4486 ユナイトアンドグロウ 中小企業に競争力を与える 「お客様企業のパーパスすべてが、私たちのパーパスです。」 by ono

7/27(日)の東京勉強会に登壇していただきます。

https://tokyo-study20250727.peatix.com/

 

目次

  1. 会社概要 – 社名の由来とミッション

  2. 注目ポイント – 主要な特徴

  3. 事業内容 – 現在の事業領域とビジネスモデル

  4. キーワード:コーポレートエンジニアとは – 業界用語の解説

  5. ユニークなビジネスモデルと強み – 信頼構築から知識共有まで

    1. 信頼関係の構築と案件拡大

    2. ポイント制契約による柔軟なサービス提供

    3. エンジニアのモチベーションを高める成果報酬制度

    4. 社内コミュニケーションとドミナント戦略

    5. コミュニティによる知識共有と「感謝」の循環

  6. 事業環境の変化 – IT業界・市場を取り巻く最近の動向

  7. 環境変化への取り組み – 戦略と挑戦

  8. 業績動向 – 過去数年間の業績推移と現状

  9. 成長シナリオ – 将来の成長見通しと市場ポテンシャル

  10. リスク要因 – 留意すべきリスクと課題

  11. バリュエーション – 株価指標と投資判断の参考情報

~IT人材不足を解決する“シェアード社員”モデルの旗手~

ユナイトアンドグロウ(4486)は「シェアード社員®」という独自の人材提供モデルを武器に、中堅・中小企業の社内IT部門を支援する企業である。社員を正社員として雇用し、複数企業にタイムシェア型で派遣するこの仕組みは、IT人材不足に悩む企業にとって柔軟かつ高品質なソリューションとなっている。

最大の特徴は「営業不要」の成長モデルだ。エンジニアが顧客先で信頼を獲得し、その信頼をベースに案件が拡大していく。さらに、成果報酬制度によって社員の士気も高く、社内の知識共有文化も醸成されており、質の高いサービスを維持している。東京都心に集中したドミナント戦略により、高い稼働率と利益率を実現している点も強みである。

サービス利用は「ポイント制」で、顧客は必要な分だけ稼働時間を購入する。スモールスタートしやすく、追加契約も柔軟なこの仕組みは、中小企業にフィットした収益モデルとなっている。近年ではインフラ支援など新サービスの立ち上げも進めており、ITニーズの多様化に対応する体制を強化している。

成長戦略の第一は「顧客企業数とシェアード社員の増加」による直線的な売上拡大である。2024年には社員280名・契約企業600社規模に達しており、9.8万社という潜在市場を考えれば今後も拡大余地は大きい。第二は「新分野の事業化」による非連続な成長で、ITインフラや会計IT支援、オンラインナレッジ等が見込まれている。

業績も堅調で、2025年12月期は売上高3,449百万円、営業利益539百万円を計画。営業利益率は約16%に達し、利益率は年々改善している。エンジニア1人あたりの生産性向上やスキルレベルの上昇が利益成長を支えており、長期的にもスケーラビリティの高い構造が構築されつつある。

中小企業支援とITの専門性を融合させたユニークな事業モデルにより、同社は“コーポレートITシェアリング”という新たな市場を創出しつつある。競合が少なく、参入障壁も高いため、採用・育成が順調に進めば、独自のポジションを保ちながら成長を続ける企業といえるだろう。

1. 会社概要 – 社名の由来とミッション

ユナイトアンドグロウ(Unite and Grow)は、社名のとおり「つながり(Unite)と成長(Grow)」を意味している。「つながり」と「成長」という二つの価値観を社名に掲げ、中堅・中小企業の成長支援と自社の成長を両立させることを目指して社名としている。社名には「中小企業の成長を支援したい」「自らも仕事を通じて成長したい」という創業者の想いが込められており、その価値観を社内外に浸透させる狙いがある。

同社のパーパスは「お客様企業のパーパスすべてが、私たちのパーパスです。」であり、社員を自社で雇用した上で中堅・中小企業へ派遣し(タイムシェア型で)、その企業の情報システム部門(社内IT部門)の機能強化を支援するサービスを展開している。大企業ではない中堅・中小企業に焦点を当てるのは、そうした企業こそIT人材不足の課題が深刻であり、自社内で十分な情報システム部門を持てないケースが多いためである。ユナイトアンドグロウは「会員企業が共同で利用する社内IT部門」を実現する独自モデルで、この課題解決に挑むユニークな企業である。

2. 注目ポイント – 主要な特徴

いくつかの特徴についてポイントをまとめる。

● 社内ITエンジニアのシェアリングサービス

「シェアード社員®」と呼ばれる自社のITエンジニアを複数の顧客企業に時間単位で派遣し、各社の情報システム部門の人材不足を補うタイムシェア型サービスを提供。発注企業側の社内エンジニア(コーポレートエンジニア)を必要な時に必要なだけ共有できる独自モデル。

