2471 エスプール アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する
投資をするときに
“その企業を応援したい”
という基準で考えたことがありますか?
高い志を持った企業に出会い、
・その企業が提供する製品やサービスが社会問題の解決のためのものであれば応援したい。
・自分にはできないが、株主として社会問題の解決のための事業に関わりたい。
と考えること。
こういった、業績以外の視点で企業を見るのは長期投資を考えるうえで大切ですね。
とはいえ、志だけでは事業を継続することはできません。
“株主となって応援したい”
と考えるならば、ビジネスモデルがユニークか、競争力が高く継続性があるかという視点が不可欠です。
2471 エスプール
同社は
“アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する”
というグループミッションを掲げている。
同社の事業を通してどのような社会問題へ対応しているかを見ていこう。
<大きく二つの課題解決に関わる>
セグメントは大きく二つ。ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業である。
ビジネスソリューション事業は5つあり、そのうちメインの2事業
・障がい者雇用支援サービス(株式会社エスプールプラス)
・ロジスティクスアウトソーシング(株式会社エスプールロジスティクス)
と
人材ソリューション事業の
・人材アウトソーシングサービス(株式会社エスプールヒューマンソリューションズ)
を合わせた3事業で連結売上高の9割近くを占める。
<業績推移>
2016年11月期に利益率が改善。
ビジネスソリューション事業の成長が業績改善に寄与している。
3事業共に足元では成長しており、今後も堅調に推移することが期待できるが、
特にビジネスソリューションの”障がい者雇用支援サービス”が今後の成長をけん引すると筆者はみている。
同ビジネスに重点を置いて解説をしたい。
<事業環境>
事業環境を見てみよう。
〇身体障がい者の雇用は進むが、知的・精神障がい者の雇用は進展が遅い
まず同社作成のPRムービーをご紹介します。(YouTubeの動画)
「わーくはぴねす農園」PRムービー「JOBに、JOYを。」篇(約3分)
障がい者は大きく分けると、
・身体的な障害をもつ
・知的、精神的な障害をもつ
障がい者にわけられ、それぞれの雇用状況は大きく異なっている。
障がい者(障がい者手帳を保有)の総数859万人
うち
18~64歳の障がい者354万人
身体障がい:111万人
知的障がい:41万人
精神障がい:202万人
354万人のうち
民間企業に就職できている障がい者 50万人
その7割(35万人)が身体障がい者で占められている
つまり上記身体障がい者111万人のうち35万人が就職している。
身体障がい者のうち何割かは働くことができない状態であることから考えれば、身体障がい者の就職率が高いと考えられる。
反面、知的・精神障がい者(計240万人以上)は15万人と就労率が低い。
その要因として、“身体的な障がい”の場合、その障がいが除ける業務であれば健常者と同じことができる。
(例えば、足に障害があれば移動は問題になるが、健常者と同じデスクワークは可能)
しかし、“知的・精神的な障がい”の場合、就労は簡単ではない。障がいの個人差が大きく、
コミュニケーションが難しいため採用に二の足を踏む企業もある。
デスクワークだとしても作業を理解してもらうための指示に手間がかかり、
自立してできる業務が限定的である。適職が見つけにくく、就職後も職場での対応に手間がかかるため、
雇用が進みにくいのが現状である。
〇障がい者雇用促進法の改定
1960年、障がい者雇用状況の改善の為、障がい者の雇用の促進等に関する法律、略称“障害者雇用促進法”が作られた。
障害者雇用促進法では企業にいくつかの条件を設定して障がい者の雇用を求めている。
社員数50名(2018年4月以降は46人)以上 → 障がい者の雇用義務対象
社員数101名以上 → 雇用不足数1名あたり60万円/年の雇用納付金(罰金)が発生する
法定雇用率2%:全社員数に対して2%の障がい者を雇用しなければならない
→2018年4月から2.2%、2020年4月からは2.3%へ引き上げ
対象となる企業(雇用義務のある企業)数は、全国で9万1千社。達成企業数は4万5千5百社と達成企業は50%に留まっている。
