4811 ドリーム・アーツ:大企業向けSaaSの優位性と生成AI(DAPA)が牽引する次なる成長ステージ

・ エグゼクティブサマリー

  1. 事業内容:レガシーITからの脱却とクラウドSaaS企業への完全なる構造転換
  2. 大企業向け市場においてなぜ強いのか:機能的充足度と低学習コストの両立
  3. エンタープライズDXの「潮が来ている」:BIG DONUTS市場の顕在化とMCSA戦略の必然性
  4. 生成AIの拡大が事業へプラスになる理由:DAPA構想の実践的価値と競争優位
  5. 中長期的な成長戦略と持続的スケーリングを可能にする5つのCSF(重要成功要因)
  6. 2026年12月期の業績見通し:見かけ上の減速 vs 実態の加速

エグゼクティブサマリー

本レポートは、従業員1,000名以上の大企業(エンタープライズ)市場に特化したSaaSプロダクトを提供する株式会社ドリーム・アーツ(東証グロース:4811)の事業構造、競争優位性、および中長期的な成長戦略を分析したものである。同社は、大企業が直面するレガシーシステムからの脱却とデジタルトランスフォーメーション(DX)の要請に対し、独自のソリューションと戦略で市場を牽引しており、現在、次なる飛躍に向けた極めて重要な転換点にある。

クラウド化による強固な収益基盤:ストック比率87.5% うちクラウド比率79.0%

同社は2018年より、従来型のパッケージソフトウェア販売および受託開発からクラウド(SaaS)モデルへの構造転換を断行した。一時的な業績の停滞という「産みの苦しみ」を経て、2025年12月期では、全社売上高の87.5%をストック収益(うちクラウド比率79.0%)が占めるまでに成長している。このSaaSビジネスとしての卓越したユニットエコノミクスと高い収益の予見性が、同社の積極的な成長投資を可能にする最大の原資となっている。

大企業市場における競争優位性:機能充足+低学習

日本のB2B向けSaaS市場において、同社の主力ノーコード開発ツール「SmartDB」が選ばれ続ける理由は、大企業特有の複雑怪奇な業務プロセスをデジタル化できる「機能的充足度」と、非IT人材でもシステムを構築できる「低学習コスト」(使いやすさ)を両立させている点にある。外資系ローコードツールのように高度なITスキルを要求せず、国内中小向けツールのように機能不足に陥らないこの絶妙なポジショニングにより、KDDIや三菱UFJ銀行など、各産業のリーディングカンパニーにおいて全社的なインフラとして採用が拡大している。

エンタープライズDXの「潮」とMCSA戦略

現在、大企業では基幹系システム(MCS:ミッションクリティカルシステム)の周辺に位置する「BIG DONUTS(BD)」と呼ばれる現場部門の業務領域のデジタル化が急務となっている。同社はこの巨大なブルーオーシャンに対し、ERPのフロントシステムをSmartDBでノーコード化する「MCSA(Mission Critical System Aid)」戦略を推進している。SIerによる多重下請け構造から脱却し、現場主導でシステムをアジャイルに構築・運用できるこのアプローチは、大企業のアジリティ(機敏性)を劇的に向上させる不可逆的な「潮」となっている。

生成AI構想「DAPA」がもたらすパラダイムシフト

市場を席巻する生成AIの波は、同社のビジネスモデルにおいてプラス要因として作用する。2026年4月にSmartDBへ本格実装される新構想「DAPA(DreamArts Practical AI)」は、AIを単独のチャットボットとしてではなく、大企業の厳格な権限管理のもとで、日常の「業務プロセス(ワークフロー)」に直接統合するアプローチである。現場の市民開発者が自らAIプロンプトを設計・改善できる仕組みは、ハルシネーションのリスクを制御しつつ実務に直結するAI活用を実現し、同社製品の解約を防ぐ極めて強力なスイッチングコスト(ロックイン効果)を形成する。