● 広大な潜在市場

– ターゲットは社員数50~1000名規模の中堅・中小の成長企業が中心で、この層の企業数は非常に多く、市場規模は約1.2兆円にのぼるとの推計がある(同社試算による対象企業数×利用率×売上単価による計算)。競合が少ないブルーオーシャン市場であり、今後の開拓余地が大きい点が魅力である。

● 営業に依存しないビジネス

– 同社では従来型の飛び込み営業や大量の営業人員は必要ない。エンジニア自身が顧客企業内で信頼を獲得し、その結果として追加予算や新規案件を引き出すという形で事業が拡大する。信頼関係に基づく紹介やリピート受注が多く、営業コストが低く抑えられるのが特徴である。

● 一人のエンジニアが複数企業を担当(ドミナント戦略)

– 地域や領域を絞ったドミナント戦略により、1人のシェアード社員が複数の顧客企業を掛け持ちできる。特に東京都内に顧客企業が集中しているため、移動効率も良く短時間サービスを複数社へ提供可能である。これによりサービス単価の向上や人材効率の最大化を図っている。

● 透明性の高い成果報酬で社員のモチベーション向上

– エンジニア社員には固定給に加えて粗利益の10%をインセンティブとして還元する成果報酬制度を採用している。どのようにすれば自身の単価が上がるかなど評価基準も明確で、努力が収入に直結しやすい仕組みである。この透明性の高い報酬体系により社員の士気が高まり、サービス品質向上にもつながっている。

 

● 感謝の循環が生まれるサービス

– シェアード社員が顧客企業に入り込むことで、エンドユーザー(顧客企業の社員)から感謝される機会が生まれる。社内のIT課題を解決して「助かった」と感謝されることでエンジニアのやりがいも高まり、エンジニアとユーザー企業の双方にWin-Winの関係が構築される。この「感謝される喜び」がさらにエンジニアのモチベーションを高め、良循環を生んでいる。

以上のようなポイントを背景に、中小企業支援の新しい形として注目されている。次に、事業内容とビジネスモデルの詳細について確認する。

3. 事業内容 – 現在の事業領域とビジネスモデル

同社の事業は現在、「コーポレートIT部門の業務支援事業」に集約されている。2019年の上場時はインソーシング(シェアード社員)事業とセキュリティコンサル事業の二本柱だったが、後者については2023年に他社(株式会社GRCS)へ事業譲渡し、現在は経営資源をコア事業である情シス総合支援に集中している。これに伴い、報告セグメントも2025年12月期から単一セグメントに変更された。

同社の主力サービスは先述のシェアード社員(情シスのシェアード社員)による総合的な情報システム部門支援で、2024年12月期の売上の9割以上を占めている。これに加え、顧客企業が自社内で業務システム等を開発・運用する際の技術支援を行う「内製開発のシェアード社員」サービスも提供しており、こちらは小規模ながら高い利益率を誇る分野である。さらに近年、ITインフラ領域に特化した支援ニーズの高まりに応えるため、「ITインフラのシェアード社員」という新サービスも立ち上げている。この特化型サービスの開始により、既存の情シス総合支援・内製開発支援と合わせて、情シス(情報システム)全般からソフトウェア内製、インフラ構築まで幅広くカバーする体制が整ってきた。

ビジネスモデルの収益面では、顧客企業からは「ポイント制」の料金モデルで対価を得ている。顧客はサービス利用分のポイントを事前購入し、シェアード社員の稼働時間に応じてポイントが消費される仕組みである。固定費ではなく変動費として利用できるため、中小企業にとって導入しやすい点がメリットである。同社側にとっても、ポイントの前払いや未使用ポイントの繰越等によりキャッシュフローを安定させる効果がある。また契約形態は派遣契約ではなく準委任契約(成果物ではなく稼働時間に対する契約)である点も特徴で、担当業務範囲を限定せずIT戦略の策定からヘルプデスクまで幅広く遂行できる柔軟性を担保している。

以上が現在の事業概要である。次章では、キーワードとなる「コーポレートエンジニア」について補足し、このビジネスの背景をさらに深掘りする。

4. キーワード:コーポレートエンジニアとは

ユナイトアンドグロウを理解する上で重要なキーワードの一つに「コーポレートエンジニア」がある。これは一般に「ユーザー企業(顧客企業)の社内エンジニア」を指す言葉である。大企業であれば、社内に情報システム部門(情シス)を設置したり、子会社としてシステム専業会社を持つことが多く、その内部で働くエンジニアがコーポレートエンジニアに相当する。一方、中堅・中小企業では専任のIT担当者(いわゆる「ひとり情シス」状態)を置けない場合も多く、社内に十分なIT人材がいないためにIT戦略やシステム選定・導入が遅れがちである。

コーポレートエンジニアの役割は、外部のITベンダーやSIer(システムインテグレーター)に発注・指示を出す発注者側の立場にある。自社の業務に最適なITシステムは何かを見極め、最新の技術動向を踏まえて適切なソリューションを選定し、どのベンダーに依頼するか決める――こうした上流工程が業務の一例となります。具体的には、システム導入プロジェクトの企画・設計・推進、社内各部門との調整、外注先との折衝などが中心となり、自らプログラミングを行ったりアプリケーション開発をすることはほとんどない。