*参考:厚生労働省発表 平成29年障害者雇用状況の集計結果
2018年4月から2年後の2020年4月に引き上げ幅はわずか0.1%にとどまった。障がい者雇用が遅れている現状から考えると引き上げ幅が物足りない印象をうける。前述した通り、比較的受け入れやすい身体障がい者の希望する方の多くが受け入れられている反面、知的・精神障がい者は企業が受け入れるのに時間を要していることに配慮したのであろう。
<障がい者雇用支援サービス>
順調に拡大している。特に契約企業の契約継続により、ストック売り上げである農園管理収入が倍増近い成長を続けている。
〇知的・精神障がい者の雇用問題を解決するための一つの解を提示する事業
障がい者雇用支援サービスは簡単に言えば、
“企業に対して障がい者を紹介するとともに障がい者の職場を提供するビジネス”
以下、二つのサービスから成り立つ。
①障がい者専用の企業向け貸農園運営 “わーくはぴねす農園”
・エスプールが農地を賃借し、そこに農園設備(ビニールハウス、養液栽培設備(地面に大型プランターを固定したようなもの))を構築し、企業に貸し出す。
②就職支援サービス(障がい者の教育・紹介)
・農作業が出来る様に障がい者を研修(およそ3カ月)する
・障がい者を指揮する各企業の管理者を地域のシルバーから紹介(最低、障がい者3人に一人の割合)
ビジネスモデルの特徴は次のような点にあると筆者は考える。
特徴① キャッシュ回収の速さと高収益ストック収入の積み上げ
このビジネスの最も注目する点はキャッシュ効率の高さだろう。
売上は“契約時売上”と“毎月の継続売上”に分けられ、
農園設備の投資コストを“契約時売り上げ”で回収することでリスクを軽減し、
“毎月の継続売上”で高い収益性を達成する収益モデルとなっている。
基本的なモデルで理解しよう
・約3000坪の農地にビニールハウスや管理棟、養液栽培装置を敷地内に並べて配置し、全体を120区画に分割する。
設備投資の金額は1.8億円程度。
“契約時売上”
・区画販売=養液栽培装置(消耗品)の販売 1区画 150万円
150万円×120区画=1.8億円
・障がい者紹介料 平均50万円/一人あたり
一人が2区画担当するので120区画で60人を紹介
50万円×60人=3,000万円
契約時売上は区画販売と合わせて2.1億円程度となる。
*80区画程度の売上で投資金額1.3億円が回収できる計算である。
“毎月の継続売上”
・貸農園 管理料ひと区画4万円
年間管理料 120区画×4万円×12カ月=5,760万円
例えば2017年11月期末の管理区画数1,337区画から年間管理料収入を算出してみよう
毎月の管理料収入 = 管理区画数1,337×4万円=5,348万円
年間 = 毎月5,348×12カ月=6.4億円
年間6.4億円の管理料収入がストック売上となる。年々契約数の増加とともにストック収入が積みあがる。
また、初年度は減価償却負担が大きく収支はトントンとなるが、減価償却負担が軽くなるにつれ利益率は上がり、5年目以降には30%程度まで高まるようになっている。
以上のように投資資金を早期に回収するというキャッシュフローを意識したビジネスモデルにより、事業リスクの低減を実現している。
特徴② まとまった人数の雇用が可能であり、大手企業にとって受け入れやすく、業種を問わない
主要顧客を見ると、大手上場企業を中心に多くの業種の企業が農園を利用する契約顧客となっている。6年間で契約企業数は136社(解約企業2社)。
具体的にはSMBC日興証券グループ、東洋ゴム工業(トーヨータイヤ)、岡谷鋼機など業種を問わず大手が並んでいる。雇用した障がい者の職場は農場であり、各企業の管理者(主に地域のシルバーを採用)と一緒に働く。社員数の多い大企業の場合、障がい者の雇用人数は多くなる。120区画の農地の場合、60人まで1か所でまとまった人数の雇用が可能であり、大企業にとって導入しやすい。1社あたりの契約区画数は平均10区画(障がい者雇用数5名)となっている。また、導入した多くの企業は農場でできた野菜を福利厚生の一環として社員に食べてもらい、美味しく食べた感想をフィードバックしたりするなどの循環モデルを構築することでCSR向上に寄与するという点でも大企業に適したモデルといえよう。結果として障がい者の就業数668人で定着率は95%以上を達成している。体調がすぐれずドクターストップになって辞めた方がいたことも考えればさらに高い定着率を達成していることになる。