成長戦略と2026年12月期の戦略的投資フェーズ

同社は「デジタルの民主化」の社会実装を目指し、2028年12月期までに大企業での導入シェア10%超、売上高100億円突破を目指す中期経営計画を推進している。その達成の鍵となるのが、3,800名を超える認定資格者(SCS)の育成やパートナー連携といった外部エコシステムの拡大(EC2戦略)である。

2026年12月期の業績見通しは、主力クラウド事業で前年比15.0%の増収を見込む一方、レガシーなオンプレミス事業の意図的な縮小と、人材獲得、広告販促、AI開発へのアグレッシブな先行投資により、一時的な減益計画となっている。この減益は競争力低下によるものではなく、NRR(売上継続率)109.8%という極めて健全なユニットエコノミクスを背景に、中長期的な市場シェアとLTV(顧客生涯価値)を極大化するための極めて合理的かつ野心的な布石として評価されるべきである。

*NRR(売上継続率)が100%を超える、つまり既存顧客からの売上が解約を上回るペースで拡大(アップセル/クロスセル)しているということ。

*ノーコードツール と ローコードツールの違い
同社のSmartDBはノーコードツール、開発効率化の文脈でローコードツールと並べて語られることがあるが、まったく違うものである。ローコードツールはエンジニアの開発を助けるもの。
ノーコードツール:
– プログラミングを全く必要とせず、視覚的な操作のみでアプリケーションを開発
– 非IT人材でも直感的に操作可能
– 導入から運用までIT部門への依存度が低い
ローコードツール:
– 基本的な機能は視覚的に開発可能だが、高度な機能には一部コーディングが必要
– IT人材やプログラミングの基礎知識が必要
– 運用・保守においてIT部門のサポートが必要
それぞれ活用される場面が異なるが、ローコードツールの場合はIT業界における人材不足という課題の影響を少なからず受けるという点があるのに対し、ノーコードツールは業務に精通している人材がいれば、業務効率化を実現する仕組みを構築することが可能になる。

1. 事業内容:レガシーITからの脱却とクラウドSaaS企業への構造転換

株式会社ドリーム・アーツは、1996年12月の設立以来、一貫してエンタープライズ(従業員1,000名以上の大企業)市場に特化したシステムソリューションを提供してきた独立系ソフトウェアベンダーであり、現在は強固なストック収益基盤を持つクラウドSaaS企業として確固たる地位を築いている。同社は「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションを掲げ、単なる業務効率化ツールではなく、人間特有のコミュニケーションから生み出される「協創力(Peak the Arts of Co-creation)」を極めるためのICT基盤を提供している。

同社の事業基盤を支える組織体制は、東京本社と広島本社(2016年開設)の2本社体制を中核とし、沖縄県(那覇・石垣)や中国大連(2007年設立の100%子会社)にも拠点を展開している。この多拠点体制は、日本国内の深刻なIT人材不足に対する地理的優位性を確保するとともに、24時間365日稼働のクラウド監視センター(石垣オフィス)によるエンタープライズ品質の運用保守体制を実現している。2025年12月末時点での連結従業員数は293名に達しており、高度な技術力と顧客伴走力を有するプロフェッショナル集団を形成している。

同社の経営陣は、エンタープライズIT市場における極めて深い知見を有するメンバーで構成されている。代表取締役社長の山本孝昭氏は、株式会社アシストやインテルジャパンを経て同社を創業し、創業初期から大企業に特化する戦略を主導してきた。また、取締役専務執行役員の牧山公彦氏(住友信託銀行出身)が経営管理を、取締役執行役員の石田健亮氏(東京大学工学部出身)がCTOとして製品開発を牽引するなど、堅実な経営管理と高度な技術開発力が融合した経営体制が構築されている。