中堅・中小企業では、この「社内IT部門機能」を担う人材が不足していることが大きな経営課題となっている。ITベンダー側(例えばOracleやMicrosoft、国内ならNRIやIBM等)からすれば、彼らはシステムを構築・提供する「外部のIT企業」である。一方で、コーポレートエンジニアは企業内部からIT利活用を支える存在であり、両者は車の両輪と言える。同社はまさに、この中小企業側のコーポレートエンジニア不足に着目し、自社の社員を「共有の社内エンジニア」として派遣することでその役割を代替・補完するサービスを展開している。

要するに、ユナイトアンドグロウが提供するのは「社内IT部門をアウトソースではなくシェアする」という新しい形態である。これによって、中堅・中小企業はフルタイムの情シス担当者を雇用しなくても、大企業並みの専門知識を持つ人材の力を必要な時に得られるようになる。次章では、この独自のビジネスモデルと強みに関して具体的な仕組みを確認する。

5. ユニークなビジネスモデルと強み – 信頼構築から知識共有まで

5.1 信頼関係の構築と案件拡大

同社のサービス展開における第一歩は、顧客企業との信頼関係構築である。中堅・中小企業の多くはIT化が遅れており、何から手を付けて良いかわからない課題を抱えている。同社のシェアード社員はまず小規模な案件から顧客先に入り込み、現場の課題解決に取り組む。顧客企業内で「頼れる社内IT担当」として実績を積むことで信頼を獲得し、徐々に相談される業務範囲や案件規模を拡大していく戦略である。

例えば、最初はPCやネットワークのトラブル対応といった身近なサポートから始め、次第に基幹システム刷新プロジェクトの企画相談やクラウドサービス導入提案など上流のIT戦略案件へと繋げていくケースがある。社内にITのプロがいなかった企業にとっては、同社のエンジニアは非常に心強いパートナーとなり、「この人にもっと任せたい」という形で追加の契約や長期契約に発展する。こうしたスモールスタートからの段階的な拡大により、一社あたりの契約金額も時間とともに大きく育つ傾向がある。

新規顧客開拓も、既存顧客からの紹介や口コミで広がることが多く、同社のエンジニア個々の信頼が営業パイプラインを生み出す仕組みとなっている。一般的なITコンサルティング企業が高額な提案を最初から提示するのに対し、ユナイトアンドグロウはまずは低コスト・短期間から始めて効果を示し、その後に広げていくため、顧客にとって導入しやすく満足度も高くなりやすいのである。このモデル自体が他社にとって参入障壁ともなっており、「時間をかけて信頼と実績を積み重ねなければ軌道に乗らないサービス」であるため容易に真似できる企業は見当たらない。

5.2 ポイント制契約による柔軟なサービス提供

同社は顧客との契約形態にポイント制を採用している。前述したように、顧客企業はあらかじめポイントを購入し、シェアード社員の稼働時間に応じてポイントが減算される方式である。例えば「1ポイント=1時間」といった設定で、契約時に一定ポイント(=想定時間分)を前払いし、消化していくイメージである。これにより、顧客は必要な分だけサービスを利用できるため無駄がなく、固定の人件費負担を抱えずに済む。IT投資による効果が見えにくい段階でも「とりあえず試す」ことができる点で、中小企業にフィットした仕組みと言える。

ポイントは追加購入も可能であり、案件が拡大すれば追加でポイントを買い足すことで柔軟に対応できる。逆に予定より消化が少なければ次期へ繰り越すこともでき(契約条件によるが)、スモールスタート・スケール対応の両面を備えたモデルである。このようなサブスクリプションに近い形態によって、同社は継続的な収益基盤を築くと同時に、顧客も自社のペースでIT投資を進められるWin-Winの関係を構築している。

またポイント制に絡めて、サービス料金の単価にも工夫がある。シェアード社員には先述のようにスキルレベルが設定されており、難易度の高い業務を担うシェアード社員ほどポイント消費単価(時間単価)も高く設定されている。例えば基本的なヘルプデスク対応は低ポイント消費、高度なIT戦略立案支援は高ポイント消費という具合である。これにより、顧客は「高度な専門支援には相応の対価を払うが、単純作業には安価に抑えたい」というニーズに応じて柔軟にサービスを利用できる。一方、同社としても熟練エンジニアを短時間で複数社に提供するほど収益性が上がる構造となっており、限られた人材リソースを効率よく配分できるようになっている。

5.3 エンジニアのモチベーションを高める成果報酬制度

同社の社内文化・制度面で特筆すべきは、透明性の高い成果報酬型の給与体系である。基本給に加えて粗利益の10%を各エンジニアにインセンティブ還元する仕組みは、シンプルながら強力なモチベーション源になっている。自分が担当する案件で生み出した利益の一部がダイレクトに自分に返ってくるため、「顧客により価値を提供しよう」「効率よく稼働しよう」という意識付けが自然と行われる。

