4344 ソースネクスト ー世界を身近にー by yano

2019年2月7日

 
パッケージソフトは開発コストを超える販売ができれば、ものすごく利益率が高いのですが、なかなかそれは難しく、日本のシステム系上場企業はSI受託やITコンサルなどを手がけている会社が多いのが現状です。
上場企業で個人向けパッケージソフトを手がけているのは「一太郎」で有名なジャストシステムや「ウイルスバスター」で有名なトレンドマイクロくらいしかありません。
ジャストシステムは、法人業務システムや個人向けに教育事業を手がけていて、一概に競合とは呼べず、またトレンドマイクロもセキュリティソフト一本足経営です。
ソースネクストは唯一無二なパッケージソフト会社なのです。

先日取材に行って、設立からの軌跡とともに、競争力の源泉と強い企業体質になっていることを確認しました。
さらに、11月13日に日本での独占販売権、米国・カナダでの販売権を獲得したと発表した通訳デバイス「ポケトーク」は世の中を変えることになりそうです。
やのやも使用させてもらい、「来年は翻訳元年となりそうですね」と話したところ、完璧な英語で通訳してくれ、言葉の壁をなくす魅力的な製品で非常にポテンシャルを感じました。

沿革

創業者で現社長の松田氏(52歳)はIBMのエンジニアで初期の海外パッケージソフトの日本語化とローカライズにおけるテストをやっていた。
1996年に「毎日会社に行くのが楽しくてしょうがない、わくわくしながら働き、自分も企業も成長を重ねていく。働くことがやりがいを超えて生きがいになるような企業を理想とし、そんな会社は自分で作るしかない」と起業した。「製品を通じて、喜びと感動を世界の人々に広げる」をミッションに「世界一エキサイティングな会社になる」をビジョンに掲げています。
子供向けの算数のソフトから始まり、今900種類のパッケージソフトを販売する。
96年にはパッケージソフト「驚速95」を発売し、インストールするだけという手軽さながら、ネット接続が早くなることからヒット商品となった。半分は教育学習ソフト、機器の補助プロダクトユーティリティーが半分だった。
今は教育、実用、オーディオ&ビジュアル(映画や音楽編集)、ユーティリティー(機器の性能向上など補助ツール)、Photoshopなど様々なパッケージソフトを展開する。
HDDの容量があがった恩恵を受けて、様々なパッケージソフトが生まれた。

トレンドマイクロは1990年に「ウイルスバスター」を発売しており、同社は1996年頃からマカフィーの代理店として扱っていたが、突然マカフィーアメリカ本社が独自で販売子会社を作ることになり、開拓した顧客を取られそうになった。インドの会社と開発して2003年に独自の「ウイルスセキュリティ」を作って、顧客をうまく「ウイルスセキュリティ」に誘導して、ほとんどの顧客が残ってくれた。
価格戦略も巧みに行った。当時PCアスースが1万円で売られていた時代で、そんな中、他社のセキュリティソフトも1万円近くで販売されていた。
そこで2003年に価格の常識を変えるとして、「ウイルスセキュリティ」1980円、「いきなりPDF」1980円で発売したことが顧客の心をつかみ、ヒット商品となった。

2006年にマザーズ上場を機に、「ウイルスセキュリティZERO」を発売し、業界慣習だったウイルス対策ソフトの年間更新料を0円にしたソフトを発売し、セキュリティソフトの常識を打破した。社長のビジョン通りに、ユーザー目線で役に立つ製品を良心的な価格で提供した。

2009年にはリーマンショックで家電量販店が仕入れをストップし、現金の確保のために各メーカーに返品を大量にしたことから、営業赤字25億円の大赤字に陥った。
2010年、2011年と赤字幅は大幅に減ったが、減収が続いた。
当時は高コスト体質になっていて、従業員も130人おり、損益分岐点売上が100億円だった。販管費だけで65億円かかっていたが、生産性改革を実施し、2011年には販管費を25億円まで下げることに成功した。
現在従業員は100人と生産性は高まった。

2011年からはアンドロイド用にアプリケーションの開発・販売をスタートさせ、電池管理や容量管理など地味だが一度取得すると永続的に使う便利なアプリの開発で、着実に売上を伸ばし、2012年からは着実に増収増益を続けている。

パッケージソフト

<製品別> セキュリティ関連2割、はがき作成2割、アンドロイド向けコンテンツ2割弱、その他4割(教育学習、映像・音楽・写真・ユーティリティーなど)
<販売先> 自社ECサイト43%、家電量販店36%、携帯キャリア17%、他4%

以前は量販店とアマゾンや楽天での販売だけだったが、2000年から自社サイトでの販売をスタートした。自社サイト比率が年々あがっている。マス集客は得意じゃないので、一見さんはまずは量販店などで買うことが多い。
パッケージソフトは、購入後、必ず顧客登録をする設定となっている。
登録ユーザー数は2011年時点で1000万人突破し、現在1500万人もの優良な顧客データを保有している。
有料で一度は買っているので、自社サイトでの見込み客になる。更新のタイミングが近づくと、ポップアップやメルマガで自社サイトに誘導し、リピーターになってもらう仕組みを構築している。アップグレードや便利ツールの都度買いも増えてきている。