同社の事業内容は、プログラミングの専門知識を持たない非IT人材(現場部門の担当者)でも直感的な操作で業務アプリケーションを開発できるノーコード開発ツールを中心とした複数のSaaSプロダクト群と、特定顧客向けのクラウド・プロフェッショナルサービスから構成されている。提供する主要プロダクトおよびサービスラインナップは以下の通りである。

*ホリゾンタルSaasとバーティカルSaasについて
ホリゾンタルSaas:業界・業種問わず、会計・人事など「共通の業務機能」を水平(ホリゾンタル)に幅広く提供するサービス
バーティカルSaas:特定の業界(建設、医療など)に特化したサービス

2018年 完全クラウド化へのシフトで一時的停滞が転換点となり成長へ

ドリーム・アーツの事業展開において最も特筆すべき財務的・戦略的転換点は、2018年に決断されたビジネスモデルの完全クラウド化へのシフトである。2017年以前の同社は、パッケージソフトウェアのライセンス販売およびカスタマイズ開発を中心とする従来型の独立系ソフトウェアベンダーであった。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流を見据え、2018年より製品基盤をクラウド(SaaS)へと全面移行するモデルチェンジを断行した。

このビジネスモデル転換期(2018年〜2020年)においては、スポット収益であるオンプレミス型のライセンス売上が減少したことで全社売上高は一時的に横ばいとなり、当期純利益も一時的な赤字(2020年は19百万円の単体赤字)を計上する「産みの苦しみ」を経験した。しかし、この期間にストック収益の積み上げを忍耐強く継続した結果、2022年にはビジネスモデル変革を果たして大幅な黒字化を達成し、クラウド事業者としての強靭な体質転換に成功した。

以下のグラフは、同社の売上構成におけるストック比率およびクラウド比率の劇的な進化を示している。

データが明白に示す通り、2018年の66.5%だったストック売上比率は、2025年12月期末時点で87.5%という極めて高水準な安定収益基盤へと成長を遂げている。このSaaSビジネスとしての卓越したユニットエコノミクスと高い収益の予見性が、後述する製品開発やマーケティングへの積極的な成長投資を可能にする最大の原資となっている。

2. 大企業向け市場においてなぜ強いのか:機能的充足度と低学習コストの両立

日本のB2B向けSaaS市場には無数のプレイヤーが存在するが、ドリーム・アーツが持続的な高成長を実現している最大の理由は、「大企業(エンタープライズ)向け」という技術的・組織的に極めて難易度の高い市場において、他社の追随を許さない独自のポジショニングを確立している点にある。

同社がターゲットとする市場は、従業員1,000名以上の大企業約3,700社(就業人口約1,400万人)である。このエンタープライズ市場において同社製品が選ばれ続ける本質的な理由は、大企業特有の複雑怪奇な業務プロセスをそのままデジタル化できる「機能的充足度」と、非IT人材でもシステムを構築できる「低学習コスト(使いやすさ)」という、通常はトレードオフの関係にある二つの要素を両立させていることにある。

一般的に、日本企業、特に歴史ある大企業の稟議制度や業務フローは、兼務役職者の存在、金額や条件による複雑な承認ルートの分岐、根回しを前提とした合議制など、極めて緻密かつ複雑なロジックで構成されている。この市場領域に対する従来のソリューションは、以下の二極化された課題を抱えていた。

①国内ベンダーが提供する中小企業向けノーコードツール: 

これらは学習コストが低く導入が容易である反面、大企業が求める複雑なワークフロー設計、緻密な権限設定、高度なセキュリティ要件を満たすだけの「機能的充足度」が不足している。結果として、大企業の実務には耐えられず、部門内の簡易的な用途にとどまってしまう可能性がある。

②外資系ベンダーが提供するエンタープライズ向けローコードツール: 

機能的充足度が高く複雑な要件にも対応できるが、システムアーキテクチャが重厚であり、操作を習得するための「学習コスト」が著しく高い。結果として、現場の業務担当者(非IT人材)が自ら開発することは事実上不可能であり、情報システム部門の慢性的なリソース枯渇や、外部のシステムインテグレーター(SIer)への多重下請けによる開発依存という旧態依然とした構造課題を解決できない。