また、この成果給は給与明細等で明確に示され、評価基準も開示されている。例えば「スキルレベルを上げると時給単価が上がる」「高難度案件を短時間で処理できれば会社利益率が上がり、その10%が自分に還元される」といった具合である。これにより社員は自身の成長=収入増に直結する実感を持ちやすく、社内に競争というよりは切磋琢磨する風土が醸成されている。

同社のエンジニア平均給与は年々上昇傾向にあり、2024年時点で平均約627万円に達している。若手でも経験を積みスキルレベルが上がれば早期に高収入が望める環境であり、人材業界全体でITエンジニア不足が叫ばれる中、待遇面でも魅力ある職場を実現することで優秀層の採用・定着につなげている。権限移譲が進んだフラットな組織風土と相まって、社員の自主性と成長意欲を引き出す工夫が随所に凝らされている点は、同社の強みといえる。

5.4 社内コミュニケーションとドミナント戦略

複数の顧客企業で業務を行うシェアード社員にとって重要なのが、社内での情報共有と連携である。ユナイトアンドグロウでは、エンジニア同士が密に連携し助け合う文化と仕組みが整っている。日々異なる顧客先で多様な課題に直面する中でも、社内の他メンバーと常に情報交換できるよう、チャットツールやナレッジ共有システムが構築されている。たとえ現場では一人で対応していても、背後には数百名規模のUGエンジニアコミュニティが控えており、必要に応じて他の経験豊富な同僚のアドバイスを仰げるため、組織として問題解決に臨めるのである。

案件のアサイン方法にも特徴がある。新たな顧客案件が発生した際、会社側が一方的に担当者を割り振るのではなく、社内に案件情報を開示し、手を挙げた希望者に任せるというスタイルをとっている。この「挙手制」により、エンジニアは自分のスキルや志向に合った案件を選ぶことができ、ミスマッチを防いでいる。同時に、自分の得意分野や挑戦したい領域を日頃から社内に発信しておくことが重要になるため、社内コミュニケーションが自然と活発化する。「◯◯さんはセキュリティ強い」「△△さんは製造業の業務知識が豊富」といったお互いの強みを把握し合い、必要に応じてバトンタッチ(素早い人員交代)も可能な体制である。

このようなオープンな情報共有文化とフラットな組織運営は、同社が長年培ってきた独自の「シェアード・エンジニアリング」体制の要といえる。結果として、一人ひとりのエンジニアは孤軍奮闘ではなくチームの一員として働けるため安心感があり、顧客企業に対しては単なる個人依存ではない組織的なサービス提供を実現している。この社内連携の強さが質の高いサービス維持と人材育成を支え、他社には真似しづらい競争力の源泉となっている。

なお、ドミナント戦略についても触れておく。同社は地理的には東京を中心に事業を展開してきた。過去に大阪やシンガポールにも拠点展開を試みたものの現在は東京本社に集約されている(大阪拠点は2018年に閉鎖)。その代わり、東京都内および近郊の成長企業にフォーカスし密度の高いサービス網を作ることで、1人のエンジニアが1日に複数社を訪問・対応できる効率を生んでいる。一極集中のリスクはあるものの(※リスク要因の項で後述)、このエリアドミナントによる高稼働率が収益性を下支えしている面がある。

5.5 コミュニティによる知識共有と「感謝」の循環

ユナイトアンドグロウは、自社サービス以外にもIT人材同士が知見を共有し助け合うためのコミュニティサービスを運営している。それが会員制のオンラインQ&Aプラットフォーム「Kikzo(キクゾー)」である。Kikzo上では契約企業(会員企業)の情シス担当者やUG社の現場エンジニアが、日々の疑問や課題をQ&A形式で相談し合っている。累計700社分以上のリアルなQ&Aとその解決事例がデータベースとして蓄積されており、ネット検索では得られない中小企業IT現場のナマの知恵が集約されている。

もともと同社は2007年から「Syszo(シスゾー)」という無償のオープンナレッジコミュニティを提供していたが、2024年にこれを終了し、Kikzoという有償の会員制ナレッジシェアサービスへ統合した。無料・匿名で誰でも利用できたSyszoから、法人向けの有償サービスへ舵を切った背景には、コミュニティをより質の高いものに育てつつ事業としても注力する狙いがある。現在Kikzoはシェアード社員契約の有無にかかわらず単体サービスとしても提供され、多くの企業が参加するプラットフォームへと成長を続けている。

このKikzoおよび社内ナレッジ共有により、同社のエンジニアは自社内だけでなく顧客企業同士も含めた広いつながりの中で知識を活用・共有できる。他社の情シス担当者の経験談や解決策を知ることで、自分一人では解決困難な問題にも対応策のヒントを得られる場合がある。逆に自分の経験が他社の助けになるケースも多々あり、「お互い様」で助け合う文化がコミュニティ全体で醸成されている。このような活動を通じて生まれる「感謝の連鎖」こそ、同社が大事にする価値観「つながりと成長」の体現と言えるであろう。