自社サイトは自社製品ウエイト7割、仕入れ品ウエイト3割。
仕入れ品はソフトウェアだけでなく、ドライブレコーダから工具や度数調整できる老眼鏡まで幅広い品揃えをしている。マニアな40代から60代男性で機械をいじるのが好きな優良な顧客層である。
価格比較サイトなどにリーチされないようにクローズドに安く売っていることもあり、サイトへのアクセス数を増やしている。
サイト内でソフトウェアは年100種類程度売っており、仕入れ品でヒットがあれば、ボリュームディスカウント交渉できるし、ボリュームディスカウント交渉できない場合は、先方に許可をとって自社で似たような製品を開発することもある。
このように無駄な開発コストかからず、不採算はこれまでほとんどない。
粗利率は、自社品8割あり、ライセンス品でもボリュームインセンティブ次第では8割程度のものもあり、非常に利益率が高い。

パッケージソフトの買い換えサイクルは、平均1年だが、よく売れるものは早い。
セキュリティ1年、葉書1年、教育学習などコンテンツが陳腐化しないものは3年のもある。
柔軟な価格戦略で大胆に安くしたり、セキュリティソフトは毎年更新料ゼロにしたりしてきた。
セキュリティソフトの収益機会は、OSが変わるタイミング3~5年であったが、2016年4月にウインドウズ10が発売され、マイクロソフトはウインドウズ11以降は出さないと明言したので、これからは機器依存になるだろう。
機器が故障して、買い換えるタイミングがセキュリティソフトの更新サイクルとなるだろう。セキュリティ関連は、マルウェアから始まり、ファイアオールからスマートフォンのセキュリティまで対応してきた。今後はWi-FiのセキュリティやIoT機器でのセキュリティも必要となってくるので、あらゆる機器に対応する形でセキュリティソフトの需要は出てくるだろう。

ユニークな特徴

①パソコンソフト数924タイトル(アップグレード版含む)、アプリ56タイトルと圧倒的な製品数を保有する。1500万人もの優良な顧客データを持ち、量販店の他、自社サイトでの販売力を持つ。2012年にシリコンバレーに子会社を設立し、世界各国の優れた製品を日本でローカライズ化している。

②開発は、上流仕様決定など企画がメインで実際にコードを書くのは完全にアウトソースしており、不採算となるような開発コストをかけないで業務の効率化を図っている。
企画開発 24人(元SIも多い)、営業インターネットショップのサイト作成、量販店 46人、あとはサポート、管理部門、合計約100人の超少数精鋭

多くの受託系システムインテグレーターのように、顧客カスタマイズが不要のため人手不足の問題も起こらない。

年収740万円と高く、働きやすい中規模会社ランキングで4位となった。
新卒6~7人、中途10人弱を毎年採用し、離職もあるので、純増数は4~5人。
採用かなり厳選し、優秀な人を採用している。
JUSTSYSTEM 完全自社開発型でコードも書く。キーエンスに買収されて、自社開発一辺倒ではなくなってきていて、インターネットショップも真似してきた。

③小売りとの直接取引
ヤマダ電機から2000年前半に直接取引の開始を皮切りにすべての量販店とやっている。量販店はなかなか取引口座を開けてくれないから、トレンドマイクロは代理店卸にソフトバンクを使っている。
直接取引できている中堅メーカーは、やのやの知る限り、エレコムやヤーマンくらいだ。
直接取引のメリットは、粗利率がよくなる。リベートは販管費に計上し、仕切り率での値引きは原価に計上している。

④携帯キャリア向けアプリ開発
2011年からスタート。携帯キャリアのコンテンツ使い放題のサービスに提供。
レベニューシェアモデルで数割をキックバックされる。
電池管理、メモリ管理アプリ、使わないアプリを自動で落とすユーティリティー系アプリ中心なので、アンインストールされることなく、安定的にユーザーが使い続けてくれる。

業績

2016年3月期は、4月にウィンドウズ10特需があった。上期はその特需の剥落があった。
1Qは2割減収となったが、2Qは5%増収と底打ちをした。上期は会社計画比よりも売上で2.6%プラス、営業利益で計画比+22%と想定よりも好調な結果となった。
2016年3月期「筆まめ」、「宛名職人」を買収。筆まめは10億円で、宛名職人は2~3億円で買収。
同社「筆王」のソフトを保有しており、この2社の買収により、はがき作成ソフトの数量シェアは7割以上となった。
前期通年寄与、はがき作成ソフトは3Q売上集中する傾向にある。
ロゼッタストーンは2017年6月に買収しており、今後はロゼッタストーンによる貢献も期待できる。