同社の主力成長ドライバーである「SmartDB」は、この二律背反を見事に打破している。SmartDBは、マウス操作を中心とした直感的なユーザーインターフェースを備えながら、エンタープライズの業務デジタル化に不可欠な6つの要素(フォーム作成、ワークフロー制御、Webデータベース、コミュニケーション、高度なセキュリティ、外部システム統合・連携)を網羅的に提供している。多彩なフォーム部品によるダイナミックな入力制御、適切で迅速なコラボレーション活性化、分断された業務をシームレスにつなぐAPI連携機能により、現場主導のDX(市民開発)を実現する基盤として機能する。

この競争優位性は、各産業を代表するリーディングカンパニーでの大規模導入実績によって客観的に証明されている。三菱UFJ銀行、大和ハウス工業、日本航空(JAL)、住友不動産、ツルハホールディングスなど、厳格な内部統制とセキュリティ基準を有する企業群がこぞってSmartDBを採用している。

具体的な活用事例(ケーススタディ)を分析することで、その強みがさらに明白となる。

  • KDDI株式会社の事例(全社10,000名超の稟議書システム刷新): 

KDDIでは、旧システムが複雑な承認フローに対応しきれず、業務の分断や転記作業が多発していた。また、データ構造化が不十分で意思決定の遅れが生じていた。同社は全社員1万名超が利用する意思決定プロセスの根幹を成す稟議書システムをSmartDBで刷新した。選定の決め手となったのは、複雑な要件に現場主導で柔軟に対応できるノーコード機能、他システム(会計システム、BIシステム等)との直接連携を可能にする豊富なAPI、そして「20年後のデータ容量にも耐えうる試験を通過」した卓越したシステムパフォーマンスであった。

  • MS&ADグランアシスタンス株式会社の事例(6,000事業会社との連携基盤):

ロードサービスを提供する同社では、10年以上前にスクラッチ開発された情報共有システムの改修に膨大なコストと時間を要していた。SmartDBの導入により、複雑な料金協定機能(車種や状況に応じた作業料金の自動計算など)をノーコードで内製化することに成功した。毎月30〜40万件という膨大な救援要請データを高速処理し、全国約6,000の提携事業会社とPC・スマートフォンを介して円滑に情報共有するミッションクリティカルなインフラとして稼働しており、付随業務の50%削減という劇的な生産性向上を実現している。

  • 株式会社朝日新聞社の事例(ERPのフロント基盤としての活用):

 約10年利用してきたオンプレミスの会計システムがブラックボックス化し、バージョンアップや保守コストが増大していた。同社は基幹システムを「Oracle ERP Cloud」へ移行すると同時に、全社員約3,700名が利用するERPフロントシステムとしてSmartDBを採用した。海外製のERPパッケージでは対応が難しい日本特有の複雑な承認フローをSmartDBの標準機能で吸収し、購買申請や支払管理のデータをOracle ERPと直接連携させることで、変化への即応性と運用コストの劇的な削減を実現した。

このように、ドリーム・アーツが大企業向け市場において強い理由は、エンタープライズの複雑性に耐えうるアーキテクチャを持ちながら、現場の市民開発者(非IT人材)へシステムの主導権を移譲できるプラットフォームを提供している点に帰結する。

3. エンタープライズDXの「潮が来ている」:BIG DONUTS市場の顕在化とMCSA戦略の必然性

現在、ドリーム・アーツの事業環境にはかつてない規模の追い風、すなわち「潮が来ている」状態にあると同社は説明する。この潮の本質は、日本企業のDX推進における構造的な限界の露呈と、それを打破するためのパラダイムシフトの発生である。