同様に障がい者雇用支援を行うウェルビー(東証マ 6556)などでは障がい者を主に事務職につける研修プログラムを組んでいる。事務職とは本社スタッフのような事務所で書類整理、パソコン操作といった仕事をする職種である。特定の技術を必要とせず、比較的短期で就労が可能になるためと思われる。しかし、前述のように就労が困難な条件に加え、企業の事業環境にも要因は考えられる。事務職はどの会社にもあるが、例えば業務をアウトソースによって減らす企業も増えている。大企業であれば事務職として受け入れるとしても拠点を複数分散して準備する必要もあるだろう。エンジニア中心の企業や外資系であればスキルの問題が採用の障害となろう。
特徴③ 公的資金(助成金)に頼らない
公的資金(助成金)に頼らず、企業から収益を得るビジネスモデルである。メリットは大きく2つ考えられる。
・公的資金に頼らないことは価格決定権を持つということである。公的資金の補助があるビジネスは、事業が安定している反面、価格は政府により決められるものであり、将来的に法律の変更に左右される。
企業は事業投資をするうえで重視する将来見通しのうち価格がわからない、というのは大きなリスクである。もちろん現在は解決しなければならない社会課題として今後も追い風は続くだろう。しかし、投資家としては価格決定権をもつビジネスのほうが素直に評価できる。
・自治体にもメリット
契約企業には障がい者を一般就労として雇用してもらっており、最低賃金が支払われる。
6時間×週5日で月に10万円程度の収入となる。重度障がい者年金がを合わせると20万円弱の月収になる。障がい者が納税者に変わり、生活保護等の公的資金が不要となるのである。
障がい者3人と管理者一人をチームで紹介する。管理者は地域のシルバー雇用を活用しておりシニアの雇用創出にもつながっている。この点も自治体にとってのメリットである。自治体からの誘致の話も増えてきている。
<参入障壁について>
〇知的障がい者に重要なのはグループメンバーとのマッチング、相性
障がい者同士のグループと管理者のグルーピングとマッチング研修期間が3カ月程度だが、その中身の大半は障がい者の方同士の相性の確認に費やされる。就労までの手続きや農園で作業するうえでのルールや実際の作業を学びながら、お互いの相性を確認する。知的障がい者の方にとっては一緒に働く仲間との相性がもっとも重要な要素である。そこにノウハウがあり、これまでの実績があるため、企業から選ばれる。
どのような優れたビジネスも人が手間をかけることで成立され、競争力を維持できているものだ。例えば機械やシステムだけで構築されたビジネスは時間と共に置き換えられる可能性が高い。システム開発スピードが高まれば、より短期で置き換えが起こるだろう。良いビジネスモデルは機械やシステムだけに頼るのではなく、人がより手間をかけてきたノウハウにある。同社においてもっとも手間をかけているのは、障がい者のグルーピングであろう。この手間を惜しまないからこそ高い定着率(前述の95%以上)を達成し、企業との間で信頼関係が築かれ、リピートにつながっているのである。他社が同じビジネスモデルで参入するのは難しいと考えられるだろう。
以下、続けてロジスティクスアウトソーシングサービス、人材アウトソーシングサービスの特徴について整理する。
<ロジスティクスアウトソーシングサービス>
ロジスティクス施設を賃貸で4か所運営し、EC通販の発送代行、越境ECサービスを行う。特に中小・新興企業200社程度に特化したサービスを展開している。請負代行サービスを行っていたが労務費が上昇し儲からなくなったため、2016年11月期からEC通販サービス中心に転換した。その後EC通販サービスの売り上げは高成長を継続している。4カ所目として2017年12月に開設した品川新センターは2300坪とこれまでの3倍以上の規模で、自動認識技術を導入した次世代センターを構築した。
〇国内
大手物流企業が取り扱わないような1社あたりの発送量が少ない商品を扱い、エスプールの物流センターに集める。量がまとまったものをヤマトHDなど大手物流企業に配送を任せる。健康食品、雑貨、アパレル、化粧品などを得意とする。リピート通販商品を多く扱うことで効率化する。
1社あたりの発送量が少なく、多数の企業を扱うことで1社ごとの単価を維持する。多品種少量を扱うが、効率化によりコスト上昇を抑制し、収益性を高める。
〇越境EC
DHLと業務提携し世界220カ国への発送を可能としている。
・米国Amazon.comへの出品支援に対応