結果的に、同社のサービスを利用する企業は、単に派遣社員が来てくれるというだけでなく、業界横断の知恵袋にアクセスできるメリットを享受できる。他社の成功事例や失敗談を共有することで、自社のIT課題解決スピードが上がり、ひいては日本全体の中小企業IT水準向上にも寄与している点が見逃せない。こうした知的資本の蓄積と共有の仕組みは同社の独自ノウハウであり、新規参入者が容易に真似できない強力な経済的な堀(ほり:moat)となっている。

以上、同社のビジネスモデルと強みについて、信頼関係の構築から社内文化、コミュニティ戦略まで概観した。次に、同社を取り巻く事業環境が近年どのように変化しているかを確認し、それに対して同社がどのような戦略で挑んでいるのかを見ていこう。

6. 事業環境の変化 – IT業界・市場を取り巻く最近の動向

同社の主戦場である中堅・中小企業のIT人材市場に目を向けると、近年もいくつか重要な環境変化が起きている。まず根本的な点として、ITエンジニア不足の深刻さは依然として続いている。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によれば、企業のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは徐々に進んできたものの、「社内IT人材の量が不足している」と感じる企業は全体の8割超に及んでおり、この傾向はここ数年ほとんど改善していない。つまり、多くの企業で「IT人材が圧倒的に足りない」という認識が引き続き強いのである。

特に中堅・中小企業では、大企業に比べて人材獲得競争で不利なこともあり、優秀なIT人材が集まりにくい構造がある。日本全体で見てもエンジニア採用難が慢性化し、新卒・中途問わず人材獲得コストが上昇しているため、中小企業が専任IT担当者を雇用し続けるのは一段と難しくなっている。高度経済成長期に整備された基幹系システムが老朽化しクラウド移行やDXが不可避な状況にもかかわらず、それを牽引する人材がいない――このギャップが、多くの企業で課題となっている。

また技術トレンドの変化も見逃せない。昨今はクラウドサービスの普及により、中小企業でも安価に高度なITソリューションを導入できる時代になった。その反面、選択肢が増えすぎて「どのサービスを選ぶべきか」「自社に最適なIT戦略は何か」を判断するのが難しくなっている。さらにAI(人工知能)やIoT、RPA、ビッグデータ、ゼロトラストセキュリティなど、新しいキーワードが次々登場しITニーズが高度化・多様化している。中小企業の経営者や総務担当者だけではこれら最新技術を追い切れず、専門的な知見を持つ人材の必要性が一層高まっている。

一方、働き方や社会環境の変化も事業環境に影響を与えている。新型コロナウイルス禍を経てリモートワークが広く浸透し、社内IT環境の在り方も変わった。在宅勤務を支えるVPNやクラウドツールの導入、セキュリティ対策の強化など、従来にはなかった需要が生まれている。また、昨今の急速な物価上昇やエネルギー高騰など経済状況の変動により、中小企業の経営環境が悪化する懸念も指摘されている。万一景気後退局面に入れば、IT投資予算が真っ先に削減対象となる可能性もあり、そうしたマクロ経済要因にも注意が必要である。

さらに、ユナイトアンドグロウにとって中長期的に注視すべきは競合の状況である。現在のところ、同社と全く同じビジネスモデルで大々的に展開している競合企業は明確には存在しないといえる。ただし、ITアウトソーシングやコンサルティング企業が中小企業向けサービスを拡充してきたり、人材派遣会社が「 fractional CIO(フラクショナルCIO)」的なサービスを打ち出す可能性はある。また同社が東京都中心に展開している隙間を突き、他地域で類似コンセプトのスタートアップが出現する可能性もゼロではない。競争の激化は潜在的な脅威として頭に入れておく必要があるであろう。

要約すると、事業環境の変化としては(1) IT人材不足の慢性化, (2) 技術ニーズの高度化・多様化, (3) 社会経済状況の変動, (4) 将来的な競争激化の可能性といった点が挙げられる。では、ユナイトアンドグロウはこれら環境変化に対しどのような取り組みを行っているのであろうか。次章で具体的な戦略を見ていこう。

7. 環境変化への取り組み – 戦略と挑戦

上記のような事業環境の変化に対し、ユナイトアンドグロウは自社サービスと組織体制の進化によって積極的に対応している。ここでは主な取り組みをいくつか紹介する。

① 採用の強化と育成スピード向上

最大の成長ボトルネックが「エンジニアの採用・育成」であることを同社も強く認識しており、近年採用活動を一段と強化している。募集対象を未経験者まで広げポテンシャル採用を行う一方で、入社後の研修・育成プログラムを整備することで即戦力化のスピードを高める努力をしている。社内研修制度の体系化を進め、「UGアカデミー」と称するコーポレートエンジニア育成機関を設立して、研修カリキュラムの充実を図った。その成果もあり、2024年には若手社員がスキルレベルL2からL3へ成長する例が増加し、人材の底上げが進んでいる。こうした早期戦力化によって、慢性的な人手不足に対応するとともに、一人当たり売上高の向上(高付加価値業務への従事)を実現しようとしている。