過去数十年にわたり、日本の大企業はSIerに対してウォーターフォール型の受託開発を丸投げし、自社の細かい業務要件に合わせて基幹システム(ERP等)に莫大なアドオン開発(機能追加)を施してきた。その結果、システムはブラックボックス化(技術的負債の蓄積)し、法制度の変更や新しいビジネスモデルの立ち上げに対して迅速にシステムを改修できないという、深刻なアジリティ(俊敏性)の欠如を引き起こしている。いわゆる「2025年の崖」問題に象徴されるレガシーシステムの限界である。

ドリーム・アーツは、このエンタープライズIT市場の構造的課題に対し、ターゲットエリアを「BIG DONUTS(ビッグ・ドーナツ:BD)」と再定義し、明確なソリューションを提示している。 BDとは、財務会計・人事労務・生産管理など、企業活動の中核を担い、停止が許されないミッションクリティカルシステム(MCS:巨大なドーナツの穴の部分)を取り囲むように配置されている、現場部門向けのシステム領域(ドーナツの生地の部分)を指す同社の造語である。大企業が真のDXを推進するためには、重厚長大なMCSを標準機能(Fit to Standard)へ刷新すると同時に、この広大かつ複雑なBD領域のデジタル化を迅速に行うことが必須条件となる。BD領域こそがDXの核心エリアであり、企業のIT予算配分の見直しが進み、戦略的投資が急拡大しているブルーオーシャンである。

このBD領域を攻略し、大企業のシステム構造を抜本的に変革するための同社の独自戦略が「MCSA(Mission Critical System Aid:ミッションクリティカルシステムエイド)」である。MCSAとは、ERPのフロントに位置する「準基幹システム領域(財務会計等の周辺システム、契約管理、予算管理、シェアードサービス基盤など)」を、完全ノーコードのSmartDBで構築するというコンセプトである。同社が「Support(サポート)」ではなく「Aid(エイド)」という表現を用いる理由は、「困難な状況にある組織を実践的に助ける」という強いコミットメントを示しているためである。

MCSA戦略がもたらす顧客企業へのメリットは計り知れない。 

迅速な対応力の向上
インボイス制度や電子帳簿保存法などの頻発する制度改正、あるいは組織再編やM&Aといった事業変革に対し、SIerに発注することなくノーコード開発で即応することが可能となる。

現場主導のシステム運用
要件定義から仕様策定、改変に至るまで、現場業務を最も熟知しているユーザー部門が主導権を持つことで、実態に即した無駄のないシステム運用が実現する。

③IT部門の負荷軽減
現場からの膨大な改修依頼(バックログ)の滞留が解消されるため、情報システム部門はMCSの運用や全社的なセキュリティ統制といった、より戦略的で高度な業務にリソースを集中させることができる。 結果として、準基幹システム領域の俊敏性が高まることで、経営判断と事業運営のスピードが加速し、「大企業全体のアジリティ強化」という究極の経営課題が解決されるのである。

前述の朝日新聞社の事例で実証された通り、海外製ERPとSmartDBの組み合わせは、日本企業がグローバルスタンダードな基幹システムを導入する際の最適解(ベストプラクティス)として認知されつつある。SIerによる多重下請け構造や受託開発ビジネスの変革が社会的に強く求められる中、SmartDBを基盤としたMCSA戦略は時代の要請と合致しており、同社の成長を強力に後押しする大きな「潮」となっている。

4. 生成AIの拡大が事業へのプラスになる理由:DAPA構想の実践的価値と競争優位

現在、テクノロジー業界全体を巻き込む最大のトピックが大規模言語モデル(LLM)をはじめとする生成AIの爆発的な進化である。SaaS企業にとって生成AIは既存のビジネスモデルを破壊する脅威になり得るとの懸念もあるが、ドリーム・アーツの事業モデルおよびアーキテクチャにおいては、生成AIの拡大は極めて強力な「プラスの触媒(カタリスト)」として作用する。

