7196 Casa 2025年1月期2Q決算を発表 by宇佐見聖果 ※アナリストレポート

目次 

1.2025年1月期2Qの連結業績 
2.のれんの減損損失を計上 
3.新規連結を実施 
4.配当の状況 
5.中期経営計画を発表 
6.契約件数の推移 
7.事業用保証領域の拡張 
8.営業力の強化 
9.自主管理市場への進出について 

1.2025年1月期2Qの連結業績 

当期2Q単体の業績は、売上高が30億8百万円(前年同期比+7.7%)、営業利益が1億36百万円(同-41.0%)で着地。上期累計では売上高が60億3百万円(同+8.8%)、営業利益が-2億56百万円(赤字拡大)で着地しており、期末予想に対する進捗率はそれぞれ49.7%、-33.7%となっている。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

営業利益を圧迫している要因の筆頭は、新システムの稼働に際して発生した不具合を原因とする貸倒引当金繰入の増額(前年同期比+414百万円、+28%)であった。これについては現在、修繕が施されて求償活動は通常の状態に回復しており、下期は改善を見込む。他にも、今年2月にリリースした新システムの開発に伴う業務委託費の増額(同+76百万円、+32%)も、上期の利益を圧迫した要因となる。

一方で、2020年8月にダイレクトSをリリースして以来、利益を圧迫してきた紹介手数料(同+71百万円、+10%)については、2023年1月期4Qをピークに対前年同期比での増額率が落ち着いてきている。

今後は、前期に導入を開始した金融審査商品の浸透に伴う貸倒引当金繰入の圧縮や、単価の高い事業用保証商品の拡充が進むことによって、利益率が改善していくことを期待したい。

2.のれんの減損損失を計上 

今期2Q、2024年1月期2Qに子会社化したGoldKey Co.,Ltdと共同で開発を進めてきた、自主管理家主を対象とした入居者管理アプリ「Roomコネクト」の販売実績が計画を下回ったとし、GoldKey Co.,Ltdに係るのれん全額分364百万円の減損損失を特別損失として計上、併せて期末予想における最終利益を修正した。

尚、子会社に係る減損の事例としては、2022年1月期に子会社化したAlong withについて2023年1月期にのれんの全額を減損しており、今回減損を行ったGoldKey Co.,Ltdについては2社目となる。

3.新規連結を実施 

今期2Q、コールセンター事業を営む株式会社プロフィットセンター(2024年6月期売上高327百万円、営業利益50百万円、純資産130百万円)を、382百万円の取得価格で完全子会社化した。

尚、同社が上場後に子会社化した事例としては、2022年1月期のAlong with、2024年1月期のGoldKey Co.,Ltdに次いで今回が3社目となる。

4.配当の状況 

今期2Qの決算発表で配当予想の修正は行っていない。

同社は安定した配当を目指しており、1株当たり配当額は2019年1月期から段階的に引き上げ、2021年1月期以降は30円を維持している。配当性向については、上場直後は30%を目途にしていたが近年では50%弱となることが多く、特に2023年1月期は投資有価証券評価損および減損損失による特別損失などで利益が圧迫された結果、配当性向は110%を超えた。また、自社株買いはほぼ毎期実施している。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成
※配当性向・総還元性向は、総額ベースでリンクスリサーチが計算したものを使用

5.中期経営計画を発表 

今期2Qの決算で同社は、2028年1月期を最終期とする中期経営計画を発表した。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

尚、同社は2022年1月期4Q末に、2025年1月期を最終期とした3ヵ年の中期経営計画を発表しており、上場後に発表した中期経営計画としては今回が2回目となる。

6.契約件数の推移 

上期の新規契約件数は75,278件(前年同期比+4.9%)、うち住居用保証が70,249件(同+4.2%)、事業用保証が5,029件(同+16.4%)であった。また、保有契約の純増数は約15,000件(同-25%)であった。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

7.事業用保証領域の拡張 

居住用と比較して滞納発生率が低い上に、平均単価が2倍以上(居住用:5万円、事業者用:12万円)である事業用は、既に成熟期に達した居住用に対して市場に多くの余白が残されており、現在各社が競って保有契約数を伸ばしている領域である。同社は2021年1月期2Qに事業用保証を開始しており、今期2Qにおける新規契約件数に占める事業用保証の割合は8.7%と、前年同期比で1.0%増加。売上高に占める割合は直近で22.5%となっており、今期末には24%、今期2Qに発表した中期経営計画の最終期にあたる2028年1月期までには30%まで高めることを目標としている。

多数の店舗が集まるショッピングモールへの積極的な営業活動、証券会社や銀行を介した紹介獲得、ビルオーナーを対象としたセミナーの開催、事業用物件サイトへの接触など複数の方法を組み合わせることによって契約数の獲得に注力している。

8.営業力の強化 

現在同社は営業エリアの拡充に注力しており、前期は上場後としては初めてとなる新規出店を宇都宮、高崎、京都の3拠点に実施。今期は広島ともう1拠点を計画しており、期末には計17店舗となる見込み。今期2Qに発表した中期経営計画では、2028年1月期までに25店舗まで増やす計画としている。(下表:今期2Q時点における同社の事業拠点)


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

また、店舗数の増加と併せて人員採用にも注力しており、営業人員として、20代の既新卒を中心に前期は10名を獲得、今期は15名の獲得を予定している。一方、退職者数が採用者数を上回って推移しており従業員数は2022年1月期から3期連続して減少。この現象について同社は、近年変化しつつある同社の経営方針に合わないという理由で年配層の退職が増加しているが一時的な現象であると捉えている。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

9.自主管理市場への進出について 

同社は上場前から、全国にある借家戸数の内50%弱を占めると自社内で試算している自主管理市場の開拓を目指してきた。2024年1月期2Qに、不動産DX総合コンサルティング会社のGoldKey Co.,Ltdを子会社して以降は、GoldKey Co.,Ltd代表の木全雅仁氏が持つネットワークを頼りに全国各地で自主管理家主を対象としたセミナーを開催し、そこで繋がりを得た自主管理家主に対して、大家のための無償の賃貸管理システム「Owner WEB」へのユーザー登録を促進してきており、現段階において、その登録者数は計画通り伸長しているとしている。


出所:同社開示情報を基にリンクスリサーチ作成

また今期からは、「Owner WEB」のユーザーとなった自主管理家主に対して有償の入居者システム「Room コネクト」の販売を開始したが、こちらについては収益化に苦戦しており、今期2Q、前述のとおりGoldKey Co.,Ltdののれん全額について減損を発表した。

「Room コネクト」については今後、準大手規模の管理会社にターゲットを変更して販売活動を継続していくとしている。

以上

成長株投資, 銘柄研究所

Posted by usamiseira