② サービスラインナップの拡充(ニーズへの対応力強化)

顧客ニーズの変化に応じ、同社はサービスメニューの拡充にも取り組んでいる。具体的には前述のITインフラ特化サービスの立ち上げがその一例である。従来は「情シス総合支援」と「内製開発支援」の2領域だったが、2024年からネットワークやクラウド基盤構築などインフラ領域に特化したシェアード社員サービスを加えた。これは増大・高度化する顧客ITニーズ(例:ゼロトラストネットワーク構築、クラウド移行計画策定等)に専門チームで応える狙いがある。また今後も現場から吸い上げたニーズを基に、特定分野に特化した新サービスを随時企画・展開していく方針である。このように「ニーズの強い分野への対応力を強化し事業化する」ことが同社の長期成長シナリオの一つと位置付けられている。

③ ナレッジプラットフォームの活用と進化

技術が高度化する中、社内外の知見をフル活用する戦略も重要である。同社は先述のKikzoを進化させ、より多くの企業・担当者が参加する場に育てている。2024年にはSyszoをKikzoへ統合し、有償サービスとして本格展開を始めた。現在ではシェアード社員契約のない企業にも門戸を開き、中堅・中小企業の情シス担当者が集う国内有数のコミュニティとなりつつある。Kikzoの利用拡大により、同社自身もそこから最新の顧客ニーズや業界トレンドを把握できるし、自社エンジニアが回答することで現場ノウハウの蓄積・共有がさらに進む。こうした取り組みは結果的にサービス品質向上と顧客満足度向上につながり、競合が現れた際にも「知見量とコミュニティの質」で優位性を保つ重要な基盤になるであろう。

④ コア事業への集中と経営効率化

環境変化に対応するため、選択と集中の経営判断も行っている。具体的にはセキュリティ事業の譲渡(2023年)が挙げられる。売上規模が小さく利益貢献の薄かった周辺事業を整理し、人的リソースや資本をシェアード社員事業に集中させている。その結果、経営効率が上がり、2024年以降は単一事業に経営資源をフル投入できる体制となっている。また管理部門の効率化や業務プロセス改善にも取り組み、売上増以上の利益成長を目指す方針である。実際、2025年12月期は増収率+16%に対し営業利益・経常利益の伸び率はそれを上回る見通しを立てている。

⑤ 人材定着と働き方の革新

採用と同様に優秀な人材の定着も大きな課題である。これに対し同社は、前述の成果報酬やオープンな社風に加えて、働き方の柔軟性を重視している。シェアード社員という働き方自体が「いくつかの会社を旅するように働く」新しいキャリアモデルであり、自律性と多様な経験を求めるエンジニアにとって魅力的な側面がある。社長自ら「働き方の革新」を掲げ、社員が主体的にプロジェクトを選び、自らの裁量で働けるような制度作りを進めている。コロナ禍以降はリモート対応も取り入れつつ、現場密着の価値も再評価し、ハイブリッドな働き方で社員のワークライフバランスと顧客対応力の両立を図っている。

これらの取り組みにより、ユナイトアンドグロウは急速に変化するIT業界環境の中でも持続的成長を目指している。もちろん課題が全て解消されたわけではないが、環境変化に対して着実に手を打っている点は投資家にとって評価すべき材料であろう。それでは、次に同社の最近の業績動向と今後の成長見通しを確認する。

8. 業績動向とKPI

同社は、連続増収増益を継続しており、利益率も改善傾向にある。

2025年12月期(計画): 売上高 3,449百万円(前期比 +16.2%)、営業利益539百万円(同+36.5%)、純利益392百万円(同+2.2%)の見通し。純利益の伸びが低いのは、前年にあった特別利益(抱合せ株式消滅差益)の反動によるものである。本業ベースでは増益基調が続く計画となっている。

四半期推移を見ると、2025年12月期第1四半期(1Q)は売上高770百万円(前年同期比+12.0%)、営業利益125(同+46.5%)。1Q時点で通期計画に対する進捗率は売上で22.3%、営業利益で23.3%と順調なスタートを切っており、概ね計画線上である。

収益構造の点では、売上総利益率は約46~48%で推移し、徐々に改善傾向にある。これはシェアード社員一人あたり稼働率の上昇や単価アップが寄与しているものである。また販管費率もほぼ横ばいか微減の傾向で、結果として営業利益率は年々上昇している。2025年計画では営業利益率16%程度まで改善する見込みで、上場当初から比べると収益性は大きく向上した。

財務面では自己資本比率が高く(50%以上)財務基盤は安定している。積極的な成長投資(人材採用・教育やシステム投資)を行いつつも、利益の範囲内で賄えている。また創出したキャッシュの使い道として、一定の配当による株主還元も実施している。2025年12月期は創業20周年を記念した年間1株56円(記念配当30円含む 株式分割前換算 7/1付 1:2分割)の配当を予定しており、これは配当性向ベースで約56%と一時的に高水準だが、記念要素を除く平常ベースでは配当性向30%、DOE(株主資本配当率)5%程度を目安に安定配当を継続する方針である。