現在、多くの大企業が生成AIの自社業務への適用に向けて、RAG(検索拡張生成)を用いた社内データ検索システムや、AIが自律的にタスクを処理するAIエージェントのPoC(概念実証)を進めている。しかし、現実の大企業の現場においては、生成AIが実用化に至らず頓挫するケースが多発している。その主な理由は、RAGによる回答精度の低さへの不満、ハルシネーション(幻覚:事実と異なる情報の生成)に対するリスク管理の困難さ、そして導入・運用コストの高騰とビジネス価値の不透明さである。企業はAIに対して過剰な期待を抱く一方で、それを既存の複雑な業務プロセスにどう組み込めばよいかという「実装の壁」に直面しているのである。

こうしたAI活用のジレンマに対し、ドリーム・アーツが2025年6月に発表した大企業におけるAI活用の新たな独自コンセプトが「DAPA(DreamArts Practical AI)」である。2026年4月にSmartDBへのAI機能本格搭載として提供が予定されているこの構想は、業界にパラダイムシフトをもたらすものである。

DAPAの根底にある設計思想は、現在の生成AIに対して「完全な自律性」を求めるのではなく、人間と協働しながら組織の意思決定を支援する「実践的・実務的・実用的なパートナー」として位置づけるという、極めて現実的かつ効果的なアプローチである。具体的には、独立したチャットボットとしてAIを利用するのではなく、SmartDB上で稼働する稟議、申請、合意形成といった日常的な「業務プロセス(ワークフロー)の中にAIを直接組み込む(統合する)」設計となっている。

業務フローにAIが統合されることで、例えば以下のような実務支援が可能となる。起案時における入力補助(自動入力)やドラフトの自動作成、上長承認前における複雑な社内ルールとの整合性チェックや必須観点の確認、過去の経緯や修正履歴のサマリ提示、さらには専門家視点でのコメントのサジェストなどである。最終的な判断や責任は人間(上長や承認者)が担うことで、ハルシネーションのリスクをコントロールしつつ、人間の認知負荷を劇的に引き下げることが可能となる。

このDAPA構想が同社の競争優位性をさらに高め、事業拡大に強力なプラスをもたらす理由は以下の3点に集約される。

業務プロセスとデータの統合設計によるAIの実効性担保:

 AIが的確な出力を生成するためには、文脈(コンテキスト)が構造化されたデータと、AIの回答を処理につなげる業務のレールが必要である。SmartDBはワークフローとWebデータベースが高度に一体化されたプラットフォームであるため、AIは「その業務フローが現在どのステータスにあり、どのような判断が求められているか」という文脈を正確に把握した上で機能する。これにより、一般的なRAGの精度課題を克服し、実務で使えるAIを実現できる。

エンタープライズ対応の堅牢な安心設計(ガバナンスの確保):

 大企業がAIの業務適用を躊躇する最大の障壁は、機密情報の漏洩や権限外データへのアクセスリスクである。SmartDBは、大企業での過酷な運用実績に裏打ちされた細やかなアクセス制御機能と、厳格な承認ルート管理機能を標準装備している。この堅牢な統制の枠組みの中で生成AIを稼働させるため、AIに対する過剰なデータ共有を防ぎ、セキュアなAI利活用環境を即座に提供できる。

市民開発者(非IT人材)との極めて高い親和性:

 DAPA構想の最も革新的な点は、AIを操作するための「AIプロンプトデータベース」自体を、非IT人材である現場の市民開発者が自らノーコードで設計・改善できる仕組みを提供している点にある。これにより、AIのチューニングをIT部門や外部ベンダーに依存することなく、現場のニーズに合わせてスピーディーに拡張・進化させていくことが可能となる。

生成AIの波は、企業に対して「AIを安全かつ実務的に運用するための土台(プラットフォーム)」の整備を強烈に促している。SmartDBは、その土台として最も完成された器の一つであり、DAPA構想の実装は同社製品の付加価値(ARPA)をさらに押し上げ、導入の意思決定を加速させる追い風となるのである。