ロゼッタストーン

24言語のソフトを保有し、元々、1言語6万円の製品と高かった。高い理由は、量販店で人が営業、テレビやネット広告をやったり、ネットでアメリカ人と英会話もできるようにしたりと、高コスト体質になっていた。
24言語とマイナー言語まで力を入れていたが、英語以外ほとんど売れない状況だった。
同社が扱う前の価格は29900円だった。
信頼関係を築くために、去年から仕入れ販売を開始し、19800円で売り始めた。
クローズドな自社サイトでいろんな価格で実験的に販売したところ、4980円でよく売れるということが分かった。
交渉の末、2017年6月に15億円のライセンス料を一括で払って、日本での販売権を獲得した。(BS無形固定資産計上、償却年数は20年)
さらにプログラムのソースコードも開示、改編権利も取得し、コンテンツ制作も価格も自由に決定できるようになった。
今年3月から4980円で売ったところ、今までの倍で売れるようになった。
1本ではなく、他の言語にトライする人がでてきて、売上の半分が英語となった。
これまでレベルゼロから5しかなく、TOEIC800点までの対応だったが、新作を発売。
9月に新作3本リリース。ビジネス2本、プライベート1本
年内に2本だしたい
TOEIC 今後大学入試に使えるようになったことから、裾野が高校生にまで広がるチャンスがあり、コンテンツを仕入れて、TOEIC版を今後発売する予定。

ポケトークの販売開始

ポケトークは、入力された音声をクラウド上で高度に処理し、翻訳する最先端のIoT翻訳デバイス。
携帯端末アプリでは実現できなかった、正確な音声認識、文字変換、翻訳、音声合成などを行ない、瞬時に翻訳された音声を流す仕組み。
クラウド上で、言語ごとに最新で最適なエンジンを用い、高度な処理ができるから翻訳精度が高い。同社の蓄積データをなげて、翻訳エンジンAIの進化の恩恵を受ける。
このようなすばらしい製品が実現化したのは、通信速度の高速化4Gの恩恵を受け、この製品が海外でも携帯回線を利用、いつでもどこでも利用できる環境が整ったことが大きい。

2017年12月14日発売。
サイト予約、発送スタート
50カ国語対応
個人向けはWIFIのみ本体価格24800円(税抜き)
2年間使えるグローバルSIM付きで月額課金なしで29800円(税抜き)

企業用は月3000円でレンタルにする。すでにJALやビジョンなど有力な事業者と提携。150社以上からの問い合わせがある。
ビジョンはビジネス開始後6年で、年間約150万件グローバルWi-Fiをレンタルしており、そのうち半分が企業ユースである。一日あたりレンタルを得意としていることから、シナジーはものすごく大きいだろう。
早速ビジョンさんに確認したところ、ログバー社の開発したオフライン翻訳デバイス「illi」「ポケトーク」をグローバルwifiととともに併売でレンタルしていき、需要があるほうへ臨機応変に軸足を移すとのことだった。「ポケトーク」はソースネクストからの仕入れ販売で、費用はレンタルに連動して発生するものではないようだ。すでに11月からレンタルを実験的にスタートさせた「illi」は1万台レンタル済みで、需要に合わせて台数を増やせるとのことで、コミットメントはしていない。第4四半期に与える償却額は数千万円と業績インパクトは軽微であることを確認した。

昔から音声認識に興味があり、翻訳アプリも出していた同社だからこそ、今回の翻訳デバイスの発売につながった。2017年はじめにスペインの展示会の出展で、オランダのベンチャーの翻訳デバイス技術に感動し、社長自らが素早くオランダに訪問して、打ち合わせして、販売権を獲得した。オランダ開発企業から仕入れて、半年かけて日本仕様に同社の開発者がテストたくさんして直した。
日本独占販売、アメリカ・カナダも販売権獲得した。アメリカ・カナダも実質同社だけで現在、様々な大手販売代理店と商談している。

ビジョンの「ログバー」は、一方方向だけの翻訳だが、同社の「ポケトーク」は双方向の翻訳ができるので会話ができる。また「ログバー」は旅行英会話だけだが、「ポケトーク」は2~3文の高度な文章も翻訳できるので、ビジネスシーンなどで商談としても利用できる。

<ポテンシャル>
2020年までに50万台の販売を目指すとしている。
アウトバウンド1700万人とインバウンド2500万人の両方を取り込む。
化粧品会社やレストランチェーンの導入が見込まれる。
1人言葉が話せる外国人スタッフを雇うと、20万円の人件費がかかるが、これを使えば月3000円で済む。接客に関わる時間が短くなり、販売チャンスロスの解消につながる。

簡単には真似されないけど、ブランドをいち早く築き上げ、他社に追随されないように一気に市場を築く構え。
現在、需要が追い付かないほど逼迫している状況。

バリュエーション

12月18日に翻訳デバイス「ポケトーク」の米国とカナダでも独占販売権を獲得したと発表したことが好感され、大幅上昇しました。今までより豊かなコミュニケーションができるようになって、言葉の壁を越え、世界中の人々がお互いに理解が進むそんな世の中になるといいですね☆  😆 

株価  1396円 (12/18終値)
時価総額 443億円
PER 36倍
PBR 7.5倍
配当利回り 0.4%

2019年2月7日銘柄研究所

Posted by 矢野