総じて、同社の業績は堅調な成長トレンドにある。シェアード社員の増加とともに売上規模が拡大し、利益率も改善傾向という好循環を描いている。ただし成長の前提となる人材確保が計画通り進むかどうかが引き続き最大の注目点となる。この点を踏まえ、次の章では今後の成長シナリオについて考察する。

【KPI推移のポイント】


2024年12月期の通期では、シェアード社員数が前年比で27名増加し242名となった。これにより、体制強化が業績の押上げに寄与したと考えられる。また、実質支援社数も395社へと増加し、シェアリング需要の拡大が顕著であった。稼働率は第4四半期において70.3%に回復し、1時間あたり売上高も8,610円まで上昇するなど、収益性の改善も確認された。一方で、1社あたり平均担当者数および1人あたり平均担当社数はともに微減し、対応の深度化と品質重視への転換が進んでいるものと推察される。

2025年12月期第1四半期は、シェアード社員数が前期末比で1名の増加にとどまったが、スキルの高い人材の稼働が進んだことにより、1時間あたり売上高は8,889円と前四半期から3.2%の上昇を記録した。稼働率は70%台を維持しており、モデルの安定性が持続している。さらに、1人あたり平均担当社数は3.57社へと増加しており、効率的なリソース配分が継続されている。実質支援社数は横ばいであったが、会員数の増加が確認されており、今後の支援拡大のポテンシャルが高い状態である。

9. 成長シナリオ – 将来の成長見通しと市場ポテンシャル

同社の長期成長シナリオの鍵は、大きく二つの要因にまとめられる。

一つ目は「シェアリング企業数(顧客会員企業)の増加」と「実働会員(シェアード社員)数の増加」による成長である。現在、契約企業数は四半期ごとに10~20社程度のペースで増えている。このまま顧客開拓を積み重ね、会員企業ネットワークが広がれば市場シェア拡大につながる。そのためにはそれを支えるエンジニア人員の拡充が不可欠である。同社は中期的にも積極採用を続ける方針で、例えば2025.12月期の1Q末時点のシェアード社員数は280名と前年同期より30名近く増員した。この人員増がそのまま稼働可能なサービス供給能力の増大となり、売上高の拡大に直結する。つまり、「顧客数×1社あたり利用額」を押し上げるドライバーは主に人員数と稼働率であり、これらを伸ばすことで増収が見込める。なおターゲット市場には約9.8万社の潜在顧客が存在すると試算されており、現状の契約社数(600~700社規模)はそのごく一部に過ぎない。ゆえにマーケットサイズ的にはまだ十分な余地があり、少なくとも中期的には「顧客企業数 × エンジニア数」の両輪を増やしていく戦略で成長が続くと考えられる。

二つ目は「ニーズの強い分野への対応力を強化して事業化する」ことでの成長である。既に取り組まれているITインフラ支援や内製開発支援のように、顧客の新たなニーズを捉えてサービスラインを拡張することで売上の上乗せを狙う。現場の声をもとに新サービス創出の余地はまだ多分にあり、実際同社も「現場密着でニーズを拾い上げ、新規事業として拡大する」方針を打ち出している。このような新サービスは初期こそ売上への寄与は小さいものの、当たれば第2・第3の柱に育つ可能性がある。過去にセキュリティ事業がニーズ先行で立ち上がった経緯(その後譲渡)もあるように、顧客の困りごとから事業チャンスを見出す姿勢が成長の源泉となりそうである。

以上2点に加え、収益性向上による利益成長も見逃せない。エンジニア1人あたり収益は「担当顧客数の増加」「1社あたり担当時間短縮(多くの企業を短時間ずつ見る)」「個人スキルレベルの向上」によってレバレッジが効く構造である。実際、稼働率の上昇やスキルレベル向上による単価アップは売上総利益率の改善要因となっている。シェアード社員の定着が進み、中堅層・ベテラン層が増えれば、単価の高い業務をより効率よく提供でき、売上高に対する利益額が増える好循環が生まれる。さらに規模拡大によるスケールメリット(管理コストの相対的低下)も期待できる。

長期ビジョンとして、ユナイトアンドグロウは「コーポレートITシェアリングカンパニーとして唯一無二の存在を目指す」と表明している。全国の成長企業を会員化し、有能なコーポレートエンジニア人材のプールを拡大することで、日本の中小企業ITを下支えする存在になろうという意気込みである。国内の中堅・中小企業数を考えればポテンシャルは非常に大きく、仮に将来1万社、シェアード社員1,000名規模に達するといったシナリオになれば、売上規模は現在の数倍以上も見込める計算になる(TAM約1.2兆円の1割でも1,200億円規模)。