5. 中長期的な成長戦略と持続的スケーリングを可能にする5つのCSF(重要成功要因)

ドリーム・アーツは、圧倒的なポテンシャルを持つエンタープライズ市場を確実に取り込むため、2026年12月期から2028年12月期を対象とする野心的な中期経営計画を推進している。同社は、大企業における業務システム開発の主流がSIerによる受託開発からノーコード開発(市民開発)へとシフトすることを見据え、2028年12月期末までに従業員1,000名以上の大企業におけるSmartDBの導入シェアを10%超(導入企業数目標380社)へと飛躍的に引き上げることを至上命題として掲げている。(なお、2025年実績の導入社数は195社である)。

この目標を達成するための財務的マイルストーンとして、2028年12月期においてオーガニックな成長のみで売上高8,700百万円(目標値としては10,000百万円超)、営業利益2,000百万円超(営業利益率約23%)という力強いトップライン成長と高収益化の実現を目指している。

この持続的かつ非連続な成長を実現するため、同社は基本戦略を「デジタルの民主化(Digital Democratization:市民開発によるシステム内製化の社会的な浸透)」と定め、その推進を強力に後押しする5つのCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)を設定し、各領域に経営資源を集中投下している。

・EC2(資格制度)の効果

この中で特に注目すべきは、5つ目のCSFである「EC2」における「SmartDB認定資格制度(SCS:SmartDB Certified Specialist)」の爆発的な普及である。SCSは、基本機能を習得する「業務デザイナー」、DX推進リーダーとしての「オーガナイザー」、高度なシステム連携を担う「エキスパート」という段階的なグレード設計がなされており、非IT人材でもスキルレベルを客観的に証明できる仕組みとなっている。

2025年末時点でこの認定資格取得者は延べ3,831名(前年同期比で大幅増)を突破しており、KDDIなどの先進的な大企業では、社内におけるデジタル人材育成戦略や人事評価制度の指標の一環としてSCSが公式に活用されている。資格保有者の79%がユーザー企業の社員、21%がパートナー企業であり、男女比も男性62%・女性38%と幅広い属性に浸透している。 システムの使い方を知る「アンバサダー(伝道師)」が顧客企業の内部で自律的に増殖していくこの構造は、①導入後の活用拡大(アップセル)②解約防止(チャーン低下)を極めて低コストで実現する究極の成長エンジンである。同時に、コンサルティング企業やSIer(アクセンチュア等)との戦略的パートナーシップの拡充も進行しており、自社営業人員の増加に依存しないスケーラブルな販売・導入体制が確立されつつある。

6. 2026年12月期の業績見通し:見かけ上の減速 vs 実態の加速

・資本市場から評価されるべきポイント・転換点

同社の卓越した事業戦略は、実際の財務数値に力強く反映されている。直近の2025年12月期通期連結業績において、同社は売上高5,654百万円(前期比+12.3%)、営業利益974百万円(同+26.0%)と、期初予想を上回る増収増益を達成した。

特に成長の柱であるホリゾンタルSaaS(クラウド事業)は前年比+17.2%と順調に成長し、全社売上に占めるストック比率は87.5%に達している。SaaSビジネスの健全性を示す最重要KPIであるNRR(売上継続率)は109.8%と100%を大きく超える水準を維持し、既存顧客からの収益が自然拡大する構造が証明されている。また、将来の収益の源泉となる前受収益残高も1,401百万円(前年同期比+10.1%)まで積み上がっており、収益基盤の安定性は極めて高い。利益面においても、売上総利益率が62.5%(前年同期比+5.4pt)へ大幅に改善しており、クラウドインフラの運用効率化と高付加価値化が着実に進展していることが確認できる。