・米国法人設立によりFDA申請代行を開始
など、差別化により越境ECのニーズを捉える。越境ECマーケットの拡大と共に成長が期待できよう。
<人材アウトソーシングサービス>
人材派遣・人材紹介を行う。7割程度がコールセンター大手向けの人材派遣である。
コールセンター向けの人材派遣は人手不足で経験者の採用が困難な状況が続いている。
〇特徴はグループ派遣
同社は管理者とスタッフをチームで派遣するグループ派遣が特徴である。未経験者を積極的に採用し、顧客企業に代わって教育を行い戦力化する。またグループ派遣は早期離脱者を減らし、定着につながるため管理コスト削減にもつながっている。
〇AIに置き換えられない業務を強化
現在、AIの急速な進展によりコールセンター業務は自動応対のシステムが普及し始めている。近い将来、単純な対応業務はAIに置き換えられるだろう。同社はAIでは対応できない業務、例えばカスタマーサポート、テクニカルサポートなど、AIによる置き換えが困難な業務に注力する方針。
また、医療・介護・保育業界向けの人材サービスも開始し、新たな収益機会の獲得に向けて取り組んでいる。
<今後の見通し>
〇ビジネスソリューション事業
2015年11月期はスマートメーター業務で大幅赤字が発生した。
2016年11月期の業績改善要因はスマートメーター設置業務の収益改善寄与が大きかった(前年比168%増収)
2017年11月期はスマートメーター関連業務が減少。さらに2017年11月末に受注停止したことにより今後は障がい者雇用支援が中心となって利益成長する計画である。
・今期業績見通し
2018年11月期会社計画(単位:百万円)
売上高 4,364(前期比+9.1%)
営業利益 764(同+5.0%)
新設農園の償却負担増に加え、品川ロジスティクスセンターの負担増で利益率は下がる計画。
障がい者雇用支援サービスは500区画の販売を計画しており、期初段階で336区画の受注済み。(前年同期は430区画の販売計画のうち70区画が受注確定)
第3四半期までに9割程度販売する計画だが前倒しも可能な状況にある。さらに新規農園の開設も予定しており販売区画数は600~650区画程度まで上積みの可能性がある。
・長期見通し
企業の需要に対応しきれていない現状(潜在需要)を考えれば、障がい者雇用率の引き上げ率に左右されることなく、順調な業績推移が期待できる。農園の減価償却が軽くなる4年目以降は徐々に利益率が高まるため、全農場に占める新規農場の割合が小さくなれば償却負担が低減することになり、より高収益の事業モデルとなる。
ロジスティクスは15億円程度の売り上げを見込むが品川新センターの立ち上げ費用の負担が大きく利益はほぼない。2018年11月期は損益フラットの計画だが稼働率の高まりとともに利益貢献が期待できよう。
〇人材ソリューション事業
グループ型派遣が拡大している。売り上げ成長し、利益率が改善傾向にある。
・今期業績見通し
2018年11月期会社計画(単位:百万円)
売上高 9,355(前期比+21.1%)
営業利益 880(同+29.3%)
主力のコールセンター業務が高い成長を維持する計画。
・長期見通し
人手不足は当面続きそうだが、コールセンターは自動化が進む見込みで同社にとってはネガティブ。AIに置き換えられない事業への取り組みの進捗と自動化の導入のスピードの綱引きとなろう。
〇自己資本比率の低さがリスクとならない
第1四半期時点で自己資本比率が33.8%と低めの数値となっているが、上記の通り、多額の資金を必要とせず、安定的にキャッシュインがあるビジネスモデルであることから考えて財務リスクは小さく、問題ないと判断できよう。
現在JASDAQに上場している。機関投資家中心の株主構成を改善するため、株式分割を実施した。株主還元として2018年11月期も連続増配の計画である。個人投資家を増やし、流動性が改善すれば東証一部承認も近い将来には見えてこよう。
<バリュエーション>
株価 1,810円
時価総額 285億円
予想PER 58倍
実績ROE 34.0%
*参考
社長インタビュー
https://www.spool.co.jp/invester/management/topmessage.html
決算説明会
http://www.cmstream.com/ir/spool_201801_b2f9MjHn/index2.php
ディスカッション
コメント一覧
丁寧なレポート、ありがとうございます。
障害者雇用については、長く携わってきた仕事と間接的にですが関わることでもあるので、またコメントさせてもらいます。