もっとも、その道のりには後述のリスク要因も伴う。次節では、成長を実現する上で注意すべき課題・リスクについて整理する。

10. リスク要因 – 留意すべきリスクと課題

同社のビジネスモデルは魅力的だが、投資にあたってはいくつかのリスクも認識しておく必要がある。

● 人材採用・育成リスク

 成長のカギを握るのは何よりエンジニア人材の採用である。同社は人月ビジネス的な側面があるため、人員計画通りに採用が進まないと売上成長も鈍化する。近年は採用強化に努めているものの、IT人材獲得競争は激しく、思うように人が集まらない可能性がある。また採用できても定着せず離職してしまう場合や、育成が追いつかず稼働率が上がらない場合、人件費だけが先行し利益を圧迫するリスクもある。この点は同社自身も最大の経営課題と認識しており、今後も継続的な取り組みが求められる。

● 中小企業景況リスク

主な顧客である中堅・中小企業の業績が悪化すると、IT投資余力も低下しサービス利用の抑制につながる恐れがある。例えば景気後退局面でコスト削減圧力が高まれば、シェアード社員契約を一時休止・解約する企業が出てくる可能性は否定できない。ただ、同社サービスは正社員を雇うより低コストで柔軟に使えるメリットがあるため、不況時でも一定の需要は維持されるとの見方もできる。いずれにせよ、日本経済全体や中小企業の景況感は注視が必要である。

● 競争激化リスク

前述の通り現在は明確な同業競合が少ないブルーオーシャンだが、将来類似サービスが登場したり、大手IT企業が中小企業向けソリューションに進出してくる可能性がある。特に、人材シェアリングのコンセプト自体は広がりつつあり、例えばフリーランス人材マッチングやFractional CXOサービスなど近接領域との競合も考えられる。幸い同社は長年のナレッジ蓄積や高い参入障壁に守られており、すぐに市場を奪われる懸念は小さいものの、競争環境の変化にはアンテナを張っておく必要がある。

● 地域集中によるリスク

同社の売上は東京圏に集中しているため、例えば首都直下型地震など特定地域の大規模災害が起きた場合、事業継続に大きな支障が出る恐れがある。また東京でパンデミック等が再燃した場合にも、一時的に顧客対応が停滞するリスクがある。将来的に顧客や拠点の地域分散が進めばこのリスクは緩和されるが、当面は事業継続計画(BCP)の整備などで備えることが求められる。

● サービス認知度・営業面の課題

弱みの項目としてサービスの知名度がまだ低い点も指摘されている。確かに「シェアード社員」という仕組みは一般にはまだ広く知られておらず、潜在顧客にリーチするには啓蒙が必要である。同社は上場効果や紹介により順調に顧客を増やしているが、爆発的に事業を伸ばすにはより一層のマーケティングや営業手法の工夫も重要となるであろう。

● その他のリスク

上記以外にも、主力顧客の業種集中(特定業界依存)、個人情報や機密情報を扱うことによる情報漏洩リスク、契約形態が準委任であることによる法的リスク(偽装請負とならない適切な運用の必要性)など、通常業務上のリスクも存在する。ただしこれらは適切な管理策を講じているものと思われ、大きな問題は顕在化していない。

以上のようなリスク要因はあるが、総合的に見れば同社のビジネスは収益性が高く案件需要も豊富なため、仮に一部で問題が生じても企業存続に関わる致命傷にはなりにくいと考えられる。特に人材リスクに関しては「案件自体は豊富にある」点から、需給ギャップさえ解消できれば成長余地は大きいビジネスモデルである。もっとも、だからこそ経営の成否は人材確保に懸かっているとも言え、引き続き経営陣の手腕が問われるであろう。

11. 株価指標と投資判断の参考情報

株価指標面を見ると、会社予想EPS49.795(分割前発表99.59円から単純算出)に対して株価614円(2025年7月11日終値)は予想PERが12.3倍。

また配当利回りは、2025年予想ベースでは4%以上。これは記念配当を含む一時的な高さではあるが、仮に記念配部分(30円)を除いても期末13円に対して2%超の利回りがあり、グロース市場の小型株としては高い株主還元水準である。同社は配当性向30%目標を掲げており、今後も利益成長に応じた配当増加が期待できる。成長企業でありながら一定のインカムゲインも望める点は、投資家にとって魅力の一つであろう。

もっとも、流動性の低さ、つまり売買代金の少なさは投資するうえでは明確なリスク要因である。投資したいだけ投資できない、売却したいときに売却できないという現状が原因で投資家が同社へ投資をしない状況にある。今後成長軌道がより明確になり、市場からの注目度が上がれば再評価される可能性はある。特に人材確保策が着実に進捗し、業績として確認ができることが前提となるポジティブ材料となり得る。逆に採用難や景況悪化で成長鈍化が見られれば評価は低いままにとどまる。

12. バリュエーション

 

時価総額 48.8億円
株価 614円 (2025年7月11日終値)
会社予想EPS 49.795 (7/1分割前発表EPS 99.59円より算出)
会社予想PER 12.3倍
配当(7/1 株式分割1:2による修正)
 第2四半期 30円(記念配)
 期末 13円

成長株投資, 銘柄研究所

Posted by ono