この強固な実績を踏まえた上で、中期経営計画の初年度となる2026年12月期の通期連結業績見通しは、経営陣の戦略的かつ合理的な意図に基づく予算配分となっている。

トップライン(売上高)に関しては、前年比10.5%増の6,250百万円を見込んでいる。特筆すべきは事業ポートフォリオの内訳である。成長ドライバーである「クラウド事業」が前年比15.0%増(+671百万円)と力強い成長を持続する一方で、レガシー領域である「オンプレミス事業」の売上を意図的に前年比23.0%減(-120百万円)と大幅に縮小させる計画を組んでいる。ライセンス受注を計画に織り込まず、ソフトウェアメンテナンスの解約を意図的に加速させるこの方針は、見かけ上の全社売上成長率を一時的に抑制するものの、ビジネスモデルのクラウド化(SaaSピボット)と将来の運用コスト最適化に向けた健全な構造転換の総仕上げとして、資本市場から極めて高く評価されるべき決断である。バーティカルSaaSである「Shopらん」事業に関しても、モスフードサービス(全国約1,300店舗)やコープデリ連合会(約270拠点)といった大型チェーンへの導入が進行しており、再び力強い成長軌道に乗ることが計画されている。

一方、営業利益に関しては、2025年12月期実績の974百万円から865百万円へと、11.2%の減益を計画している。しかし、この減益計画は事業環境の悪化や競争力の低下に起因するものではなく、2028年の中期目標(売上高100億円突破・営業利益20億円)を確実に達成するために不可欠な「戦略的先行投資」の結果である。
具体的には、当期において以下の3領域に対してアグレッシブな成長投資(コスト増)を計画している。

①人的資本・採用活動の強化:

開発、営業・マーケティング人材を中心に、通期で35名の純増目標を掲げ、強力な採用活動を展開する(FY2025の未達分を巻き返す規模の投資)。

②広告販促活動の強化:

「デジタルの民主化」というコンセプトの浸透とSmartDBの圧倒的な認知度向上を狙い、各種メディアへの露出やイベント出展に450百万円規模(前期比大幅増)の広告販促費を投下する。

③製品競争力の強化(研究開発):

DAPA構想に基づくAI機能の本格実装、およびSmartDBを軸とした製品間連携強化に向け、300百万円規模のソフトウェア開発投資を実行し、AI関連の材料費増加も織り込む。

SaaSビジネスの財務モデリングにおいて、NRRが100%を超えユニットエコノミクスが健全に回っている状況下(顧客獲得コストの回収効率が高い状態)では、目先の利益水準を維持するよりも、LTV(顧客生涯価値)の極大化と早期の市場シェア確保のために積極的な先行投資(販管費の投下)を行うことが、中長期的な企業価値向上の最適解となる。同社は健全で有機的な組織づくりを礎に、焦らず驕らず足元を固めることを標榜しているが、この2026年12月期の減益を伴う投資計画は、巨大なエンタープライズ市場の「潮」を確実に捉え、次なる非連続な成長フェーズへ移行するため周到かつ野心的な布石である。

ドリーム・アーツは、日本企業のDXを阻む本質的な構造的課題(レガシーシステムとSIer依存)を打破する「MCSA」という独自の解と、生成AIの波を実務に落とし込む「DAPA」という最新の武器を手に、エンタープライズIT市場におけるリーディングカンパニーへの階段を登り始めている。強靭なストック収益基盤に支えられた同社の成長ポテンシャルは大きく、今後の事業展開の確度は高いと考えている。

以上

【免責事項】
本記事は、投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行ってください。
また、記事内で紹介する個別銘柄は、特定の銘柄を推奨するものではなく、あくまで情報提供を目的としています。
本記事は生成AIを活用して制作しております。内容は情報の整理・要約を目的としたものであり、正確性や最新性を保証するものではありません。最新かつ正確な情報につきましては、必ず各社の公式発表をご確認ください。

成長株投資, 銘柄研究所

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