株価の方はかなり強含みになってますね。最近、細かく売買をしています。
>しかし、“知的・精神的な障がい”の場合、就労は簡単ではない。障がいの個人差が大きく、
>コミュニケーションが難しいため採用に二の足を踏む企業もある。
>デスクワークだとしても作業を理解してもらうための指示に手間がかかり、
>自立してできる業務が限定的である。適職が見つけにくく、就職後も職場での対応に手間がかかるため、
>雇用が進みにくいのが現状である。
ここは従来から非常に難しいところです。
まず、書かれているように、障がいの個人差が大きいです。個々に得意なことや苦手なことが異なっています。
一方、特定の分野では一般の人を大きく凌ぐような能力を発揮することもあります。
まず、こうした障害の状態に応じた一人ひとりの理解が適正にできないことには、合った仕事を提供すること
もできません。企業として、雇用したい、法の定めを満たしたいと考えていても、それはなかなか難しい、
いったん雇用したものの職を離れてしまうような場合もあります。知的障がいの場合、肢体不自由の身体障がい
の場合と比較して、障がいが外から見えにくく、実際の職場の中できちんと障がいのある人のことを理解して
サポートしていくというのは実際難しいことなのです。
例えば、口で、言葉で言っても理解がしにくくても、写真や絵、文字などで指示をするとスッとわかりやすい
というような障害特性の方は多いですが、そうしたコミュニケーションの方法を活用するのは相応の知識や技量
がサポートする側に必要です。一般の企業でそうした人を現場に配置するというのは、実際はなかなか難しいで
しょう。
>以上のように投資資金を早期に回収するというキャッシュフローを意識したビジネスモデルにより、事業リスクの低減を実現している。
ここの記述は具体的で非常に参考になりました。
>特徴② まとまった人数の雇用が可能であり、大手企業にとって受け入れやすく、業種を問わない
>主要顧客を見ると、大手上場企業を中心に多くの業種の企業が農園を利用する契約顧客となっている。
ここが特徴的というか優れたところだと思います。
農園といってもエスプールが提供しているのはビニールハウスが多いでしょう。
これがいいのです。何がいいかというと、ビニールハウスは、もちろん暑いしか寒いとか気候の様々な影響は受けますが、
雨天時も作業をすることができます。環境をある程度一定に保つことができます。
そして、作る農作物も年間を通して一定のサイクルを設定しやすく、そこで実施する作業も決まったルーティーンの形のものを設定
しやすいです。また、デスクワークではなく、実際に体を動かす中で様々な作業をすすめる点もよいところです。
>特徴③ 公的資金(助成金)に頼らない
ここは大きいです。公的資金の部分は制度の改変等によって様々なことが大きく変化することがあります。
利用できる制度等があれば利用すればいいわけですが、これに頼るようなビジネスは、土台の部分での「自己決定権」
がありません。
>〇知的障がい者に重要なのはグループメンバーとのマッチング、相性
>障がい者同士のグループと管理者のグルーピングとマッチング研修期間が3カ月程度だが、その中身の大半は障がい者の方同士の相性の確認に費やされる。
>就労までの手続きや農園で作業するうえでのルールや実際の作業を学びながら、お互いの相性を確認する。知的障がい者の方にとっては一緒に働く仲間と
>の相性がもっとも重要な要素である。そこにノウハウがあり、これまでの実績があるため、企業から選ばれる。
逆にいえば、こうした「相性」の部分について、適切な配慮、支援ができる企業側のスタッフの体制をどれだけ整備できるかというのが
大きなポイントです。ここの研修のシステムのようなものを、これまで積み上げられてきた様々な知見も活用しつつ、質の高いものにし、
社員を養成していく必要がありますし、社員採用もこの視点を重視することが大切です。
様々な福祉施設等では相当の力量を持ちながら、厳しい労働条件の中で働いている人が多いです。そうした人を上場企業にふさわしい労働条件で
採用していくことは障害者雇用とは別の意味での企業の役割でもあるでしょう。
貴重なご意見ありがとうございます。
取材を通して少し現状の問題に触れられたかなという程度で
私はまだまだ現場のことを理解しきれていないことと思います。
知的障害者の方の仕事を認め、支える家族、スタッフの方の苦労を社会が受け入れることが大切ですね。