方が業績拡大によってさらなる上値を追えると考えた為ではないか?と推察します

成長途上で配当を出す背景

相川Q⇒ なぜ配当を出すのか?についてです。プライムを早期に目指すということやキャッシュフローが回るから成長への原紙は確保できる等の理屈の点は理解できていますが、一番の動機の部分はどこにあるのでしょうか?グロースしていくなら配当0で内部留保して成長加速に使うことも十分に選択肢にあったかと思います。
企業A⇒ まず第一に、当社の時価総額であれば売買の中心は個人株主となるという想定の下、配当0という選択肢はなかったです。tech銘柄のグロースレベルであれば、記載いただいた案も選択肢としてあろうかと思いますが、当社のようにグロースはしつつも、実業ベースの企業はやはり手堅さを求める投資家層も一定数いると考えております。そうしたときに配当を行う妥当性はあると思います。
直接的な回答としては上記のようになっております。
ただ、これ以外にもファンドが長期保有していることや、FCオーナーへの保有継続のインセンティブとしてもあるのではないか?と思います。持ち株会での奨励金も10%出しており、イケイケの企業でありながら実直な部分がこういうところにも出ているのではないでしょうか。

まとめ

サービス企業で大きく成長するには3つの基準となる条件があると私は思っています。
  1.  顧客に求められるサービスが提供でき、かつ利益も出せるWIN―WINの関係
  2.  働く人の満足度が高く、採用に苦労せずに人が集められる
  3.  経営者が成長の意志を明確に持ち、投資(費用増加)にアクセルを踏める
AB&Companyはこの三要素を十分にクリアしている企業と思います。
未来のことは不確かですので誰にもわかりません。ですが、過去⇒現在の市場環境の変化と美容師の今後の姿を考えたときに、同社が飛躍していく可能性を強く期待したいと思います

追記⇒IRセミナー動画(質疑103問含む)

開催日時:2022年1月9日(日)
◆前半
⇒会社説明と事前質問回答
◆後半 
⇒チャットからの質疑応答

2021年10月期決算説明会(動画)

https://www1.daiwair.jp/qlviewer/e-cast/21122292515gddi/index.html

企業HPへ

https://ab-company.co.jp/jp/